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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第七章ー実力
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第七章ー2

「さあ、やろっか」


 透香が構える。

 力をため込むように、右足に重心を置き、左足を前へ。

 殺意が、体中から溢れ出していた。

 樋春と初めて出会った時、頼もしさを感じた。

 この人について行けばきっと大丈夫だと、安心感を得られた。


 透香は逆だ。


 近くにいるだけで息が詰まる。

「クロ」

「ああ」

 綾乃と、短いやり取りで意志疎通を図る。

 分かっている。

 こんな化け物を真正面から相手になどできるわけがない。

 実際に相対し、心底思い知った。

 拳を合わせなくても、戦わなくても分かる。

 コイツらには、どうやっても勝てない。


 でも、やらなければならないことはある。


 この二人の相手は樋春に任せるしかない。

 助太刀をしようにも、邪魔になるだけだろう。

 黒江たちのやることは、ただ一つ。


 壁際で倒れている博也を回収し、この場を離れることだ。


 蹴り飛ばされた博也の状況が把握できていない。

 頭を蹴り抜かれているわけではないから、即死はないだろう。

 こっちは改造制服を着ている。骨は何本か折れているかもしれないが、多少は衝撃が緩和されているはずだ。

 ただ、未だに動けず、ぐったりしているところを見ると、相当、状態が悪いことは明白だった。

 一刻も早く、助けに行かなければならない。


「大人しくしていてくださいね」


「……っ!」

 立ちはだかるのは、龍海権蔵。

 踏み出そうとすらしていない足を、止められた。

 細身だが背が高く、威圧感がある。

「君たちには、仲間として、金牧樋春の最期を見届けて欲しいのです。どこかへ行こうとなどと、考えないでくださいね」

 龍海はくいっと眼鏡を押し上げる。

 レンズの奥の目は、透香や樋春と同じ、狩猟者の輝きを放っている。

 この男も、油断して良い相手ではない。

「いちについて~」

 戦闘開始の合図がかかる。

 黒江たちは、一旦動くことを諦め、樋春の方へと視線を移す。

「よ~い」

 透香は自ら声をかけ、


「ど~ん!」


 戦いの火ぶたを切って落とした。



     ◆



 透香の姿が消えた。


 ――早すぎる!


 樋春から、透香の能力について説明を受けている。

 本当に消えたわけではないことくらい、理解できている。

 だがそう錯覚させる程、透香は尋常じゃないスピードで樋春の下へ到達していた。

 まるで時間が飛んだようだった。

「ほいさっ!」

 勢いそのまま、左足で踏み切り、回し蹴りを繰り出す。

「ちっ」

 樋春も負けてはいない。

 ともすれば瞬間移動にも見える透香の動きに、対応してみせる。

 後方へ大きく跳躍することで蹴りを避けると、間にできた空間へ二メートルの大仏を出現させ、攻勢へ転じる。

 蹴りを空振りし、大きくバランスを崩した透香へ、お返しと言わんばかりに大仏による回し蹴りを見舞う。

 蹴りのコースは完璧で、反応できたとしても腕を挟み込むくらいしかできないであろう、そんなベストタイミングだった。

 黒江は一瞬、決まった、とすら思った。

氷鉄ひょうてつ

 透香がなにか呟いた。

 直後――


 ガギン


 鈍い音がして、大仏の足が不自然に空中で止まる。

 見れば、透香と大仏の間に、大仏の足の倍はある氷の塊が浮いていた。

「だったらこれで!」

 樋春は二体目の大仏を出現させる。

 五メートル以上ある巨大な大仏だった。

 その巨体は、見た目以上の威圧感がある。

 ようやく体勢を整えた透香へ対し、無表情の大仏が冷酷に、手刀を振り下ろす。

 直撃すれば体を真っ二つにされそうな勢いだった。

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