第七章ー9
「ん? おや?」
「え?」
と、さらに十秒程、龍海の攻撃が続いたところで二人の動きが止まる。
「ああ、ソレ、例の改造制服ですか」
龍海は納得顔で頷くが、
「え!?」
綾乃と黒江はびっくりする。
改造制服が、引き裂かれていた。
龍海の攻撃を受けていた腕を中心に、制服が千切れている。
龍海の攻撃がいくら激しくても、弾丸すら防ぎ切る改造制服が殴打で千切れるとは考えられない。
一体どういうことなのか。
「ん? どうしました?」
「……」
綾乃は隙を見せまいと無言を貫くが、動揺していることは顔に出てしまっている。
龍海は「もしかして」と言い、千切れ、床に落ちた制服の一部を拾って見せる。
「あなたたちが着ている改造制服、これは能力で作られているものですが、知らされていないんですか?」
龍海が制服をぎゅっと握り締めると、見たことのない、オレンジ色の彩粒子が零れ落ちる。龍海の手に残るのは、改造制服を形作っていたらしき、少量の繊維だけだ。
「ええ、ああ、なるほど?」
龍海は未だ、戦闘中の樋春と透香の方へ視線を向け、勝手にうんうんと頷く。
「おそらく、なんらかの事情で、君たちにはまだ隠しておきたい理由があるのでしょうね?」
「どういう――」
綾乃がどういうことかと尋ねる前に、龍海は答える。
「その改造制服は、そちらの副会長――筑梨茜の能力でできているものですよ?」
樋春にとって隠していたかったであろう情報を暴露し、龍海はしてやったり、という表情を浮かべる。
「……」
綾乃も黒江も、あえて顔には出さなかったが、少なからず驚いた。
副会長に関しては、樋春から「守備についている」と聞いているが、実際どのような動きをしているのか、どんな能力者なのか、全く知らされていない。
改造制服を作る能力とは一体なんなのか。
ひょっとして、閃光弾などの武具も作れる能力なのか。
疑問は多くある。
反面、納得する面も多い。
特に、改造制服に関しては、これまでの戦いで何度も助けられてきたけれど、不思議に感じる部分もあった。
色覚変化の双子に襲われた時は、刃物から守ってくれたし、スナイパーを倒した時は、銃弾の直撃を受けながら、怪我を負うことなく乗り切れた。特訓時にしても、改造制服を着ているから安心していられた部分が大きい。
それは素直にありがたかったし、改造制服をくれた樋春にずっと感謝していたけれど。
心のどこかで、
凄すぎないか?
とも思っていた。
いくらなんでも万能過ぎると感じる場面も多くあった。
それが能力によるものだとするならば、納得できる。
「さて、邪魔な改造制服もなくなってきたところで、続きを始めましょうか」
癖なのか、龍海は大してずれてもいない眼鏡を押し上げる。
綾乃はブラウスだけになってしまった腕をあげ、再び鉄球を出現させる。
黒江はその脇で、痛みがおさまって来た体を引きずり、立ち上がる。
龍海は強い。
格闘技術だけなら樋春以上だろう。
拳を合わせてみて、勝てないことは理解できている。
だからとて、諦める理由はならない。
まだ希望は残っているのだ。
――立ち上がれ!
自分自身へ檄を飛ばし、黒江は再び龍海へ攻撃を仕掛けた。




