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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第八章ー覚悟
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第八章ー4

「二つ目」

 淡々とした口調のまま、茜は告げる。

 茜が視線を向けた先。

 そこにいるのは綾乃だった。


「灰霧、あなたがいるからです」


 驚く綾乃に、茜は「当然です」と言う。

「先ほどの戦いにおいて、あなたの活躍は目を見張るものがありました。……最初の攻防で樋春を助けただけでなく、二対一とはいえ、格闘戦の真っ向勝負で龍海の攻撃を凌ぎ切っていました。それに、結果はともかく、真宮が飛び出した時の選択が樋春と全く同じだったことも要因の一つとしてあげられますね」

 茜は「なにより」と続ける。


「透香はあなたのことを、樋春に似ていると評していました。……これは、追撃されるに足る理由だと思いませんか?」


 綾乃本人は信じられない、という表情を浮かべたが、黒江は大いに納得できた。

 綾乃は、持前の対応力に加えて、『戦うコト』への嗅覚が鋭い。

 毎日のように拳を合わせ、特訓をしていたからこそよく分かる。

 彼女は黒江と同等の格闘技術を誇っているが、実は格闘訓練を受けていない。

 特訓時、綾乃は灰球の制御に関する指導を集中的に受けており、つまり、綾乃の格闘技術は、『見て盗んだ』か、『自主トレーニング』以外あり得ないのだ。

 そもそも、モノは違えど、物質を出現させて戦うスタイルは、樋春とよく似ている。その上、格闘技術が高く、灰球の制御もでき、その場の判断も早いとなれば、樋春に似ている、と評されてもおかしくない。

「やっとのことで樋春を倒したのに、それを継ぐ者が現れたのでは意味がありません。間違いなく、標的となるのは、私と灰霧でしょうね」

 そう言って、茜はロボットみたいな口調のままで、次々と指示を飛ばしてくる。

 他の生徒会メンバーは現在、第八高校に乗り込み、攻撃を仕掛けている。樋春が殺されたことは既に連絡済みとのことだが、乗り込んだ先でも激戦となっており、すぐに戻って来れる状態ではないとのこと。


 つまり、茜と一年生三人で透香たちの追撃を防ぐ必要がある。


 茜は、自身が校内に仕掛けた数々の罠を説明し、透香、龍海の弱点を改めておさらいする。

 樋春が不在の時点で、勝ち筋は限られてしまうが、それでもやるしかないようだった。

「――以上です」

 そうして、一仕切り説明を終えて。

「なにか質問はありますか?」

 問いかけて来る。

 茜は説明時から、時折、テーブルに置いてあるタブレット端末に視線を落としている。

 おそらく監視カメラの映像から、透香たちを始め、相手校生徒の位置を確認し、危険がないかチェックしてくれているのだろう。

「……」

「……」

「……」

 一年生三人はさっと視線を巡らせる。

 生徒会室に到着してすぐ、黒江、綾乃両名は茜に新しい改造制服をもらい、着替えている。

 博也は床に毛布をしき、横になっていた。


 ――質問したいこと、か。


 茜が話した作戦に関して、特別質問はなかった。

 現在の戦力で取ることができる最善策だと思えたし、反論はない。

 ただ、それとは別に、質問したいことがないわけではなかった。

 三人ともが気になっているコト――。


 樋春が死んだというのに、なんで平静でいるのか?


 選定式中だ。

 そんなことを言っている暇がないことくらい分かっている。

 相手にしなければならないのは、それこそ、あの樋春を屠った者たちだ。悲しんでいる余裕はない。

 黒江たちだって、理解できているから静かに話を聞いている。

 佳那が死んだ時、樋春も言っていた。


『死んでしまったものは仕方がない』

『ショックを受けるのは、選定式が終わってからにしてくれたまえ』


 間違っていない。

 口で言うのは簡単だ。


 それでも。


 佳那が死んだ時、綾乃が声をあげたように――。

 少しくらいは、態度に出ても良いのではないだろうか。

 淡々と物事を進められるほど、茜にとって、樋春という存在は小さかったのだろうか。

 樋春が命を懸けて、選定式を変えると集めた仲間たち――生徒会のメンバーは、そこまで薄情な人間なのだろうか。

「質問はないですね?」

 もう一度、確かめるように茜が問いかけてくる。

 一年生三人も、もう一度視線を合わせるが、


『会長が亡くなったことに対して、何も思わないのですか?』


 などと聞ける人間はいなかった。

 ついさっき顔を合わせたばかりの人に対して、そんなデリケートなことを聞けるわけもなかった。

 茜は質問がないことを確認し、タブレット端末に視線を移す。

「では、作戦に移ります。各自、自分の身体状況の確認、及び、メンタルをコントロールしてください。十分後に行動開始します」

「はい」

「了解です」

「分かりました」

 バラバラに返事をして、一時、解散となる。


 樋春が締めてくれた時は、もう少し、まとまりがあった気がした。

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