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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第一章ー選定式
9/131

第一章ー7

     ◆



「巨体に物を言わせた破壊行為など、全く美しくない。赤点だ」

 その女子生徒の体からは、金色の彩粒子さいりゅうしが舞っていた。

 我こそが王だと言わんばかりの存在感。

 二人が見上げるその背中は、果てしなく大きく見えた。

「そこの二人、少し待て。すぐに片付く」

 こちらを向いたその顔には、不安のふの字も見当たらない。

 絶対強者の自信が浮かんでいた。

「なんなんだ?」

 目まぐるしく変わる展開に脳がついていかない。

 黒江は状況を把握しようと、先ほどまで自分たちを殺そうとしていた木人がどうなったのか、中庭へ目を向け――

「……」

 目を向けて、もはや、驚かなかった。

 二十メートルほどの仏像が中庭に立っていた。

 奈良の大仏より大きいんじゃないだろうか。

 ちらりと下を見ると、その足元には先ほどまで自分たちを殺そうとしていた木人がいる。

 大仏に踏み潰されていた。

「その足をどけろ!」

 木人が地面でもがくが、大仏は胸のあたりをがっちりと踏みつけており、微動だにしない。

 それどころか、木人が暴れる度に、抑えられている辺りの木がきしみ、バキバキと音が鳴る。

「ん?」

 女子生徒がなにかに気付き、顔を上げる。

 直後、

「弾けろ!」

 先ほど、西校舎を襲撃した大剣使いだろうか。

 屋上にいたらしいその男は、上から落ちてきた勢いそのまま、大仏の左肩へ大剣を振り下ろす。

 西校舎の時と同じく、轟音と共に爆発が起きる。

 起きる、が。

「……はぁ」

 女子生徒はため息を吐く。

 大仏はびくともしていなかった。

 爆発のせいで肩が割れ、無残な姿を晒していたが、稼働に影響はないようだった。

「命を粗末にするな」

 女子生徒の言葉と同時、大仏の大きな右手が動く。

 

 ――速い!


 二十メートルはあろうかという巨体の動きではなかった。

 大剣を振り下ろした態勢のままだった男を、一瞬で捉え鷲掴みにする。

 そして間髪入れず、西校舎の壁へ思いっきり投げ飛ばした。

 受け身など意味がないと素人目にも分かるスピードで、大剣使いが吹き飛んでいき、

「さようなら」

 グチャっ。その肉体は潰れた。

「さて、あとは、このデカブツだけだが……」

 女子生徒は冷たい目で木人を見下ろす。

 木人はなにやら、「離せ」とか「やめろ」とか「ふざけんな」とか喚いていたが、勝敗は決していた。

 大仏の足に力が込められ――木人の胸に大きな穴が開く。

 穴から緑色の彩粒子が大量に流れ、木人はそのまま沈黙した。

「ふむ。動かなくなったのを見ると、自身を樹木に変身させる能力か? 使い方次第ではもっと生き残れただろうに……」

 女子生徒はやれやれ、と肩をすくめてみせる。


 圧倒的だった。


 一撃で何十人もの生徒を殺した大剣使いを紙屑みたいに屠り、巨大にして強大なスケールを持つ木人を難なく打倒してしまった。

 第三高校のブレザーを羽織っているから、味方なのは間違いないが、一体何者なのか。

「あの、あなたは……?」

 ごくりと喉を鳴らし、尋ねてみると、女子生徒はやはり、自信たっぷりな笑顔で宣言する。



「国立転移第三高等学校、生徒会所属、生徒会長、金牧樋春かなまきひはる。三年生だ。よろしく頼む」


 金色の彩粒子が強く、輝いていた。

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