表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第二章ー鬼ごっこ
15/131

第二章ー3

「綾乃がアレを出したのは本当だよ」


 困惑していると、不意に真横から声がする。

「うわ!?」

 顔を横に向けて、びっくりする。

 五十センチ程の距離に、人間が立っていた。

 音もなく、気配もなく、突然現れたのは『転校生』だった。

「……?」

 こちらが驚いたことに驚いた様子で、彼女は首を傾げる。

「佳那、もうちょっと存在感出していこうよ」

 黒江たちの正面にいた女子生徒――灰霧綾乃はいぎりあやのも、転校生の存在には気付かなかったようで、ため息をついていた。

「ええと、白鳥佳那しらとりかなさん、だったっけ?」

「そう。よろしく」

 淡泊な受け答えだった。

 透き通るような、耳に優しい声音だった。ショートボブの白髪と、柔らかい雰囲気によく合っている。その不思議な佇まいから、神聖な空気すら感じられる。

 彼女の口に収まっている白くて丸いモノを見なければ、だが。

「あの、一つ聞いていい?」

「なに?」

「さっきからずっと口に加えているそれ、パン、だよね」

「そう」

 なにか問題でも? と小首を傾げられる。

 人と話しをする時に、どうしてパンを口に加えているのか。

 食べるでもなく、どうして加えたままでいるのか。

 それで美味しさを感じられるのか。

 いろいろ突っ込みたいところではあったが、突っ込んでしまうとややこしくなりそうだったので、スルーしておく。

 代わりに、

「それ、米粉パンだよね。美味しいよね」

 共感だけはしておく。

 転校生が口に加えているモノには見覚えがあった。

 百メートル走の時は遠目でよく分からなかったが、黒江にとっては馴染み深いものだった。

 なにがきっかけだったか忘れてしまったが、黒江も、亡くなった姉も、米粉パンを好んでよく食べていた。姉が亡くなってからはなんとなく避けているが、姉弟そろって米粉パンが好物であったため、親もよく買ってきてくれていた。

 思い出の食べ物だった。

「……!」

 黒江が米粉パンについて言及すると、転校生は目を輝かせる。

「そう、そうなの! 誰にも共感してもらえないんだけど、小麦粉には出せない風味が癖になって、凄く美味しいの。個人的には――」

 心の友を見つけたと言わんばかりの食いつきようだった。

 顔を目一杯近づけて来る。

「いや、ちょっ」

 黒江は後ずさるが、転校生はお構いなしだ。

 さらに前進し、黒江の視界が埋まるほどの距離まで近づいて来る。

「佳那、ストップ」

「む……」

 唇がくっつきそうなところで、もう一人の女子生徒、灰霧綾乃が割って入ってくれる。そして、転校生に「その癖、直した方がいいよ」などと、お説教を始める。

「……」

 黒江は二人のテンションの高さに着いて行けず、ぼんやりと眺めていたのだが――


「それで! なんか用なのか?」


 女子生徒二人の軽いノリが気に障ったのか、博也がピリピリした口調で本題へ戻す。

「灰霧綾乃さん、だったか?」

「綾乃でいいよ」

「……灰霧さん。わざわざ一組からやってきて、俺らになにか用でも? 一組の連中は?」

 あからさまに苛々した態度を取られた綾乃は、一瞬むっとした表情をするが、それも僅かな時間だけだった。

 あっけらかんとした表情に戻り、


「一組の連中? 私以外、全員死んだよ」


 簡単にそう言ってのけた。

 驚きはしなかった。

 三組の生き残りは、転校生と黒江、博也の三人だ。

 選定式開始直後、おそらくは一番初めに襲撃を受けたであろう、一組がどんな状況だったのか、想像に難くなかった。

「クラスの知り合いが誰もいなくなっちゃったから、昨日知り合った佳那のところに来て話してたんだよ」

 綾乃は佳那と腕を組み、仲良しアピールをしてくる。

 選定式中に出会った、ということだろうか。

「さっき、鉄球を出した、みたいな話をしてたけど。本当?」

「本当だよ。……ほら」

 何もない宙に、一つの鉄球が現れる。

 手のひらサイズの鉄球で、昨日、選定式で見たものよりかなり小さかったが、宙に漂うソレは、あの時見た鉄球とそっくりだった。

 鉄球からはグレーの彩粒子が零れ落ちており、彩粒子由来の能力であることが分かる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ