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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第六章ー二人の想い
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第六章ー15

「天誅、金牧樋春、か」

「久しいな、気神きしん、赤之城源太」

 樋春と赤之城が睨み合う。

 樋春は獲物を見つけた虎のように。

 赤之城は獲物を見つけた狩人のように。


 ――空気が、違う。


 黒江が真っ先に感じたのはそれだった。

 ただ睨み合っているだけだというのに、息が詰まる。

 先ほどまで豪快に笑っていた赤之城は、樋春に鋭い視線を向け、樋春は待ってましたと言わんばかりに口角を上げている。

 一挙手一投足、その全てを見逃すまいと、互いが互いを牽制しているのが分かる。

 これまでも、樋春が戦う姿を見て来なかったわけではない。

 一度目の選定式では、すぐそばで戦いぶりを見ていた。

 特訓中には、樋春とも手合わせをした。

 けれど、今この瞬間の空気は、これまで経験してきたどの空気感とも違っていた。

 樋春は赤之城のことを『気神』と呼んだ。

 何年も選定式で生き残っていると、『二つ名』がつくのだと樋春から教えてもらったことがある。

 樋春の二つ名は、大仏操作という能力やその立ち振る舞い、戦いぶりから、気が付いたら『天誅』となったらしい。天が裁きを下しているかのように見えるほど、圧倒的な武力を誇る、保持者最強候補の一角、ということだろう。

 そして、赤之城。

 気神――。

 考えなくても分かる。気合いで衝撃波を放っているように見える姿から、そう名付けられたのだろう。

 神の名を持つ男は一体どれほどなのか。

 黒江たちは樋春の背後へ下がり、これから始まるであろう激闘を見守る。

「赤之城」

 樋春が口を開く。

「なんだ?」

「悪いな、わざわざ場所を移ってもらって」

「がはは。構わんよ。ここの方が思う存分、力を振るえるしな」

 赤之城は巨躯を揺らして答える。

 西校舎の廊下から、第一体育館へと場所を移していた。

 黒江たちが西校舎の端で戦闘していたことで、他の一年生たちの逃げ場がなくなっていた。何も知らない一年生たちに、学校値第四位の実力者たちが襲いかかり、虐殺が繰り広げられていた。

 赤之城ばかり注視していたために、黒江たちは気付くことができなかった。

 赤之城も、その惨劇には顔をしかめ、樋春の申し出を素直に受け入れてくれた。

 やはり、根は良い人なのだなと敵ながら感謝した。

「さて、やろうか」

「ああ」

 礼は言うが、それもここまでだ。

 樋春と赤之城はぐっと腰を落とし、臨戦態勢を取る。

 第一体育館は現在、黒江たちの他に誰もいない。

 五十メートル四方の鍛錬場よりさらに一回り広く、天井も高い。

 鍛錬場と違い、床も壁も全て木材でできており、強い衝撃を与えれば簡単に壊れてしまうだろう。天井には大きな電球が数十個ぶら下がり、左右上方にはガラスの窓もある。

 近くにいたら巻き込まれる可能性が高い。

 黒江たち一年生は邪魔にならないよう、隅へ避難し、中央に立つ二人をじっと見つめる。

 空気が張り詰め、体育館の外から聞こえて来る悲鳴や断末魔が遠くなる。

 一瞬、静寂が訪れ――


「行くぞ!」


 先に動いたのは赤之城。

 五メートル程の距離がある樋春へ、拳を突き出す。

 衝撃波を放ち、同時に駆け出し、距離を詰める。

 

「力押しかい? 三十点だね」


 樋春はまず、飛んできた衝撃波を三メートル級の大仏を出現させることで防ぐ。

 奈良の大仏などでよく見る、座ったままの姿の大仏だ。

 正面から飛んで来た衝撃波をまともに受ける形となった大仏は、肩や胸、腹に傷を負い、そのままゆっくりと後ろへ倒れた。

「破っ!」

 そこへ、倒れることを見越していた赤之城が、距離を詰める。

 もう一度、至近距離から拳を突き出す。

「悪いが、君の衝撃波の範囲は把握している。簡単に倒せると思わないことだ」

 樋春は目の前二メートルに拳が迫っていながら、慌てる様子を見せなかった。倒れた大仏を即座に消し、自身は地面へ深く、体勢を沈み込ませる。

 放たれた衝撃波は樋春の頭上を通過したようで、髪の毛一本すら散らせなかった。

「よっと」

 樋春はそのまま、右足を支点に左足を薙ぎ払うように振り回す。

「――っ」

 樋春の左足は赤之城の右足へ直撃。

 赤之城がバランスを崩し、尻もちをつく。

「これで!」

 樋春は間髪入れず、すぐ脇に出現させていた大仏で赤之城の体めがけて、大仏の拳――まさしく『天誅』を打ち込む。

「この程度、気合いでっ!」

 だが、赤之城も負けてはいない。

 地面へ向けて拳を打ち、衝撃波を発生させる。

 その反動を移動に利用し、大きく数メートル背後で飛ぶ。

 赤之城は着地した時点で体勢を整えてしまう。

 体育館の床が衝撃波で割れ、木材が飛散するが、二人ともそんなことは気にしない。

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