10 舞台準備
(これはまずい。非常にまずい)
氷の女王と背後にいる“得体の知れない何か”と狭い廊下で遭遇し、マレードは生命の危機を感じていた。
(凄いプレッシャーだ! うちの警備では太刀打ちできないかもしれない)
“得体の知れない何か”は揺らめく青白い炎の様に朧げに輪郭を作り、二つの光を揺らしながら吐息の様に冷気を吐きだす。その様子にマレードは人を呼ぶことを止め、一人でこの状況を脱する方法を探っていた。
「あら? そんなに興奮して…… 強い匂いを感じるのね?」
冷気に身を包まれているにもかかわらず汗を額に垂らすマレードをよそに、15歳の少女は微笑みを浮かべて“ゆらぎ”を撫でる。
すると、“得体の知れない何か”は毛先から実体を表し、その正体をマレードの前に晒した。
青白く針金の様に尖った毛に、血走った眼。鋭い牙が見える口からは白い冷気を吐く。それは巨大な熊の如き獣。魔獣だった。
高さ三メートルも無い廊下に奴は窮屈そうに身体を埋め、その怒りを放出するように目前にいるマレードを睨みつけていた。
(だがおかしい……)
マレードが感じたように、このような事は普通あり得ない。魔法封じの結界下では魔力供給の必要な魔物は生存する事が出来ず、魔力を強制的に確保するための首輪もこの大熊には装備されていない。
「オラフの姿が見えますのね。
まぁ、いいでしょう。隠していても意味は無いですしね」
マレードの抱いた疑問は直ぐにそれを操る少女の口から語られる。
「この子はオラフ。私のタレントですわ」
「タレント……」
「そうです宰相閣下。オラフの存在が私のタレントであり、この子を従えるのが私の力です」
タレントにも様々ある。俺やジレットさんの様に思考に関わるもの。ナナミさんの様に目に見えぬ何かを見るもの。カティアさんの様にタレントに対し影響をもたらすもの。アスタロトさんの様に事物に影響をもたらすもの。整理するのも面倒なほどに様々だ。だから彼女の様に形として現れるものがあっても不思議ではない。
「ああ。それと、この子。とても怖い見た目をしていますが、とてもおとなしいのですよ」
「おとなしい?」
威嚇する血に飢えた獣の様なその姿を前に、おとなしいと言われても納得する事は出来ない。今にも奴は鋭い爪と牙で襲い掛かってきそうだ。
「ええ。それにオラフに触れる事が出来るのは私だけ。本来第三者の視界にも映らないのですが、今のこの子は極度の興奮状態で」
「興奮状態?」
マレードは少女に疑問を返すばかりだ。それ程に今の状況を理解するには材料が足りないのである。
「ここには強い匂いが漂っていまして…… ああっ、まだ先ほどの答えを頂いていませんでした。 宰相閣下。フラン・フォン・スカンディナビアはどちらにおいででしょうか?」
「申し訳ありませんが皆目見当もつきません。恐らく本家かマウントフィールド本社にいらっしゃるのではないでしょうか?」
フランの異様な怯えの理由に俺は合点がいった。彼は彼女を恐れていたのだ。つまり、彼女の目的はフランの命。確かに彼ら兄妹の関係は複雑だし十分にあり得るだろう。
「ふふふ。嘘はいけませんわ。宰相であり、大貴族である貴方は国民の木鐸でなければなりませんよ」
「嘘ではないよ……」
ここにマウントフィールドの代表が来ている事は公にしていないし、フランがその代表としてきている事は更に知り得ない事だ。それに、女たらしなフランであっても命を狙う女に自らの居場所を教えるようなへまはしないはず。
「駄目ですよ。私には分かるのです。
――だってこの場所…… お兄様の匂いで一杯なのですもの!!」
レベッカが恍惚な表情で辺りを嗅ぐと、続けてオラフが鼻を突きだして空気を吸い込み、そして“花咲じじい”の犬の様に何かを見つけたと言わんばかりに吠えた。
「ああっ、感じるのねオラフ!! 私はお兄様の匂い抱擁されているのね!!」
マレードは理解した。オラフは“花咲じじい”の犬の様ではなく、花咲じじい”の犬そのものなのだ。奴の嗅覚は宝の匂いを嗅ぎ分けたのである。
「特訓の甲斐があった。逃げ回るお兄様を見つける為にお兄様の衣服や、お兄様の入った浴場の湯の中でオラフを過ごさせていたのは正にこの為……」
続いてレベッカは悍ましい動物虐待を誇らしく語った。オラフは麻薬捜査犬の様な調教を受けていたのだ。
「では、調べてみますか? 執務室はそこです」
(だが残念だったな小娘。君の狙う相手はもうここにはいないのだ!!)
マレードはここからフランを脱出させていた事に安堵し、小さなヒットマンを先程まで親友と語っていた執務室へと招き入れた。幸いにも脱出口のある給湯室より長時間居座ったこの部屋の方が、フラン臭残存率が高いらしく、給湯室に目を向ける事無く彼女はマレードの招きに従った。
その際、巨大な獣の躰はまるで実体がない霊体の様に扉の枠をすり抜け、レベッカに続いて部屋へと入る。その様子は先に彼女が言った「オラフに触れる事が出来るのは私だけ」との言葉が真実であるという証左であった。
「グゥゥゥゥゥゥウウウ!!」
「ここにいるはずですわね。
宰相閣下。不躾ではありますが、少し探させて頂きます」
「どうぞどうぞ。書類とかに触らない限りでご自由に」
マレードは革張りの偉そうな椅子に足を組んでドヤ顔で座ると、レベッカの無駄な行動をただ見つめる。
「ああ、一体何処に行かれたの……」
だが、彼女の表情に悲壮さと必死さが浮かぶと、伝播するようにマレードの表情も変わっていく。彼女のその表情が「殺意を向ける相手を探している」ものには見えなかったのだ。
「ところでフラン・フォン・スカンディナビアを探してどうするの? ていうか、君たち一応家族だよね?」
そこでマレードは彼女にここに来た目的を訊くことにした。勿論、彼女の心の声を聞くのだ。
「お兄様を監禁……連れ帰って愛を育む為ですわ」
(愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい!!!!!!!
あの逞しく可憐なお姿を氷像にして後世に語り継ぎたい!! 嫌! それは駄目!! お兄様は私だけのもの!! 私だけがあの方と共にいる事を許されるの!!!
子供は何人がいいかしら。四人は欲しいわね。もう名前も考えてあるの)
――絶句と後悔。二つの言葉でマレードの心情を説明できる。十五の少女の口と心から漏れた余りにも過激な欲望に言葉を失い、軽々しく諸刃のタレントを使用してしまった自分を嫌悪した。
「いやいやいや。でもさぁ。君たち腹違いかもしれないけど、一応兄妹なんだよね? 愛って、育むって……」
彼女の口と心が言い放ったのは兄弟愛を遥かに超えるレベルであり、マレードは恐ろしいものに触れてしまった様な顔で椅子ごと彼女から遠ざかった。
「腹違いの兄妹…… ああ、確かそう言う事になっているんですね。フフフフフ……」
ドン引いているマレードに対し、レベッカは十五の少女とは思えないような蠱惑的な笑みを浮かべる。
「宰相閣下にご迷惑をおかけした事へのお詫びに、スカンディナビア家の秘密をお教え致しましょう」
レベッカは相棒の獣を連れてマレードの元に近づくと、その顔をじっと見つめながらマレードが話を聞く体勢になるのを待った。
そして、マレードが喉を鳴らし、レベッカに対して「聞こう」と一言返すと、彼女は一歩離れてオラフの巨体に寄り掛かり“スカンディナビア家の秘密”とやらを語り始めた。
「スカンディナビア家当主レオモンド・フォン・スカンディナビアは私の母マリア・エアシャトルと禁断の関係を持ちました。それは事実です。で・す・が」
この先の話が重要であると言わんばかりに、レベッカは逆説の接続詞を強調する。
「その一度だけの契りは実を成す事は無かったのです」
「……? それはおかしい。なら俺の前にいる少女は何者なんだ?」
彼女の言う事が真実なら、レオモンド氏とマリア・エアシャトルとの間には子供が出来なかったという事であり、隠し子であるレベッカは存在しない筈なのだ。
「私が何者……ですか。
至極簡単な事です。私はエアシャトル家の両親のもとに生まれたスカンディナビア家とは全く無関係の人間です」
白い指を自分に向けて彼女はそう言うと満たされたように静かに笑う。どうやらこれが彼女が最も言いたかった事の様だ。
「では、世間で回っている事は偽りと? そもそもその事をスカンディナビア家は知っているのか?」
「ええ。存じていますとも。ご当主様はその事を知ってながら私をスカンディナビア家に招き入れたんですもの」
ああ、何となく読めてきた。つまり――
「責任逃れか。スカンディナビア家も姑息な事をする」
「ええ。お察しの通りですわ」
身も蓋も無い言い方をするとスカンディナビア家当主レオモンドのしたことは不倫、浮気だ。しかも相手方は名のある家柄ではなく、見方によっては家の力をもって従わせたようにも見える。
だが情報化の激しいこのご時世の中、権力者と雖も何かを隠し続ける事は容易ではなく、結局その事は公に出たわけで。彼らはなんとか広まる悪評を収束させたかった。そこで目をつけたのは相手方の息女。一般家庭の娘を帝国有数の名家であり、恐らく、誰よりも金持ちなスカンディナビア家に本家の娘として招き入れるという“あしながおじさん”ぶった行動をする事で火消しを図ったのだろう。エアシャトル家としても、スカンディナビア家と太いパイプが出来る事となり、この申し出を嬉々として受けた事は想像に難くない。まぁ、周りの人間にとってはたまったものでは無いが。
「なるほど。それで君はスカンディナビア家への反発心からエアシャトル姓を……」
正直同情する。彼女にとっては親の事情で目まぐるしく環境が変わったのだから。
「え? それは無関係ですよ。
私がエアシャトル姓に拘るのは華々しい未来の為!! だって、兄妹だと私お兄様と添い遂げられないじゃないですか!!」
それでそこに戻るのか。どうやら俺が思っている以上に彼女は逞しく、したたかなようだ。
「そ、そうか~ それじゃあいばらの道だろうけどお幸せに」
正直馬鹿馬鹿しくなったマレードはテンションの上がるレベッカに近づくと手先を出入り口に向けて帰宅を促した。ぶぶ漬けである。
「あらぁ? 私とお兄様の馴れ初めをお聞きにならないのですか?
あれは三年前。私が初めてスカンディナビア家の邸宅に訪れたあの日、運命の出会いが……」
こちらの応答も聞かず、レベッカは視線を宙に向け、乙女の顔をして思い出話を始める。この唯我独尊な感じ俺の知る誰かに似ている。
「このタレントに目覚めていた私は、親も含めて周囲から不気味がられ孤独でした。そんな私にあの方は声をかけて下さったのです。
“君かわいーねー。どこから来たの? 上に庭園を望んでお茶が飲める場所があるんだけど一緒にどうだい?”
ああ、冷気に当てられているのも関わらずかけて下さった、あのお優しいお言葉に今でもレベッカは励まされているのです!!」
(…………あのバカヤロー)
学生時代からフランは女性に目が無かった。女とみれば、相手が小学生だろうが人妻だろうが、男の娘だろうが見境なく声をかけ、茶に誘う。
俺は彼のそのような態度を危惧し、幾度と親友として「いつか女で痛い目をみるぞ」と忠告していた。そして今、彼は痛い目を見ているのだ。
「これは運命!! 母が過ちを犯したのも、私がスカンディナビア家に迎え入れられたのもお兄様と出会うために神がお導きになった事なのです!!」
レベッカは自分の思い出話に酔い、テンションをあげていく。
「ああ、あれは私がお兄様に初めてクッキーを焼いたとき。ふふふ、あのお方何と仰ったと思います?」
「“おいしーな”かな……」
「つまらないお答え。お兄様はこう仰ったの。“クッキーは冷たいけど君の気持は焼き立ての様に温かいぜ”って…… ああ、なんとお優しいっ!!!」
(口説き文句の常套じゃねえか…… つか、この話長くなるのかな……)
話は終わりが見えない。初恋の少女とはかくも情熱的で、かくも恐ろしい。
ああ、分かった。このお口暴走マシンガンな感じ、方向性は違えど、ノワール・ペシェに似ているのか。徒労感が半端ない。
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結局彼女の話は一時間を少し超えたあたりまで続いた。本来、フランとビジネスについて話す時間を、レベッカ嬢とフランの寒いのろけ話で埋める事となった。
「あら、もう日が落ちてきましたわね。
まだ話半ばもいっていないですが、今日はここまでといたしましょう」
未だ満足に至っていないと言いたげな表情でレベッカは水色のスカートを払いながら立ち上がり、舞台のパフォーマーの様にマレードに一礼した。
「この続きは後日。その時は、温かい紅茶とケーキを所望しますわ」
「ははは、次回はお手柔らかに」
自分が招かれざる客である事を忘却した様なふてぶてしいセリフにも、彼女を早く帰らせたいと思っていたので、マレードは敢えて口出ししなかった。
「それじゃあ、ごきげんよう。宰相殿下」
ほんのり透明になり始めたオラフに跨ると、レベッカは部屋の出入り口と逆に位置する窓に接近する。
そして、窓を大胆に開けた後、窓枠に手をかけて今にも飛び出そうとした時。彼女はぴくっと止まり、マレードの方に顔を向けた。
「ああ、一つご忠告です」
(ちっ、何だよ……)
窓枠の下壁をすり抜けるオラフに跨ったまま、少女は右手の人差し指を小さな顔の前に立てた。
「微かにですが、オラフが宰相閣下からこの世のものとは思えない匂いを感知したみたいです」
「この世のものとは思えない?」
「ええ。オラフが姿を晒したのもそのせい。よほど不快だったのでしょうね」
あの獣が野性を露にしていたのはその“匂い”の所為らしい。それより、俺は彼女が霊媒師の様に意味深に語る“この世のものとは思えない”という言葉が引っかかり、再度彼女に問う。
「それで、この世のものでは無いって何なのだ?」
「そんなの私が知るわけないじゃないですか。私はオラフが感じた事を何となく、どことなく、閣下にお話ししているだけです」
レベッカの返答に俺は肩を滑らせたが、彼女の言葉を無暗に聞き流すわけにもいかない。なぜなら、オラフの嗅覚が彼女のタレント能力に内在するものであれば、その違和感は本物であり、俺の躰にはこの世のものでは無い何かが付着しているのであろう。
「特にその通路の先、東側の突き当りにある部屋が酷いみたい。通路はお兄様の香りでいっぱいなのに……
私からはそれだけ。それでは宰相閣下ごきげんよう」
「え? ちょっと待って」
不快なしこりを残して、レベッカはオラフと共に兄を求めて窓から飛び出していった。マレードは冷気の残る窓に駆け寄り、外を見回したが、そこには獣を駆る少女の姿は無く、夕の紅がかかるのどかな庭の風景だけが広がっていた。
「はぁ、勝手に来て、言いたい事を言って、勝手に帰ったよ」
そう言って、首を動かして血を巡らせながらマレードは革張りの椅子に腰を戻した。そして机に肘を立てると、彼女の言った言葉を反芻する。
“この世のものでは無い”
彼女はまるで心霊であるような顔でそう言ったが、俺には別の方向で心当たりがあった。そう、俺は神――と自称する少女と対面しているのだ。天井の存在たる彼女がこの世と乖離した香りを放っていたとしても不思議はなく、俺にそれが残っている可能性はゼロではない。
だが、レベッカ嬢は加えて奇妙な事を言っていた。通路東突き当りの部屋の件だ。あそこにあるのは応接室。無論俺はあの場所で“のじゃ神”と一緒になっていない。
ここ最近あの部屋を使ったのは、ワンワールド誘致の契約の為にプロデューサーであるマルク・エスセブを招いた事くらいか。
そして、その名と共に俺がタレントを使った時に経験した奇妙な現象が想起される。
(もしかしてあいつ人間じゃないんじゃ……)
そう考えれば話は通る。
だが、やはり腑に落ちない。目上の者にタレントを使ったらどのような感じになるのかは既に経験しており、あの日に感じたモノはそれとは別だ。言ってしまえば、俺とエスセブ氏間ではなく、“何か別のナニかが介入した”ように俺は感じた。
「ふぅ……」
考えた所で答えが見つかるわけでもなく、マレードは座したまま一息つくと静かになった部屋を見回す。
そして、彼は気付いてしまった。
「俺の秘書どこ?」
マーバス市内旧市街に聳えるホテル『インペリアル』。そこに滞在するマルク・エスセブはトキオに残したスタッフたちとジーマ公演について話を交わしていた。
「ああ、そういう事だ。いかに辺鄙な場所でも最高のパフォーマンスをするのがプロというものだ」
受話器を持つ手の小指を立てて、バスローブ姿のエスセブは旧市街の街並みを見下しながら声を弾ませる。
「メンバーの現地入りは環境に慣らす為に早めにした方が良い。幸いにこの月には余裕があるし、7の日にトキオを出てはどうだろうか?」
「プロデューサーはご存じないのですか!? 今日の朝シュウがトキオを発ちまして、そちらに向かっているはずなのですが…… てっきり私はプロデューサーの指示だと」
「何? 僕は聞いていないぞ!!」
自分の見える範囲の外でワンワールドのメンバーが動き始めていた事を知り、エスセブは怒りを言葉に乗せた後、暴力的に受話器を戻した。
そして、頭を掻きながら小さく赤い絨毯の上に円を描きながら合ういた後、深呼吸をして天井の灯りを見つめた。
「何を憤っているんだ僕は…… シュウが間違った事をする訳がない。彼は常に正しいんだ…… ずっとそうだったじゃないか」
エスセブはそう一人で呟くと、再度受話器を取り、一方的に切ったスタッフにもう一度線を繋いだ。
「――先は済まなかった。他のメンバーたちもシュウに続いて明日にでもマーバス入りできないか聞いてくれ。ホテルはこちらで手配しておく。この街の宿泊施設はどこもスッカスカで部屋を取るのには難儀しないだろう」
それだけを言い終えると、エスセブは眼鏡を外してツインベッドの中心に身体を転がす。そしてこの公演の“真の目的”を心に思い浮かべた。
「僕はもう光を浴びる事はない。だが……」
なんとも言えない感情が敏腕プロデューサーの顔を険しくさせる。そしてこの夜、その感情は彼の頭の中に残留し続け、少しの眠りも彼に与える事は無かった。
「この空港を利用するのは今年に入って五度目かな。全く異国感がないよ」
リュックを背負った大陸で名を轟かすトップアイドルの後姿が、帝都国際空港の無駄に明るい灯りに照らされる。
役者は舞台に揃いつつある。観客は何も知らぬ哀れな子羊。彼らはこの先も知る事はないだろう。だが、こう言ったものにはアクシデントがつきもので……




