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第四話:ゴブリン村全滅

「ちょっと待て、アンナの仇とはなんのことだ」

「お前がアンナを殺したんだろ、あんないい娘さんを殺すなんて許せん」血走った眼でゴグをにらむ背の高い男。

 どういうことだ。


 突進してくる男をゴグは簡単に避けて、剣の柄で背中を突く。

 男は倒れ込んだ。

 その隙に腕を踏みつけ、剣を奪い取る。


「殺せ!」と男が叫ぶ。

「おい! さっき、俺がアンナを殺したようなことを言ったな、俺はそんなことはしてないぞ」

「嘘つけ!」と男がにらみつける。

 どうやら、俺とギイがアンナを殺したことになっているようだ。

 あの片目の奴が俺たちに濡れ衣をきせやがったのか。


「この醜いゴブリンめ、お前らの村に討伐隊が行ったぞ」

「何だと、どれくらいの部隊だ」

「千人近い人数だ。お前らゴブリンは皆殺しだ」とそいつが笑う。

 ゴグは背の高い奴をぶん殴って気絶させた。

 こんな連中にかまっている暇など無い。

 ゴグはゴブリン村へと急いだ。


 森の中を走る。

 途中で、ふらふらと血だらけで歩いているゴブリンを見つけた。

 闇交換屋のザギだ。

「おい、大丈夫か」と倒れそうなザギに近づいてゴグは支える。


「何が起きたんだ」

「突然、人間の軍隊が襲ってきたんだ。奴ら銃で俺たちを殺しまくった」とザギは息も絶え絶えに言った。

「銃だと。あんな一回使ったら、ごちゃごちゃ操作しないと再び使えない武器でやられたのか」

「違う、もの凄い勢いで銃弾が発射されるんだ」

 どんな武器かゴグには想像できなかった。


「それから、あんたとコボルトのギイは賞金首になっているぞ」

 さっきの初心者冒険者の男が言った通り、ゴグとギイはアンナ殺しの濡れ衣をきせられているようだ。

「俺はもうこの森から逃げるよ」とザギが言った。

「エルフの連中がそっちへ行ったんだが、どうなったか知らないか」

「わからん。同様に殺されたんじゃないか。あんたも逃げた方がいいぞ」

 そう言って、ザギはよろよろと逃げて行った。

 しかし、エルフのアリシアたちが心配になったゴグはゴブリン村に向かって再び走る。


 ゴグがゴブリン村に到着すると、信じられない光景がそこにはあった。

 ゴブリン村の作物は、全部焼き払われ、村の中央にゴブリンの首が積みあげられている。

「正気の沙汰とは思えん」とゴグは呟いた。

 一番上にはゴブリンではなく、エルフの男の首が二つあった。

 しかし、アリシアのは見つからない。

 人間たちに連れ去られたのか。

 ゴグはアリシアを救出することを決心した。


 夕方まで待って、森から広い草原に出る。

 人間の軍隊は何処にいるのか。

 どう探すか迷っていると、外套を着た人間の男が一人馬に乗って、こっちへやって来た。

 地べたにうずくまって、近づくのを待つ。


 ゴグは片腕だけで、人間に襲いかかり、外套を引っ張って馬から引きずり下ろした。

 男は落馬し、馬はそいつを残して走り去って行く。

 その男をよく見ると、アンナの恋人と紹介された奴だった。


「おい、お前がアンナを殺したのか」と剣を突きつけると、そいつは怯えながら、

「ち、違うよ! ゴブリンのゴグを捕まえるとしか聞いてなかった。そのため、アンナをうまく引っ掛けて騙して、あんたを誘い出すように頼まれたんだ」

「誰に頼まれたんだ」

「軍人だよ。片目の奴だ。アンナ殺しの口封じのため、俺も殺されそうになって逃げてきたんだよ」

 あの片目野郎、やっぱり俺に復讐するために仕組んだんだな。


「奴は今、何処にいる」

「ここから北に歩いて、すぐの村に駐屯してる」

「エルフの女を見なかったか」

「村の広場にある建物に連れて行かれるのを見たよ」

 ゴグは男の尻を蹴とばした。

「どっかへ行っちまえ!」

 男は悲鳴をあげて、走って逃げて行った。

 

 何とかアリシアを助けなくてはいけないとゴグは思った。

 それに、たとえ千人いようがあの片目の奴だけは絶対に殺してやる。

 男から奪った外套を着て、ゴグは村へ向かった、


 村の近くまでゴグは近づいて、辺りの様子を見る。

 軍隊のテントが村の入口近くに沢山設置してあった。

 もう夜中なんで、兵隊たちは寝ているかと思ったが、村の広場の端っこにある二階建ての建物から、大騒ぎしている音が聞こえてくる。

 あの建物にアリシアがいるかもしれない。


 用心深く近づこうとすると、後ろに気配を感じた。

 振り向くと、外套を頭から着たデカい奴がいる。

 思わず、ゴグは左腕で剣を抜いた。


 すると、そいつは外套のフードを取りながら言った。

「俺だよ、旦那」

「お前は、ギイ!」

 コボルトのギイが立っていた。


「逃げたんじゃないのか」

「俺の首にも賞金かけられてるんだろ。じゃあ、こっちから挨拶に行ってやろうと思ってな」

「賞金かけられたって、誰から聞いた」

「ゴブリンのザギって奴だ。血だらけで森の中を散歩してたぞ」

「ここがよくわかったな」

「俺は鼻が利くんでね」


「村の広場に二階建ての建物がある。そこに俺を助けてくれたエルフのアリシアがいると思う。何とか助け出そう」とゴグが言うと、

「旦那は変わったゴブリンだな」とギイが笑った。

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