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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第三章ーそれぞれの能力
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第三章ー2

 黒江の能力は、『身体強化』だった。

 黒江自身は気付いていなかったが、実は選定式の際に、その能力は発現していた。

 百メートル走では博也の方が速かったにも関わらず、選定式では、黒江が他を寄せ付けないスピードで西校舎から離脱できていたのがその証拠だ。

 博也が他の生徒と接触し、足を痛めていたこともあり、そこまで考えが及ばなかったが、博也曰く、黒江の足の速さは『神速』と言っても過言ではないレベルだったらしい。

 そう指摘された黒江は、すぐに試してみた。

 彩粒子を扱う際は、ただ『全力で』走ればいいだけだが、能力を使う時は少し感覚が違う。

 ただ体に力を入れるのではなく、体の奥底にある彩粒子を体中から放出するような、そんな感覚で扱うこととなる。

 これが難しかった。

「彩粒子の量が多いことも制御し切れない原因なのかな~?」

 半袖短パン姿の綾乃も会話に加わってくる。

 長い髪の毛を樋春と同じように頭頂部で結ってあり、普段よりも一層、活発な雰囲気を身に纏っている。

「それもあるだろうな。しかも、物質を操ったり、モノに作用するタイプではなく、自分自身を強化する能力だからな。力が大きい分、制御が難しいはずだ」

「なにか良い改善方法はないですかね……?」

 選定式は一週間後に迫っている。

 当初、樋春に示された予定では、異能制御の段階は数日で終えて、戦術面や、より実戦に近い形での訓練を行う予定となっていた。

「こればかりは、慣れる、しかないだろうな」

 樋春も苦い表情を見せる。

「じゃあ、もっと練習量を増やして――」

「駄目だ。黒江君の身体強化は他の生徒と違う。力の制御がままならない状態で安易に使用すると、君だけでなく、他の生徒にも危険が及ぶ。それは容認できない」

「……ですよね」

 強く否定され、唇を噛みしめる。

 黒江の身体強化能力は半端なものではない。

 彩粒子による身体強化の倍近い強化が施される。

 全力で走れば、目にもとまらぬ速さとなり、物を殴れば簡単に破壊できる。

 綾乃の能力に負けず劣らずの、強力な能力だった。


「出でよ! ストロベリークラッシュ!」


 会話が止まったところに、大真面目に間抜けな声が響き渡った。

 樋春、綾乃、黒江の三人は目を合わせ、笑いを堪える。

 声の出所は、博也だ。

 鍛錬場の隅で、腕を突き出し、吠えていた。


「燃えろ! 俺のレッドハンド!」

「これで終わりだ! アップルファイヤー!」

「召喚! ブラッドフェアリー!」

「来い! レッドバード!」

「消防車! 発進!」

「正義のヒーロー! 赤レンジャー!」


 聞くに堪えない。

「博也、意味が分からない上にどんどん迷走しているぞ!」

 黒江が声をかけると、博也は「だよなー」と項垂れ、その場に座り込んでしまう。

「会長、博也の方も、どうにかなりませんかね?」

「どうにもならんな」

「樋春さんでもお手上げですか?」

「考えつく限りのアイディアは教えてある。あとは本人のイメージが追いつくかどうかだ」

 笑いを堪えているのか、それとも本当に悩んでいるのか、樋春は無表情で黒江たちの問いに応じる。

 博也は博也で大問題だった。

 足の傷も無事完治し、本来ならば黒江たちと同じく樋春から特訓を受けられる状態なのだが、困ったことに、


 能力が発現していなかった。


 博也の彩粒子は赤色だ。

 バトル漫画や小説などで『赤』と言えば、『炎』のイメージが強い。それは真っ先に試した。が、何も起こらなかった。

 ならば、と赤色から連想するものを各自メモして博也に渡し、連日、博也は格闘しているのだが、一向に発現する気配がなかった。

 選定式まで一週間を切っている。

 傍から見るとアホみたいな言葉を連ねているようにしか思えないが、博也も、それだけ焦っているのだ。

 だとしても、『消防車! 発進!』は謎すぎるが。

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