機械少女の話
私はアンドロイドである。
機械仕掛けの人形で、ある目的のために作られ生かされている。
街はジャリジャリとしたガラスの破片で覆われている。
大人になれず砕けたという少女達の残骸である。
砕ける前に少女を救うのが私の役目であるようだ。
少女がなぜ砕けるのかというと、
彼女らの時を止め、ガラスに閉じ込めて行く悪い魔女がいるからである。
少女がお茶会を開くと現れ、そして例の魔法を掛け去っていくのだ。
魔女は自らを【ダイヤモンドリリー】と称していた。
ダイヤモンドリリーの魔法を受けガラスとなった少女は、ガラスそのものと同じく脆く、時が経てば砕けていくのである。
ガラスの少女を見つけ私はこう呟く。
Cronos othiiste to rolooi
私は魔女ではないのでこれは呪文ではない。
ただの起動コードである。
私の父が定めたこの起動コードによって私の機能が解放され、私の腕は螺となる。
少女の止まった時計を巻く螺であり、螺を巻かれた少女は再び時を刻み出す。
少女の時が動き始めると副作用なのか少女の纏う衣服が白いドレスへと変化する。
それはまるで呪いを掛けたものの名前を表すようにダイヤモンド製の百合に見えるのである。
このようにガラスからダイヤモンドを生み出していくさまを人は魔法のように感じるらしく、
かつて流行ったお伽噺に準え私を魔法少女と呼ぶ者もいるらしい。
ただ、私はただの機械であり、「魔法」のほかには私の生活も、存在意義も特になく、大人になって魔法を失うこともないのである。