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コドクの学園  作者: 初雪奏葉
第一章ー選定式
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第一章ー8

     ◆



 金牧樋春かなまきひはると名乗った女子生徒は、最強の戦士だと言われても疑う余地のない強さを誇っていた。足手まといの二人を連れてなお、彼女の戦闘力に綻びはなく、結局、傷一つ負うことなく選定式せんていしきを終えてしまった。

 選定式は終了の時刻――午後五時にチャイムが鳴るだけで、点呼などもなく、そのまま解散となるらしい。

 それから一息ついて。

「なにから話すべきか迷うが……」

 午後五時半。

 生徒会室の最奥。

 生徒会長席に金牧樋春は座る。

 金牧樋春の見た目を一言で表現するなら、『皇帝』だった。

 黒染めしたという長い髪の毛は後頭部頂点で結ばれ、長い尻尾を垂らしている。狩猟者を彷彿とさせる鋭い視線、細長い目は、彼女が持っている空気にこれ以上ないくらい合致していた。足も長く、スタイルも良い。

 王者であることを義務付けられたような、強烈な存在感があった。

 生徒会室は中央に長テーブルが二台あり、それを囲む形で両サイドに椅子が置いてあった。

 まさか彼女一人で生徒会と言っているわけではないだろうから、他にも生徒会メンバーがいるのだろう。

 黒江と博也、男子二名は最奥に座る樋春から見て左側に並んで腰を下ろしていた。

 選定式終了間際に、「君たちには選定式についてきちんと説明しておきたいんだが、時間はあるかい?」と誘われた。

 断る理由はなかった。

 ほんの数時間で何十、何百という同級生を殺されたのだ。

 樋春に守られ、安心感を得た二人は「なんでこんなことが起こるのか?」、「ただの大量虐殺じゃないか」と憤りを覚えていた。

 説明してもらえるのなら、詳しく聞きたかった。

「ざっくり言うと、転移者――保持者ホルダーを『選別』し、数を減らそうっていうのが選定式だな」

 樋春はそう切り出した。

「もともとこの世界にいる住人たちは彩粒子を持たないからね。本来、人間には備わっていない異常な能力を持つ保持者が増えすぎると、社会そのものが崩壊する。……まあ、この世界の住人も同じ人間だ。保持者がこの世界に現れ始めたのは十年前だと言われているけれど、当初は受け入れる体制を作ろうとしたらしい。ただ、あまりにも数が多すぎて、そんな悠長なことを言っていられなかった。で、結局、保持者たちにこれまで築き上げてきた、自分たちの地位が脅かされることを恐れて、今のように、『選別』が始まったと。そういうことだ」

 短絡的な発想だよ、と樋春は肩をすくめる。

「自分たちの地位が、って、そんな理由で?」

「そんな理由で、だよ。権力を持つ者たちはいつの時代、いつの世の中でも、それにしがみつくものだ」

 樋春はまた、理解に苦しむよ、と肩をすくめる。

 理解に苦しむ……。

 その通りだった。

 彩粒子という異常能力を持っていたとしても、同じ人間だ。

 ペットじゃないのだ。言葉も通じる。『数を減らす』などと、そう簡単に決められる発想自体が理解できない。自分たちの地位とか、そんなものの前に、もっと大事なものがあるだろう。

 それとも、そんなことを言っている余裕すらなかったのか。

 黒江は少し考え、疑問を投げる。

「この世界にもともといた人たちに、『殺し合いをしろ!』と言われたとしても、従う必要はないですよね。なんで、真面目に殺し合いをしているんですか?」

「真面目に殺し合いをしなきゃいけない状況があるからだ」

 即答される。


「『学校値がっこうち』、というものがあるんだ」


 樋春はもともと鋭い目を、さらに細め、テーブルに頬杖をつく。

 嫌悪感を隠さなかった。

「平たく言えば、学校ごとのランキング制度だよ。いろいろシステムはあるんだが、重要事項だけを切り取って説明すると……年度毎に『相手校の生徒を殺した人数』でランキングを付けるんだ。全二十校中、下位十校は、何人生き残っていようと年度末に全員殺されるんだよ」

 大事なことは、と樋春は付け加える。

「生き残っている数、ではなく、相手を殺した数でランキングをつけていることだ。年度末に生き残るためには、必ず相手を殺す必要がある。『相手を殺さない』選択肢は生まれないってことだな」

「なんですかそれ……」

 呻く。

 最低なルールだった。

「つまり、選定式で生き残るためには、最低二つ、壁を超えなくてはならない。……殺した数で競うからには、相手も必死で殺しに来る。それを退け、かいくぐり、選定式中に死なないことが第一条件。そして二つ目は、自身が生き残った上で、学校値を高く保つこと――相手校の生徒を、殺すことだ。そうしなければ、有無を言わさず、全員が殺される」

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