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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第六章ー二人の想い
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第六章ー10

     ◆◇◆



 小柄な少女と長身の男子。

 二人は学校の屋上で夕日を眺めていた。

 恋愛小説なら、告白シーンに使えそうな最高のシチュエーションである。

「綺麗だね~」

 にこにこと満面の笑みを浮かべる少女。

 対して長身の男は、そうですねと淡泊に答える。

「明日もよろしくね」

「ええ、任せてください」

 長身の男は、長方形の黒縁眼鏡をくいっとかけ直す。

 佇む二人――虹沢透香にじさわとうか龍海権蔵たつみごんぞうの関係を一言で表すのなら、『社長と秘書』である。

 自由気ままに振る舞う透香と、その透香を傍で補佐する龍海。

 この二人の強い絆は、他の学校にも知れ渡っている。

「第三ってことは、アレだね、樋春がいるね」

「はい」


「そろそろ、殺したいよね」


 ぎょろりと、透香の瞳が動く。

 顔は動かず、瞳だけが不気味に動くその様子は、爬虫類を連想させる。

「はい。油断はできませんが」

「分かってる。けど、今まで『逃げに徹されて来たせいで殺しきれなかったけど』、いい加減、決着をつけたいよね~」

「はい」

「ボクと龍海が組んで、やれないことなんてないからね」

 透香は口角をあげる。

 自信が、小さな身体から溢れていた。

「ええ、透香が本気になれば、第三高校の者たちなど、造作もなく殺せると思いますよ」

 龍海も、自信を持って答える。

 龍海は知っている。

 自身が仕えている虹沢透香という規格外の存在が、どれほど危険で、圧倒的な力を誇っているのか。

 無論、敵校主戦力の『天誅・金牧樋春』の実力も熟知している。

 彼女は強い。

 全保持者の中でも、トップクラスだろう。

 彼女が掲げている目標も耳に入っている。

 彼女の実力、カリスマ性を鑑みれば、成し遂げられる目標だ。敵ながら、尊敬に値すると感じている。


 ――この人がいなければ、ですがね。


 レンズの先。

 のんびりと夕日を眺めている少女、虹沢透香もまた、そんな樋春に劣らぬ驚異的な力を誇っている。贔屓目なしに見ても、彼女は樋春と同等か、それ以上の実力がある。

「今回は、邪魔が入らないといいけどな~」

「そうですね」

「今まで、どのくらい殺したか、覚えてる?」

「……自分も把握はできていませんが、少なくとも、十人程度には上るかと」

「だよね~。今回こそは、逃がさないぞ~」

 透香はフェンスに手をかけ、無邪気に言う。

 第三高校にとって、金牧樋春は核となる人物だ。

 樋春を救うためとあらば、身を挺して守る者たちがいることを、透香も龍海も知っている。

 生徒会のメンバーだったり、下級生だったりと、その時によって様々だが、樋春を何度も追い詰めていながら、撃ち漏らしているのはそういう理由だ。

 樋春は強い。

 それは厳然たる事実として、認めなければならない。

 驕りに支配されている状態で勝てるほど、甘い相手ではない。


 だからとて、負ける気も毛頭ない。


 樋春と同格の透香がいて、そしてなにより、その二人と肩を並べられる龍海がいる。

 第三高校の弱みは、樋春を守る気概がある者はいても、樋春と肩を並べて戦える者がいないことだ。

 実力だけなら、樋春より強い者はいるかもしれない。

 心当たりもある。

 では、その者は樋春と一緒に、共闘できるか?


 ――無理、でしょうね。


 龍海の知る限り、第三高校に、樋春と共に連携して戦える者は一人もいない。

 唯一、副会長の名が思い浮かぶが、すぐに思考から除外する。

 あの副会長は、前線には出て来ない。

 これまで、樋春と共に戦ったという情報はない。

「龍海」

「はい」

「景気づけに、やる?」

「いいですよ」

 差し出された掌には、麻雀牌が一つ。

 転移前、透香はネット麻雀で圧倒的な実力を誇っていた。誰がつけたのか、ギリシャ神話の神、『ハデス』の異名を取っていたらしく、転移した今でも、牌を手放さない。

 龍海は、毎回、負けると分かっていても、楽しそうに麻雀を打つ彼女の姿が好きだった。

 差し出された牌は、筒子そーずの五。

 透香が一番好きな牌だった。

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