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不遇職『鍛冶師』だけど最強です ~気づけば何でも作れるようになっていた男ののんびりスローライフ~  作者: 木嶋隆太


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第97話



 ここは一体、どんな大陸なんだろうか?

 ……大地を歩いている限り、土地はまるで何かの災害にでも襲われてしまったかのように、汚れてしまっていた。


 ……ここに、リンも来ているのだろうか?

 あの黒い渦が転移系のスキルによるものであることは分かった。

 ……だが、あの渦が必ずしもこの空間に人を呼ぶものではないという可能性もある。


 リンは俺とは別の場所に召喚されてしまった可能性だって十分にある。

 俺はミスリルの剣に手を伸ばしながら、しばらく大陸を歩いていく。

 ……それにしても、なんだろうか。


 息苦しかった。……普段に比べて、呼吸がしにくい。

 山とかに上ると呼吸が難しくなるというのは聞いたことがあるが、ここも同じような立地なのだろうか?


 ……この状態で戦闘するのは中々に大変かもしれないな。

 今は夜なので、いつどこから襲われるか分からない。

 周囲の警戒を行うように明かりを持ち上げたときだった。


 俺の耳が、唸り声を拾った。

 ……魔物、か。

 俺はそちらに視線を向け、剣を握りしめる。


 もう片手で明かりを持ちながら、その魔物たちを睨みつけた。


「……なんだ、こいつは?」


 俺は視線を魔物へと向け、驚いた。

 ……まるで、ゾンビ種の魔物のように、そいつらの見た目はグロテスクだった。

 生きているのか、死んでいるのか分からない。そんなウルフが、こちらへと向かってきていた。


 俺の目が、彼らを鑑定する。


 ウルフ?


 ……いや、なんで「?」がついているんだ!

 神様が与えてくれたはずのこの能力で鑑定できないとは思わなかった。

 三体のウルフがじりじりと迫ってくる。俺はミスリルソードを抜いて、彼らをじっと見る。


「ガァ!」


 ウルフたちは一斉に飛びかかってきた。

 まるで理性の欠片もないような様子だった。目玉がぼとりと落ちて、さすがに頬が引きつる。

 ……こいつらはどうやら、目で対象を把握しているわけではないようだ。


 動きはかなり速かったが、十分に見切れる。

 攻撃をかわした俺は、そのままミスリルソードで一体を切り伏せた。

 ミスリルソードを叩きつけたあと、俺はすぐに残りの二体へと視線を向ける。


 ウルフたちは怯むどころか、さらに飛び掛かってきた。

 ……恐怖、というものもないのだろうか?

 攻撃をかわしながら、さらに二体を仕留めたあと、俺はミスリルソードを鞘へとしまった。


 ……あまり、こういう魔物は好きじゃないんだがな。

 とりあえず、何とか倒せる程度の魔物だ。

 ……しかし、この魔物は今までに見たことがない。


 別に俺だって魔物の知識があるほうではないが、それにしたって、な。

 さっきの鑑定の結果も気になる。

 ……もしかしたらここは、俺の知らない大陸なのかもしれない。


 俺の推測が正しければ、あの黒い渦が大陸間を移動するような転移魔法だったというわけか。

 ……それを使って、勇者を狙ったのだろうか? 一体どうしてだ?

 

 そんなことを考えながら歩いていた時だった。

 道端に倒れていた少女を見つけた。

 ……少女は簡素な衣服に身を包んでいる。近づいてみると、こちらをぎゅっと見てきた。


「……あなた、何者?」

「……え、えーとそれはどちらかというと俺が聞きたいといいますか」

「私はカミラ。あなた、何者?」

「……俺はレリウスです」

「レリウス……うんうん。なるほど。それは良い名前」

「は、はぁ……えーと、ちょっと聞きたいんですけど、あなたはこの大陸で暮らしている人ですか?」

「いかにも」


 いかにも、って。

 俺が驚いていると、カミラさんはちらと俺を見てきた。


「あなた、何か食べ物は持っていない?」

「……ちょっと待ってください」


 ……以前、食糧などを鍛冶で作れていた。

 先ほどの戦闘や、暇な時間にポーションなどを製作していたからか、今の俺の鍛冶レベルは5だ。

 作れるものが増えていて……ああ、その中に食糧もあるな。


 とりあえず、ハンバーガーあたりでも作っておこうか。

 俺がハンバーガーを作り、カミラさんに手渡す。


「食べますか?」

「おお! おいしそう!」


 先ほど作ったハンバーガーはランクCだ。カミラさんがそれに手を伸ばし、ばくりとかぶりついた。

 そして、満面の笑顔を浮かべる。


「うまい! これは最高! おかわり!」

「……はいはい」


 ……どうやら、お気に召してくれたようだな。

 とりあえず、もう一つ作ってカミラさんに手渡した。

 彼女は勢いよくかぶりつく。口元にはべっとりとソースがついてしまっている。


「……ほら、これで拭いたらどうですか?」

「ありがとう」


 俺が作り出したハンカチをカミラさんは受け取って口を拭った。


「これ、どうする? 洗って返す?」

「……いえ、別に大丈夫です」


 ハンマーで砕いて処理した。……魔力のみで作ったため、何も残らなかった。

 ……これも、転生したからなのだろうか?


「それでカミラさん。俺の質問に答えてもらってもいいですか?」

「うん、なんでも聞いてほしい」

「……ここでカミラさんは暮らしているんですよね?」

「いかにも」

「……この大陸、国の名前は知っていますか?」

「もちろん。この大陸はハバルード大陸。国名は、ルヴェルサス王国」

「……る、ルヴェルサス王国!? そ、そこって確か……数十年前に魔物の手によって人が住めなくなった大陸じゃなかったですか!?」

「人が住めない大陸。確かにそう。だけど、今も戦っている」

「……今も、ですか?」

「うん」


 ……俺も詳しいことは知らない。

 ただ、死んだ両親が話していた内容を思いだしていた。

 

 ルヴェルサス王国に魔物が大量発生してしまったらしい。

 数十年前のその出来事が起きたとき、ある力を持った者が大陸自体に結界を放ち、魔物が外に漏れるのを防いだというのを聞いたことがある。


 ……そのため、外からこの大陸に干渉することはできず、また外から中の様子を伺うこともできなかった。

 ハバルード大陸は結界によって人が訪れることのできない土地になった。

 俺が持っている知識はそのくらいのものだった。


「レリウス。私と一緒に来てほしい」

「……え、えーとその。一つ聞いてもいいですか?」

「なに?」

「……その、俺より少し小さな可愛い女の子って……見ませんでしたか?」


 ……リンのことだ。

 俺の問いに、カミラさんはこくんと首を縦に振った。


「見た、というよりもここにいる」

「……はい?」

「私、可愛い女の子。そんなに飢えているのなら、仕方ない。私が相手をする」


 服を脱ごうとした彼女を俺は急いで止めた。


 

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