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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第七章ー実力
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第七章ー6

     ◆



 黒江と綾乃にとって、この状況における勝利とはなにか。

 龍海を倒せるのであれば、それが最も好ましいが、現実的に考えて、難易度が高いと言わざるを得ないだろう。

 樋春の助力も期待できない。

 では、『勝利』とは何か。

「ええ、ええ、悪くないですよ」

「このっ!」

「ですが? 無駄に無駄を重ねてどうにかなるとでも?」

 龍海は余裕の表情で黒江の拳を受け、捌いていく。

 黒江は能力を使用している。

 言うまでもなく、彩粒子の身体強化×能力による身体強化の近接戦は超、強力だ。通常であれば相手を圧倒できる。一撃一撃が必殺技みたいな威力であるため、防御することもままならない。


 相手が、龍海でなければ。


「綾乃!」

「分かってる!」

「ほう? とりあえず合流を優先しますか」

 黒江が龍海を抑え、綾乃は灰球に乗って上空へ退避。

 そのまま倒れている博也の下へ飛んでいく。

 黒江、綾乃、両名にとって、なによりも大切なのは『全員での生還』だ。

 樋春と透香の戦いを見て、逃げ切るのが難しいことは、十分理解できていた。

 ならば、どうするか。


 ――時間を稼ぐしかない!


 樋春が透香に押されている今、助力を期待するのは難しいが、粘って時間を稼げばいずれ状況は動くだろう。

 その時、樋春が負けていれば、もはや打つ手はない。

 逆に樋春が勝てば、生き残れる確率は跳ね上がる。

 二人が目指すべきは、『その時まで』三人で生き残ること。

「ふむ。思ったより冷静ですね」

「そう簡単に倒せると思わないで欲しいな」

 黒江は床に手を付き、体勢を極限まで低くする。

 長身の相手にとって、足元付近の攻撃は効果的なはずだ。

 黒江は先ほど、樋春が受けた攻撃のお返しと言わんばかりに右足で足を払ってやる。

「それで意表を突いたつもりですか?」

「えっ!?」

 龍海は足を開き、踏ん張りの効く体勢を作った上で、払いに来た黒江の右足を左足で踏みつける。

 ぎゅうっと体重がかけられ、右足が痛む。

 予想外の対処に動きが止まるが、黒江も黙っちゃいない。

「じっとしていると足が潰れますよ?」

「言われなくても!」

 無理やり右方向へ体を捻り、反動を利用して左足で蹴り上げる。

「おお、素晴らしい」

 右腹部への打撃を、龍海は腕を立ててきっちりガードする。

「よし」

 捻じれに加え、逆側からの衝撃で踏みつけられていた足が解放される。

 黒江は一旦距離を取り、ふぅと大きく息を吐き出す。

「やりますね」

 龍海は、くい、と眼鏡の中央を押し上げる。全く呼吸が乱れていない。

 言葉とは裏腹に、内心、毛ほども焦っていないだろう。

「……」

 黒江はぎゅうっと拳を握り締める。

 黒い彩粒子が零れ落ちる。


 ――チートだろ。


 綾乃と戦った時、綾乃は黒江と博也の能力をチートだと揶揄していたが、二人の能力など、龍海のそれに比べれば可愛いものだ。

「その能力、使うことにためらいとかないんですか?」

 そんな意味のない質問が口を突いて出る。

「ええ、ないですね」

「反則とか思わないんですか?」

「思いません。使わなければ殺されますから」

 龍海の能力は、『相手の能力を無効化する』というものだ。

 綾乃の灰球、博也の点火などは文字通り、完全に無力化される。

 灰球そのものが使えなくなるわけではないが、龍海に当たってもノーダメージで効果が得られない。過去、樋春も大仏操作で何度も攻撃したそうだが、どれほどの物量、速度でも、触れた瞬間に衝撃が吸収、緩和されてしまい、ダメージを与えられないのだとか。


 唯一、龍海に有効なのは『現実にあるモノでの攻撃』。


 能力を無効化したからといって、物質そのものが失われるわけではない。

 綾乃の灰球、樋春の大仏のように、彩粒子によって生み出されているモノは効果がなくても、現実に存在しているモノであれば、普通の打撃として通じる。

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