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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第五章ー不協和音
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第五章ー13

 佳那を失ってから、博也は毎日、鍛錬に明け暮れていた。

 寝ても覚めても、佳那が絶命した時のことを思い出してしまう。


 博也は、『仕方ない』とは思えなかった。


 綾乃が指摘していた通り、樋春の注意不足はあっただろう。

 事前に教えてくれていればと、今でも思う。


 じゃあ最も近くにいた自分たちに、非はなかったか?


 ないわけがなかった。

 あの双子を躊躇わず、すぐに殺していれば、佳那は撃たれる前に移動を開始したはずだ。それでも撃たれたかもしれないが、ぼんやりと中庭上空で停滞しているよりは良かったはずだ。

 それに、綾乃は『なんで教えてくれなかったのか』と樋春を責めたが、気付けなかった自分たちも悪い。

 少し考えれば、スナイパーでなくても、全方位から狙われる中庭上空が危険なことこくらい分かったはずだ。

 それぞれが、『自分が生き残ること』を優先していたために、佳那のことまで頭が回らなかった。上空へ逃げてしまえば安全だと勝手に思い込んでいた。


 そんな自分に、嫌気が差した。


 なにをやっているんだと自分を責めた。

 もっとできることがあっただろうと、猛省した。

 樋春も綾乃も、仕方がないと言う。

 死んでしまったものは仕方がない。

 そうかもしれない。

 いつまでも、死んでしまった者のことを気にしていても、仕方がないかもしれない。

 だけど、


 ――反省して、次に活かそうとするのが悪いわけないだろ!


 心の中で、叫ぶ。

「博也、どうする?」

 緊張感を欠いた、のほほんとした顔をして黒江が尋ねて来る。

 博也とて、馬鹿じゃない。

 黒江と綾乃が、少し前から、通じ合っているような雰囲気を出していることくらい感じ取っていた。

 なにかあったのだろう。

 自分に何も言ってこないところをみると、『用事』に関して、一悶着あったと考えるのが妥当だ。

「……」

 見上げると、文字通り、綾乃が見下ろしてくる。


 ――誤解、されてんだろうな。


 博也は、綾乃のやる気がないような態度を非難しているわけではない。『用事』のことが目に付き、気になったのは確かだが、本当に確かめたいのはそんなことではなかった。

「なあ、黒江」

「なに?」



「アイツ、本当に『仕方ない』って思ってんのか?」



 聞くと、黒江は「え?」と驚くような声を出す。

 綾乃は切り替えが早い。

 そうなのだろう。

 博也のように、ネチネチと過去を振り返って、あの時こうしていればとか、自分はもっと○○できたんじゃないかとか、そんな風に考えていないのは分かる。

 いつでも真っ先に行動を起こし、先頭に立つ彼女の潔さと、誰が相手でも臆さない図太さは尊敬している。

 綾乃は凄い人間なのだろう。


 だが、彼女は自分たちより年下で、本来、守るべき存在だ。


 選定式で佳那を失った後。

 綾乃は樋春の話を聞いても納得せず、頭を下げさせた。

 博也に『やる気がない』と責められた時、正論を言って、なにかを隠そうとしていた。


 彼女の本心は、どこにある?


 今、この瞬間だってそうだ。

 意識してなのか、無意識なのかは知らないが、佳那が得意とした空中戦へ移行した。

 綾乃の対応力なら地上でも戦えるだろう。

 強力に思える博也の能力に、穴が多いことも分かっているはずだ。


 なのに、綾乃は真っ向勝負を避けている。


 切り替えが早いと彼女は言う。

 まるで、自分に言い聞かせているように。


 博也は、それが気に入らなかった。


 悲しいのなら、泣けばいい。

 辛いのなら、助けて欲しいと、叫べばいい。

 そのための仲間で、そのために一緒にいるのだ。

 熱血馬鹿と罵られても構わない。

 友情とか努力とか、それが大事なことだってあるだろう。

「黒江」

「なに? 良い案でも思い付いた?」

「あの馬鹿を、引きずりおろせ。策はある」

「え? 馬鹿? え?」

 戸惑う黒江に、策を教える。


 ――コイツはコイツで、なに考えてるのか分からないんだよな。


 博也は、隣にいる黒江に厳しい視線を送る。

「まあいいや」

「え、なにが?」

「気にするな。行くぞ!」

 博也は、手を伸ばす。


 ――これ以上、仲間を失ってたまるか。

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