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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第四章ー選定式Ⅱ
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第四章ー5

 赤い彩粒子が博也の手のひらを中心に舞い散った。

 赤い視界の中でも、博也の彩粒子は輝きを失わない。

 密度の濃い赤が、輝き、流れ、拡散していく。

 そして、博也の彩粒子が深緑の彩粒子に触れた瞬間、

「ぐっ、お!?」

 深緑色が不自然に揺れた。

 一直線に向かって来ていた彩粒子が、急ブレーキを踏んだように前へ流れ、やがて、止まる。

 博也まで、あと一メートルといったところだった。

「おい、おいおいおい! なんだこれ、おい!」

 喚き声が聞こえるが、深緑色の彩粒子が動く様子はない。

「成功、だな?」

 博也は前方へ手を向けたまま、安堵の息を吐く。

 ここまで接近し、制止している状態ならば、博也にも視認できるようだった。

 博也の能力――『点火』は、相手の動きを止める能力だ。

 試行錯誤を繰り返し、生み出された能力は、『正義』をイメージした能力だった。博也曰く、イメージとしては、『悪に手錠をかける警察官』、らしい。

 一度、相手の動きを止めてしまえばその強さは折り紙付きで、力任せに無理やり解除することは不可能だ。黒江の身体強化を使用しても、博也の能力は破れない。

 ただ一点、問題があるとすれば、通用しない相手がいること。

 正確に言えば、『正義』の定義次第で能力が左右されてしまうということだ。

 基本的には、博也が相手の位置を把握できていれば制限なく使えるのだが、もととなっているイメージが『正義』であるため、相手によっては効果がない。

 事実、選定式を変えるという『正義』を掲げ、博也自身もそれに賛同している樋春には、効果がなかった。

 人殺しが容認される選定式において、『正義』とはなにを指すのか。

 相手に通じるのかどうか。

 樋春と合流し、安全が確保できた後、検証しようという話になっていた。

「もし、効果がなかったら危なかったね」

 一メートル先で動けないでいる相手を見つめ、黒江も一息吐く。あと一秒もあれば、斬りかかられていただろう。

 賭けではあったが、上手く博也の能力が作動してくれて良かった。

 とりあえず、これで相手の攻撃手段は潰し――


「二人とも! 気を抜かないで!」


 背後から、綾乃の声が届く。

 コンマ数秒後、


黄転おうてん! 青転せいてん! 紫転してん! 橙転!(とうてん) 白転はくてん! 金転きんてん!」


 真っ赤だった視界が、急に変わり出す。

 一秒も立たない内に、次々と別の色に変わり、目が、脳が、処理し切れなくなる。

 弟の危機を察知した兄が、能力をフル稼働して助けに入ってきた。

「くそっ!」

 思わず、目を瞑ってしまう。

 目が良くなる身体強化が逆に作用する。


 ――マズイ。


 そう感じたのは黒江だけではない。

 綾乃も、相手の動きを封じていた博也も同じだった。

 博也の能力は、相手の位置を把握していることが第一条件だ。

 現状、動きを封じているのは斬りつけていた弟のみ。こちらの視界を奪い、動ける兄が、どんな方法でも弟を移動させれば、博也の能力が途切れてしまう。

 もう一度、姿を見失ってしまったら、次は動きを封じる前に誰かがやられるだろう。


《目を閉じて、耳を塞いでその場に伏せて!》


 と、焦る黒江たちの耳元――通信機から、透き通った声が聞こえて来る。

 さらに、ガシャンという派手な音とともに窓ガラスが割れ、外からなにかが投げ込まれた。

「――っ!」

 誰がにを投げ込んだのか、黒江たちは瞬時に察知した。

 ぎゅっと目と閉じ、耳を塞いで身を低くする。


 ――音響閃光弾!


 鼓膜が破れそうなほど大きな音が響き、閉じた瞼から凄まじい光が入り込む。

「……」

 数秒後、周囲がシンと静まり返り。

 黒江がそっと目を開けると、

「ぐっ、おおお……」

「こん、な……」

 音響閃光弾の直撃を受けた双子が、地面に倒れ伏していた。

 視界の色も、もとに戻っている。

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