第四章ー3
「黒江、無事か? どうなってる?」
背中合わせの博也が状況を確認しようと問いかけてくる。
「改造制服のおかげで助かったけど……それよりも、相手の姿が見えない」
「クロでも見えないの?」
「いや、見えないわけじゃないんだ。彩粒子だけはなんとなく見えてる。けど、相手の姿そのものがはっきり見えない」
「それって――」
「緑転!」
綾乃がなにか言おうとしたが、最後まで言うことは叶わなかった。
視界が緑色に染まる。
緑色は目に良いと言われるが、地面も壁も天井も、全てが緑に染まると気持ちが悪い。
しかも、先ほどまで真っ暗な世界にいたため、唐突に明るい世界へ放り出されたことで、目が異常を訴えて来る。
慣れるまで時間を要した。
その隙に――
「うおっ!?」
敵が再度、仕掛けてくる。博也がバランスを崩した。
「博也! 大丈夫か!?」
「お……おお? この制服、すげーな。今、刺されたような感覚あったんだけどな?」
どうやら、ダメージというダメージはなさそうだった。
改造制服、マジで凄い。
もう一度、三人で背中を合わせて態勢を整える。
「どこだよ……?」
黒江は再び敵の姿を捉えようと目を凝らすが、今度は全く見つからない。
先ほど、彩粒子だけは見えていたのだが、緑色の視界になり、それが保護色のようになっているのだろう。彩粒子すら見つけることができなくなっていた。
「クロ、たぶんだけど、迷彩能力かなにかじゃない?」
「俺もそう思う。いくら視界が悪くても、全く姿が見えないのは変だ」
綾乃の推察に賛成する。
詳細な能力は分からないが、黒江の能力をもってしても視認できないのはおかしい。
考えられるとすれば、周囲の景色と同化する能力だ。
服やナイフなども確認できない点を考えると、汎用性が高く、戦闘においても、とても有用な能力と言えた。
「どうする?」
綾乃の声に焦りがにじむ。
二度の攻撃は、たまたま改造制服に助けられたが、改造制服はあくまで『制服』の形をしている。首元や頭部まで完璧に防御しているわけではない。
もし、首元や頭部を狙われても、姿が見えない以上、防御しようがない。
黒江は頭をフル回転させる。
「綾乃の灰球で全方位攻撃とかできない? それなら相手がどこにいても関係ないでしょ」
「無理だよ。こんな視界の悪い中でやったら、敵に当てる前に、あんたたちに当てちゃうよ。強化されているクロはともかく、ヒロに当たったら無事じゃ済まないでしょ。それより、クロの能力……も、使えないか」
「この状況じゃ使えないよ」
「だよね」
黒江の身体強化は、強力すぎる。
前回の選定式で博也が怪我をしたように、彩粒子で強化されていると言っても限度がある。
先日の特訓で樋春も話していたが、黒江の能力を全開で使えば、最悪、体当たりするだけで相手を死亡させる可能性もある。視界が悪い中で使える能力ではない。
綾乃の灰球にしても同じだ。
強力であるが故に、味方に被害が出る危険性がある場合、使えなくなってしまう。




