第一章ー9
「……」
選定式開始直後、目の前に飛んできた腕が、頭が、血潮が、鮮明に浮かぶ。
自分たちの地位を守るためだかなんだか知らないが、そんな理由で、何も知らないまま、同級生たちは殺されたのだ。
残酷で、醜悪なルールだった。
樋春の言葉が正しいのなら、相手校の生徒たちだって、同じ状況のはずだ。生き残るために殺すしかないシステムに巻き込まれた、ある意味、被害者だ。
吐き気がした。
なにが学校値制度だ。
なにが選定式だ。
当初、保持者を受け入れる体制を整えようとしたらしいが、本当に受け入れようとしたのだろうか。それすら疑わしい。
そんな短絡的な発想に至るほど、この世界の住人は馬鹿ばかりなのだろうか。
「あの」
博也が手をあげる。
「なんだい?」
「学校値が低ければ殺される。……そのクソみたいなルールは分かりましたが、それ、どうやってですか? 俺らは彩粒子を操れますし、なにより、会長や、攻めてきたあいつらも、特殊能力みたいなものを使っていたじゃないですか。軍隊か警察か知りませんが、そんな簡単に『殺処分』できるとは思えませんが」
博也の言う通りだ。
大剣使いは、一振りで十数人を殺害できる爆発能力を持っていた。木人も、樋春の大仏操作(?)もしかりだ。
その上、彩粒子の力で身体能力そのものも上昇している。
そんな者たちがもし、束になって反撃してきたら、殺すどころの話ではない。
黒江もその点は気になり、頷くことで博也に同意するが、答える樋春の表情は変わらなかった。
諦めと嫌悪が混じった表情のまま、吐き捨てるように言う。
「できるんだよ、簡単に」
「どうやってですか? まさか、彩粒子を無効化するような――」
「そんなものはない。以前、この状況に耐えかねて、大脱走を計画した学校もあったんだが、逃げようとする生徒たちを殺す際も、無効化している様子はなかったらしい」
「だったらどうやって……?」
「いるんだよ」
「え?」
「この世界の住人に協力することで、見返りをもらい、常に安全圏で生活しているヤツらがな」
樋春はいらつきを隠さず続ける。
「君らは、彩粒子を凄いモノだと思っているようだが、実際はそうでもない。多少身体能力が上がったところで、ガトリング砲とか、ミサイルとか、そんなものから身を守れると思うか? まずその時点で、重武装しているあいつらに立ち向かうのは難しいんだ。その上、我々と同じ能力を使える保持者が、何人も向こうにいるんだよ。勝てると思うか?」
「……」
あなたなら勝てるのでは、と言いそうになったが、声には出さなかった。
怪我一つすることなく選定式を乗り切った本人が、無理だと断言するのだ。『絶対王者』である彼女ですら、諦めざるを得ない戦力差があるのだろう。
事実、いくら大仏を出現、操作できたところで、ミサイルで攻撃されたらひとたまりもないだろう。それに、一緒に移動して分かったことだが、樋春本人の能力は、黒江や博也と変わらない。大仏操作という能力は脅威だが、樋春本人は生身の人間なのだ。銃弾一発で即死する可能性だってある。




