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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第一章ー選定式
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第一章ー10

「さて、説明はそのくらいにしてだな」

 一転、樋春はこれまで見せてきた猛禽類のような威圧感を消し、にこやかに笑う。

「君たちに、相談がある」

 ふふんと得意げに鼻を鳴らし、ガタリと席を立つ。

「今説明した通り、現状、我々はいつ死ぬかも分からない状況にある。相手校の生徒も、自分たちが生き残るために必死だからね。しかも、昨日時点の第三高校の学校値がっこうちは全二十校中、十七位だ」

「は!?」

「え!?」

 予想以上に低い順位に驚愕する。

 下位十校は皆殺し。それがルールだ。

 お話にもならない順位だった。

「そう驚くな。年度ごとだと言っただろう。今日の選定式が今年度二度目だ。今日の結果次第で大きく変わるだろうし、まだまだ焦る必要はない。……あたしが言いたいのはそんなことじゃないんだ」

 樋春はテーブルにバンと手をつき、宣言する。



「あたしは、『選定式を変える』。そのために戦っている。君たちも協力してくれないか?」



     ◆◇◆



「彼らをどう見る?」

 黒江たちが去った生徒会室。

 二人の少女が言葉を交わす。

 一人は国立転移第三高等学校の生徒会長、金牧樋春。

 足を組み、椅子の背もたれに寄りかかる。

 幾分か、気の抜けた様子だった。

「論外です。私には到底、生き残れるとは思いません」

 厳しく言い放ったのは、もう一人の少女。

 生徒会室、長テーブルの最奥、議長席に座る樋春の、さらに奥。

 少女は窓際に立ったまま樋春に言葉を返す。

「黒江、と言いましたか。あの方の『能力』には期待できます。しかし……」

「しかし?」

「問題は別の部分です。初めての選定式ということを差し引いても、守られるのが当然といった様子であなたについて回るだけで、結局、最後まで何もしませんでした。あれでは、今後、生き残ることは困難だと判断します」

 樋春は少女の意見に対し、苦笑いで返す。

 それに関して、異論はなかった。

「でもな」

 日が沈み、徐々に闇の面積が増えつつある生徒会室で、樋春は天井を見つめる。

「あたしは、期待したい」

「何故ですか?」

「普通、初めての選定式直後に、初対面の人間からあれこれ説明され、突然『協力してくれ』と頼まれて、乗るやついるか?」

「それは……」



「あたしは、期待してもいいかもなと思ってるよ」



 憮然とした表情で黙る少女を横目に、樋春はふぅと息を吐く。

 真宮黒江と赤峰博也。

 少女の言う通り、選定式中は拍子抜けだと感じた。

 いきなり戦えとは言わない。むしろ、戦われても困る。邪魔になるだけだ。だが、戦おうとする姿勢くらいは見せて欲しかった。

 臨機応変に動けなければ生き残れないことも、紛れもない事実なのだ。

 要は、『切り替えが遅い』のだ。

 驚いてばかりで、今、その瞬間、自分になにができるのか、なにをすれば良いのか、考える力が足りていない。

 分からないなら分からないなりに、

「俺にできることはないですか?」

 この一言が欲しかった。

 彼らは、樋春が強いのを良いことに、隠れていただけだった。


 反面。


 状況を理解し、今、すべきことが判明した時。

 異様なほど、判断が速い。

 やらねばならないことがきちんと飲み込めた時、彼らは、なんの躊躇もなく、こちらの領域に踏み込んできた。

 彼らは樋春の誘いに対し、即決に近い速度で「協力します」と宣言したのだ。

 それはある種、危険なことでもあったが、上手く育てることができれば、強みになるとも感じる。

「……? 寝るのですか?」

「ああ。少し疲れた」

 背もたれに寄りかかり、目を閉じる。



「明日から、また忙しくなるな」



 樋春は未来へ想いを馳せ、眠りについた。


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