第一章ー6
「黒江、マジでどうする……?」
博也の表情に焦りがにじむ。
黒江とて同じだ。
相手の第六高校も転移学校だ。
彩粒子を操れることは変わらない。
こちらにアドバンテージはない。
だからと言って、いつ終わるかも分からない状況で、逃げ続けるのも厳しいものがある。敵の位置を知る術がないのだ。どこへ逃げても、条件は変わると思えない。
どうすれば、生き残れるのか。
答えが見つからなかった。
「よぉ! そこお二人さん。休憩タイムかー?」
その時、背後から声がした。
嘲笑うような、百パーセント悪意のみの声だった。
二人は中庭側の窓へ顔を向け、
「なにあれ……」
「おいおいおい」
驚きを通り越して、放心してしまう。
ここは地上六階、単純な距離で言えば、二十メートルほどはあろうかという高さだ。
その六階の窓に、巨大な顔が映り込んでいた。
いや。正確には、『顔を思われる部位』だ。
巨大な人型の木が、そこにいた。
全身から、緑色の彩粒子が滝のように溢れ出ていた。
「やっほー」
間の抜けた声とともに、その巨木の手が、窓の外で揺れる。
もはや怪獣映画の世界だった。
全長二十メートルの巨大樹木の化け物――。
戦うとか逃げるとか、そんな次元の話ではなかった。
考えても仕方がなかった。
最初から、無理だったのだ。
「じゃ、勢いをつけて、と」
木人が喋っているのか、それともこれを操っている人間が近くにいて、そいつが喋っているのか、それすらも判断ができないまま、黒江たちはただ茫然と木人の挙動を目で追った。
木人は言葉通り、勢いをつけるため、数歩、後方へ下がった。
中庭にあった遺体が木人に潰され、地鳴りのような足音と共に、肉が潰れる不快な音が耳まで届いてくる。
北側校舎ぎりぎりまで下がった木人は、本物の人間のようにタメを作り、
「次元の果てまで吹っ飛びな!」
加速する。
南校舎へ向けて、突っ込んできた。
こんなの、どうやっても回避できないだろう。
校舎もろとも吹っ飛ばされて終わりだ。
黒江は腹をくくり、博也も、こりゃ駄目だと笑う。
二人はなんとなく顔を見合わせ、笑い合う。
またな、と言うように。
「来るぞ」
「ああ」
二人は間近に迫った木人を睨み付け、最後の時を待つ。
そしてついに、その巨体が校舎に激突する――
ドゴシャアアア!
激突、した。
木人が、『地面に』。
「諦めるな諸君! このあたしがいる限り、第三高校は安泰だっ!」
二人の目の前には、一人の女子生徒が仁王立ちしていた。