第三章ー9
「じゃあ、ヒロ、代わりにアドバイス」
「ん?」
米粉パンをあげられなかった代わり、ということだろうか。
佳那は米粉パンを少量ずつ口に含みながら、ぼんやりとした表情のまま話を続ける。
「能力の発現に関して、ヒロは直球で考えすぎている」
「……というと?」
「赤だから炎とか、赤だから○○とか、間違ってないけど、それじゃあ能力は発現しない。もうちょっと捻ってみよう?」
「捻る? 黒江にもイメージ不足みたいなことは言われたが、それと同じ感じか?」
聞くと、佳那はうーんと考え込んでしまう。
そういうことでもないのだろうか。
「具体的に言うとね」
「お前は黙ってろ」
「酷っ!」
綾乃が口を挟んできたので即座に潰そうとするが、彼女は持前の図太さで強引に話を進める。
「佳那の飛行能力は、連想されるとすれば宙を漂う雲だけど、本当に雲だとしたら、漂っているだけで空を飛ぶ能力にはならないと思わない?」
「それはまあ、そうだな」
「樋春さんの大仏操作も、連想されるのが大仏だとして、それを出現させるだけなら、『操作』の部分が分からないでしょ? だから、ヒロに足りてないのは『連想されるモノ』をイメージするだけじゃなくて、それを出現させたとして、それによってどうなるかってところまで考えを巡らせることかな。モノをイメージするだけじゃなくて、『動作』をきちんとイメージしてみることが大切だと思うよ。ヒロは、そういうところまで考えてる?」
「……いや」
綾乃に指摘されたのが悔しくて、歯切れの悪い返事なるが、そこまで考えていなかったことを自覚する。
今まで、『能力を発現させること』ばかり考えていたため、その能力がどういう能力なのか、どういう動きをするのか、そこまで思考が追いついていなかった。
例えば、同じ炎でも、『炎を出せる能力』なのか、『炎を操れる能力』なのかでも、大きな違いがある。
今まで、博也は前者の思考が強かった。
とにかく連想されるモノを出現させようとするイメージだった。
それでは能力の幅が狭いし、イメージが足りていないということなのだろう。
「じゃあ早速、挑戦だ!」
「頑張れ」
女子二人は寮に戻る気はないらしく、鍛錬場の隅に腰を下ろす。
わざわざついていてもらわなくても良かったのだが、綾乃の言葉通り、煮詰まっていたのは否定できない。
能力に関してなら、この二人の方が上だ。
――ありがたく思っておくか。
博也は二人に見守られつつ、特訓を再開した。
……いつの間にか、二人とも寝ていたのは言うまでもない。




