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少女の話2

私は明日この制服を脱ぐ。


「この制服は貴女方を守る鎧です。」

制服に袖を通した日、真っ先に言われた言葉だった。

「貴女方が何者であるかを周りに伝え、また、この制服を着ている間は未熟な者として扱われ、多少の失敗は許されます。」

そして制服を脱ぐときに掛けられる言葉も既に知っている。


この青色のワンピースは先生の言う通り鎧だった。

明日から私は後ろ楯もなにもない裸でこの世界へ放り出されてしまう。



とりわけ特技も特徴もない私は制服が示す私の身分だけで成り立っていた。

私を表す言葉は皆揃って「あの青い制服の学生」だった。

制服を着ている間は私に笑い掛けてくれた。



私には好きな人がいた。

「制服が似合うね」とよく笑ってくれた。

お互いにお互いを想い合っていた。

…と思っていたのだった。


とりわけ特技も特徴もない私に考え付く未来はその人と共に生きる未来だけだったが、

彼にはその選択肢は初めからなかったようだ。

「僕は制服の君が好きだよ」

それは、それ以上の意味でもそれ以下の意味でもなく、

正しく言葉を補えば、「制服を脱いだ私は好きではない」なのであった。


足らない頭で思い描いた未来は絵空事で、

やはり私の価値は制服のみにあり、鎧を奪えば結局なにも残らなかった。



「貴女方はこれで鎧を脱ぐこととなります。これからは貴女方自身が武器となり生きていかなければいけません。」

明日私が掛けられる言葉はこれだ。

だけど、私にはなにも武器がないので、明日は命日と同じだ。

今まで許されていた“なにもない”という罪で処刑されることになるだろう。


そのことを忘れるように中庭でお茶を飲んでいた。

級友達は過ぎた日々を懐かしみ笑い合っていたが、

私には最後の晩餐でしかなかった。


大人になんてなりたくない。


そう呟き終わる前に視界から色が消えた。


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