第二章ー2
昨日、樋春が何故、自分たちを守ってくれたのか、聞くことはできなかった。守ってくれたことには感謝しているし、生き残れて良かったとも思っている。
だが、何故、自分たちなのか。
この生存率を目の当たりにすると、余計、疑問に思う。
「そういや、俺らが初めて来た日も、十数人くらいだったよな」
ボソリと、博也が呟く。
四月中旬。
黒江たちがこの世界へ来た当初、一年三組にはまだ十数名しかいなかった。
一日で約三人ずつ増えるのに、四月中旬で十数人しかいなかった。今にして思えば、おかしなことだった。
「……くそ」
疑問を持っていれば、行動できたかもしれない。
樋春たち上級生とつながりを持てれば、選定式の情報を事前に知れたかもしれないし、準備することもできたかもしれない。
後悔ばかりが募る。
「やっほー、お二人さん」
と、見覚えのない女子生徒が声をかけてくる。
おそらく、今日が初めての登校日なのだろう。
無駄にテンションが高かった。
「なんだか暗い顔してるね」
その女子生徒の第一印象は、『可愛くて』、『気さく』だった。
腰の辺りまで伸びている長い髪の毛は、グレーか、銀色か。転移前は艶のある黒髪でさぞ綺麗だっただろう。
丸く、パッチリとした大きな目と、右耳より少し上につけている黄色の花を模した髪飾りが目を惹いた。素直に可愛いと思わせる外見と、気さくで話しやすい雰囲気を持ち合わせている。
こんな状況でなければ、いろいろと想像してしまうところだ。
「君たち、名前は?」
女子生徒は愛想よく話しかけて来る。
正直、今は『事態』を理解できていない人間と話す気にはなれなかったが、無視というのも申し訳ない。
「真宮黒江、だけど」
少々不愛想な感じになりつつ、答える。
女子生徒はうんうんと頷き、
「そっちのマッチョなお兄さんは?」
面倒くさそうに明後日の方を向いていた博也にも尋ねる。
「赤峰博也」
「なるほど、クロとヒロね。クロヒロ……いいコンビだね!」
パチリとウインクされる。
ネーミングセンスが微妙なことと、妙に距離感が近いことを除けば、まあ、可愛かった。
「君は?」
これからクラスメイトとなる人間だ。
一応、名前くらいは聞いておこうと尋ねる。
女子生徒は待ってましたと言わんばかりに、長い髪の毛を揺らし、ぺこりとお辞儀する。
「私は、一年一組所属、灰霧綾乃。昨日はお疲れ様でした。……廊下に鉄球を出した人間、って言えば分かってもらえるかな?」
「………………え? 本当に?」
数秒、脳がフリーズした。
「本当だよ」
「嘘じゃなく?」
「嘘じゃなく」
「真面目に言ってる?」
「真面目に言ってる」
明るい表情の彼女に困惑する。
選定式開始直後、黒江たちの目の前に、廊下を完全に塞ぐほどの巨大な鉄球が出現したのは記憶している。それがあったから生き延びることができたと言っても過言ではない。
それを、今目の前にいる、気さくで可愛らしい少女がやったのだろうか。




