表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第九章ー乱舞
121/131

第九章ー7

「ほりゃ」

 透香は攻撃の手を緩めない。

 鉄球に当たり、飛散した氷をさらにかき集め、今度は左右から攻撃を繰り出す。

 身体能力が上がっていようと、丸い鉄球の上では足場が悪すぎる。

 龍海を倒した男子の方は、鉄球にしがみつき、落ちないようにするのがやっとの状態で、女子の方も、回避に専念しており、なにかができる風には見えない。

「……」

 透香は欲を出さないよう自制しつつ、攻撃を続ける。

 撤退を考えているからと、攻撃をやめるつもりはない。

 彼らが危険人物であることに変わりはないのだ。

 倒せるチャンスがあるなら当然、狙いに行く。


 ――で、龍海の方は……?


 ちらりと地表へ目を向けると、狙い通り、氷華鉄槌が激突した影響で砂煙が舞い上がっている。

 龍海が無事でいるなら、この隙に動くはずだった。

 透香を守ることを至上命題にしている男が、この窮地に、黙っているわけがなかった。

 しかし。


 ――……動きはなし、か。


 龍海が動いた様子も、動きそうな気配も、まるで感じられなかった。

 まだ意識を失っているのか、動けないほど状態が悪いのか。

「灰球、雹連!」

「ん?」

 視線を二人に戻すと、少女が仕掛けて来ていた。

 彼らよりも高い位置にいる自分の、さらに上空。

 無数の鉄球がずらりと並んでいた。

「甘いよ」

 降り注ぐ鉄球を、狼を駆って難なく回避する。

 続く攻撃はなかった。

 氷の刃を凌ぎ切った技量は褒めるが、やはり、空中戦の経験は浅いようだった。

 空中戦は、三百六十度、全方位から攻撃が飛んでくる可能性があり、一見、守る側が不利に思えるけれど、そんなことはない。

 三百六十度、全方位から攻撃が来るということは、三百六十度、全方位に逃げ道があるということでもある。

 地上戦以上に、『点』ではなく『面』で攻撃することが求められ、なおかつ、強力な技を一撃だけ放つのではなく、何度も続けざまに攻撃することが求められる。

 逃げ道を潰し、相手を倒し切るゲームプランを組めなければ、空中戦において、勝ち目はない。

「いくよ、クロ!」

「了解!」

 と、二人が視線を合わせる。

 先ほど、地上で話していた作戦だろうか。

 なにか、仕掛けるつもりでいるらしい。

 ここまでの戦いで、この二人には何度も驚かされている。

 なにがあってもおかしくはない。

「……」

 透香は今まで以上に警戒心を強める。

 視線や会話の内容から、実際に攻撃してくるのは身体強化の男子だと予測できた。

 彼が攻撃してくるのなら、近接格闘以外にない。

 まだ十メートルほどは距離がある。

 どんな攻撃を仕掛けて来ようと、油断しなければ――



「え?」



 突然、眼前に拳が迫っていた。

 まるで、時間が飛んだみたいだった。

 反射的に顔を逸らす。

 が、

「ぐっ!?」

 顔面への拳打は避けたが、突っ込んで来た少年の膝が腹部に直撃した。

 透香は氷牙狼から滑り落ちる形となり、空中へ投げ出された。

 その直後。

「はあっ!」

「――っ!」

 少年が追撃してきた。

 空中でバランスを崩した透香へ向け、一直線に向かってくる。


 ――氷鉄……いや、間に合わない。だったら!


 防御用の氷を生成している時間すらなかった。

 この距離では、龍海の時と同じ結果になる。

 彼の身体強化の前では、中途半端な防御は意味がない。

 ならば、と透香は次善の策を打つ。

 右手側に氷を出現させ、その氷を片手だけで掴む。

「痛っ」

 落下スピードが急激に落ちる。

 右腕の骨、筋肉、関節が悲鳴をあげたが、仕方がない。

 こうするしか、回避方法がない。

「おっ、と!?」

 正面から向かって来ていた彼は、透香の体が縦方向に切り替わったことで、攻撃タイミングを見失う。

 逆に、片腕だけで急ブレーキをかけた透香の体は空中でしなり、落下してきた少年の真横に避ける形となる。

「っとっとととーーー!」

 そのまま地上へ落下していく少年を見送って。

 透香は空中に停滞していた氷牙狼を操り、再度、またがる。

 無茶な動きをしたせいで、右腕が痛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ