第二章ー7
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「予想が当たっただけだよ」
鬼ごっこを終え、生徒会室へ集まった一年生チームに対し、樋春は事もなげに言った。
樋春は生徒会室右奥に設置されている冷蔵庫から、『レモン&マロン』と書かれた清涼飲料水を五本取り出す。
「まず、男子二名」
ペットボトルを黒江と博也に手渡す。
冷えた飲み物は嬉しかったが、果たして美味しいのだろうか。
「二人はこの間の選定式で、一気に最上階まで逃げてきたよね」
「はい」
「黒江君に着いて行った博也君は微妙なところだったが……おそらく、無意識の内に、上へ上へと逃げていく癖があるのではないかと予想したんだ」
話しながら、樋春は自分のペットボトルを開け、ごくごくと飲む。
「最初の五分間、あちこち走り回りながらそれを確認した。男子二人は、分かりやすくその傾向が出ていたね。上へ上へと逃げるのなら、最上階へ追い込めば、あとは下へ降りるしか選択肢はない。先回りすることも容易だ。……怪我をしていた博也君は、あっさり捕まえられたし、黒江君に関して言えば、綾乃さんを見つけたと嘘をついて、先回りしただけだよ」
そして、と樋春は続ける。
「白鳥佳那さん」
ペットボトルを彼女の目の前に置く。
佳那は、置かれたその物体をどうしようか迷っているのか、じーっと見つめ、硬直する。
「君に関しては、運が良かったというだけだ。おそらく下へ下へ逃げる癖があるのかな? 彩粒子の能力を考えれば、上へ逃げそうなものだが……。まあとにかく、追いかけてみたら、面白いように玄関へ行ってくれたからね。校舎内というルールがある以上、そこで終わりだったね」
「……いただきます」
自分の話が終わると、佳那は意を決したようにペットボトルに口をつける。
ごくりと一口飲むが、すぐにペットボトルをテーブルに戻す。
そして流れるような動作でポケットから米粉パンを取り出すと、もっすもっすと食べ始める。
口に合わなかったようだ。
「最後、灰霧綾乃さん」
「ありがとうございます」
綾乃はペットボトルを素直に受け取り、そのまま口をつける。
やはり口に合わなかったようで、綺麗な形をした眉がぴくぴくと動いていた。
「君は、どう感じた?」
「え? 私が、ですか?」
「そうだ」
綾乃はペットボトルを置き、うーんと腕を組む。
樋春ほどではないが、綾乃も同世代の女子の中ではスタイルが良い。豊満なバストが強調される姿勢になり、黒江はなんとなく目を逸らした。
「正直、追い詰められた感じはしませんでした。力づくで抑え込まれた印象でしたね」
「そうだ。君には癖と呼べるものがなかった。黒江君を捕まえた後、十分間、君を捕捉して、ずっと追いかけていたが、最後まで癖と言えそうなものはなかった。おそらく、その場の状況に応じて判断しているんだろうね」
君を捕まえるのが一番苦労したよ、と付け足した。




