第四章ー9
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通信機で連絡を取り合い樋春と合流し、一年生三人は樋春とともに、生徒会室へ避難した。
もちろん生徒会室も選定式の会場内だ。
いつ攻め込まれるか分からないが、廊下や一般教室をうろうろしているよりは良い。南校舎六階という場所も、察知されにくいだろう。逃げ場がないのが欠点だが、こちらには『絶対強者』、金牧樋春が控えている。
隠れ家としてはちょうど良かった。
「――以上です」
「そうか」
時刻は午前九時。
選定式を開始してから、まだ一時間程しか経っていない。
にも関わらず、生徒会室には重苦しい空気に満ちていた。
樋春は議長席に、そして一年生たちは樋春から見て左側の定位置に腰を下ろすが――これまでなら、空くはずのない席が、ぽっかり空いていた。
「せめて、中庭側でなければな……」
樋春にとっても、予想外だったらしい。
テーブルに肘をつき、組んだ手に額をくっつける。
「スナイパーがいた場合、中庭の上空は、下からだけじゃなく、校舎四方、全方位から狙われる危険がある場所だ。東校舎を目的地としていたから、中庭側へ飛んでしまったのも無理ないが……」
ぶつぶつと独り言のように状況分析をしているが、その声には張りがない。
冷蔵庫から取り出してきた、『アップル&マンゴー』味の飲料水にも手が伸びていない。
「とはいえ」
「……?」
「死んでしまったものは仕方ない。切り替えるぞ」
ガタリと音を立てて席を立ったかと思うと、ごくごくと一気に飲料水を飲み干す。
「諸君! 白鳥さんのことでショックを受けるのは、選定式が終わってからにしてくれたまえ。まだ、残り八時間ある。ここで切り替えられなければ、生き残ることはできないぞ!」
「……は?」
呆気にとられる。
樋春はいつもの調子に戻っていた。
自信満々、傲岸不遜。
絶対強者のオーラをこれでもかというほど振りまいて、彼女は宣言する。
「安心しろ! これから八時間、あたしが君たちを守る!」
その姿は雄々しくて、頼もしくて、誰よりも力強くて。
この人についていけば安心できると思ってしまうものだった。
これまではならば。
「おい!」
「あの!」
「樋春さん。ちょっといいですか」
一年生が、三人同時に声をあげた。
博也は怒りをもって。
黒江は疑問を投げかけるために。
綾乃は――
「もっと早く、合流することはできなかったんですか?」
誰よりも静かな声音だった。
だからこそ迫力があった。
黒江と博也が口を噤んでしまうほどに。




