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最終話:軍隊と決戦

 兵隊たちは、すっかり眠っているようだ。

 もう、ゴブリンを全て退治したと安心しているのか、歩哨も立てていない。


 ゴグとギイは音を立てないようにしながら、広場の建物へと向かって行く。

 建物の側に近づくと、見慣れない兵器が置いてあった。

 長い銃身にベルトみたいなのが付いていて、それに銃弾が大量に装着されている。


「こいつが人間たちの新兵器かもしれん」

「なんだい、それ」

「ザギから聞いたんだが、もの凄い勢いで銃弾が発射されるらしい」

「ふーん」とギイはあまり興味がなさそうだ。

 

 窓から見ると、三十人くらいの人間たちが大騒ぎをしている。

 酒を飲んで酔っぱらっている奴もいれば、裸で踊っている奴もいる。

「こいつらは幹部クラスだろう。中がよく見えないな、宴会でもしてるのか」とゴグが言うと、

「二階に登ってみようぜ」とギイが背の高さを利用して、二階のベランダにとりつく。

 ゴグを引っ張り上げて、建物の中に入った。


 建物は吹き抜けで、二階には回廊がついている。

 回廊から見下ろすと、人間たちが酔っぱらって、デカいテーブルの上でエルフのアリシアを裸にして乱暴している。


 アリシアは首にロープをまかれていた。

 顔に生気が無い。

 どうやらすでに死んでいるようだ。

 片目の男が奥の椅子に座って、酒を飲みながら金貨を指ではじいている。


「人間どもがアリシアの死体を弄んでやがる」

 激怒したゴグが下に降りようとするがギイに止められた。

「俺が先に暴れるから、あんたは親玉を狙え」

「死ぬのは怖くないのか」

「旦那が言ってたじゃないか。誰しもいつかは必ず死ぬって」とギイはニヤリと笑う。


 そう言うと、ギイは外套を脱ぎ捨て、蛮刀を振り上げて二階から飛び降りた。

 真下にいた奴を頭頂から下腹部まで真っ二つにする。

 そいつの体は左右に切断されて、血と内臓を噴き出しながら床に崩れた。

 人間たちは仰天したのか、しばし動かない。


 ギイは返り血を浴びながら大声で叫んだ。

「覚悟しろ、人間ども! 賞金首のギイだ! お前らがもたもたしてやがるから、こっちから来てやったぜ!」

 周りの人間たちは恐慌をきたして、逃げ惑う。


「片っ端から皆殺しだ!」

 巨体のギイは咆哮をあげ、悲鳴をあげて逃げ回る人間たちを二本の蛮刀で次々とぶった斬った。

 切断された人間たちの首や腕が宙に飛んで、血が噴出する。

「死ね! お前も死ね! お前ら全員死んでしまえ!」

 全身に返り血を浴びて、ギイは二本の蛮刀を振り回し人間たちを殺しまくる。

 

 ギイが大暴れしているすきにゴグは回廊の端の階段を降りて、奥に進む。

 狙い片目の奴だ。

 そいつはギイの大暴れを見て、悲鳴をあげて、だらしなく部屋から逃げた。


 ゴグが追うと片目野郎は廊下で転んで、

「お願いだから、殺さないでくれ」と泣きながら命乞いをする。

 こんな情けない奴にゴブリンたちは殺されたのか。

 ゴグは剣を一閃して、そいつの首を斬り飛ばす。


 ゴグが部屋に戻ると、外から窓をぶち破って、例の新兵器の銃口をギイに向けている。

 ゴグはギイを狙っている奴の首めがけて、左腕でナイフを投げる。

 ナイフは首に刺さって、そいつは引き鉄を引いたまま倒れ、銃口が上に向いた。

 銃弾が発射され、天井に大量の穴が空いた。


「何だ、この武器は」とギイが驚いている。

「それがゴブリン村のゴブリンたちを皆殺しにした武器だよ」とゴグが答える。

 部屋の中の人間たちは、全員死んだか、または逃亡したようだ。

「すまない」と言って、ゴグはアリシアの裸の死体に外套をかけてやった。


 蝋燭でも倒れたのか建物が燃え始めた。

 外の兵隊たちが騒ぎに気付いたようだ。

 指揮官らしき人間の前で整列している。

「この変な武器を使ってみよう」

 ギイは、その兵器の台座を怪力で、逆に向ける。


「突撃!」人間の隊長が叫んだ。

 大勢の兵士が突撃して来る。

 ギイは引き鉄をひいた。

 大量の銃弾が発射され、血しぶきを上げて、たちまち死体の山だ。

「アハハ! これは悪魔が作った武器だ、人間は悪魔だ! 人間はいつか自分たちが作った武器で殺し合いをして滅びるぞ!」ギイは笑いながら引き鉄を引き続けた。


 悲鳴を上げて倒れる兵士たち。

 ギイは容赦なく撃ちまくる。

 焦った指揮官は突撃命令を繰り返した。

 兵士たちは、突撃しては、銃弾を受けて倒れ、あるいは逃げ惑う。

 建物が燃える火を背に、血煙の中、ギイが銃弾を発射し続ける。


 ギイの背後に回り込んだ兵士が銃を発射した。

「ウッ!」

 背中に当たり、ギイは床に倒れ込む。

 ゴグはギイを撃った兵士に剣を振って、斬り倒す。

「しっかりしろ! ギイ!」とゴグはギイを抱き起すが、血が大量に流れ出ていた。


「俺をここに置いて逃げろ、ゴグ」とギイが力なく言った。

「ギイ、逃げるぞ」

 ゴグは片腕でギイを立ち上がらせた。

「すまねえな、また借りが出来てしまった」

「そんな事気にするな、ギイ!」

 ゴグはよろめくギイを叱咤しながら、何とか建物の外に出る。


 しかし、ギイは倒れこみそうになった。

 ギイの巨体をゴグは支えきれない。

 建物の外壁にギイの体をもたせかける。

「……俺はもうダメだ、もうここに放っておけ」

「ギイ、しっかりしろ」とゴグは励ますが、

「あんたの剣さばきを盗めなかったのが心残りだよ……」

 そう言って、ギイは血走った目を見開いたまま動かなくなった。


「ギイ、すまん……」

 ゴグは片腕でギイの目を閉じてやった。

「いたぞ、モンスターだ!」と兵士たちが殺到してくる。

 ギイの亡骸を残して、ゴグは近くの森の中へ逃走する。

 逃走の果てに何が待っているのか、ゴグにもわからない。

 ゴグはその時まで、ただ生き続けるだけだ。


(終)

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