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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第四章ー選定式Ⅱ
40/131

第四章ー7

     ◆



 何が起こったのか、理解するまでに数秒かかった。

 佳那が、頭から地上へ落ちていった。

「佳那!」

 真っ先に気付いた黒江は窓際に駆け寄り、大声で呼びかける。

「佳那! 返事をしろ!」

 何度も呼びかけるが、佳那はピクリとも動かなかった。

 そしてそのまま――



 頭から、地面に激突した。



「……佳那」

 赤い血が、佳那の真っ白い髪の毛を濡らしていく。

 確認するまでもなかった。



 佳那は、絶命していた。



「嘘、だろ」

 遅れて窓際にやってきた博也も、その無残な姿を見て絶句する。

 頭が真っ白になった。

 ついさっき勝利を分かち合って、普通に話していたのに、こんなにあっさり、終わってしまうものなのか。

 いくらなんでもいきなりすぎる。

 どうして――


「狙撃!! 周囲を確認して! 早く!!」


 耳元で怒声が響き、現実に引き戻される。

 綾乃だった。

「探して!」

 言われるがままだった。

 何も考えられないまま、それでも目だけを動かして、狙撃手を探す。

「……」

 簡単には見つからない。

 校舎の隅々まで視線を送る。

 西校舎では前回と同じく、同級生たちが襲われていた。

 北校舎や東校舎でも、悲鳴や断末魔が溢れている。

 屋上にも目を向けるが、それらしい姿は確認できない。


「アイツだ!」


 博也が指さした先、中庭の、西校舎と南校舎の端、ちょうど緑が生い茂っている辺り。

 そこに、光る銃口が見えた。


「――――っ!」


 黒江は、飛び出していた。

 背後から、待てとか危ないとか聞こえた気がしたが、そんなものは無視した。

 四階の窓から、飛び降りる。

 いくら彩粒子を纏っていても、無事では済まない高さ。

 そんなこと、考えもしなかった。

 身体強化を最大限まで引き上げる。

 漆黒の光が、放流される。

 濃く、濃く、滝のように、流れ出す。


 ――着地。


 足の裏に、今まで感じたこともない衝撃が伝わって来る。

 関係なかった。

 痛いとすら思わなかった。

 茂みへ視線を向ける。

 こちらに気付いたのだろう。

 慌てて銃口を向けて来る人間が見える。


 黒江は疾走する。


 もし頭を撃ち抜かれたら。

 もし改造制服や自身の身体強化を貫くほどの威力があったら。

 もし――。


 危険であることは、頭の片隅で理解できていた。


 でも、それよりも、なによりも。


 一発、ぶん殴ってやらなければ、気が済まなかった。


「このっ!」

 弾丸が発射されたのが、『見える』。

 避けるほどの余裕はない――ないが、急所を外すくらいなら、できる。

「――っ!」

 太ももに直撃する。

「こいつ!」

 もう一発。

 次は左肩に当たった。


 だからどうした。


 それがなんだ。


 ――俺は、コイツをっ!


「おい! 待てよ!」

「ひぃいい」

 銃弾が当たっても意に介さず突き進んで来る黒江に、恐怖を覚えたのだろう。

 狙撃手は離脱を開始する。

 銃口を下ろし、茂みから飛び出した。


 あるいは、焦らずに撃ち続けていれば、勝機はあったのかもしれない。

 あるいは、逃げようとせず、その場に留まっていれば――。


 狙撃手は、


「遅いんだよ!」


 黒江に後頭部を殴られ、吹き飛んだ。

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