表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第四章ー選定式Ⅱ
42/131

第四章ー9

     ◆



 通信機で連絡を取り合い樋春と合流し、一年生三人は樋春とともに、生徒会室へ避難した。

 もちろん生徒会室も選定式の会場内だ。

 いつ攻め込まれるか分からないが、廊下や一般教室をうろうろしているよりは良い。南校舎六階という場所も、察知されにくいだろう。逃げ場がないのが欠点だが、こちらには『絶対強者』、金牧樋春が控えている。

 隠れ家としてはちょうど良かった。

「――以上です」

「そうか」

 時刻は午前九時。

 選定式を開始してから、まだ一時間程しか経っていない。

 にも関わらず、生徒会室には重苦しい空気に満ちていた。

 樋春は議長席に、そして一年生たちは樋春から見て左側の定位置に腰を下ろすが――これまでなら、空くはずのない席が、ぽっかり空いていた。

「せめて、中庭側でなければな……」

 樋春にとっても、予想外だったらしい。

 テーブルに肘をつき、組んだ手に額をくっつける。

「スナイパーがいた場合、中庭の上空は、下からだけじゃなく、校舎四方、全方位から狙われる危険がある場所だ。東校舎を目的地としていたから、中庭側へ飛んでしまったのも無理ないが……」

 ぶつぶつと独り言のように状況分析をしているが、その声には張りがない。

 冷蔵庫から取り出してきた、『アップル&マンゴー』味の飲料水にも手が伸びていない。

「とはいえ」

「……?」



「死んでしまったものは仕方ない。切り替えるぞ」



 ガタリと音を立てて席を立ったかと思うと、ごくごくと一気に飲料水を飲み干す。

「諸君! 白鳥さんのことでショックを受けるのは、選定式が終わってからにしてくれたまえ。まだ、残り八時間ある。ここで切り替えられなければ、生き残ることはできないぞ!」

「……は?」

 呆気にとられる。

 樋春はいつもの調子に戻っていた。

 自信満々、傲岸不遜。

 絶対強者のオーラをこれでもかというほど振りまいて、彼女は宣言する。


「安心しろ! これから八時間、あたしが君たちを守る!」


 その姿は雄々しくて、頼もしくて、誰よりも力強くて。

 この人についていけば安心できると思ってしまうものだった。



 これまではならば。



「おい!」

「あの!」

「樋春さん。ちょっといいですか」

 一年生が、三人同時に声をあげた。

 博也は怒りをもって。

 黒江は疑問を投げかけるために。

 綾乃は――


「もっと早く、合流することはできなかったんですか?」


 誰よりも静かな声音だった。

 だからこそ迫力があった。

 黒江と博也が口を噤んでしまうほどに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ