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第5話 聖女、会社見学をする

「す、凄い、魔法陣が浮かびました」


 魔王城は街ひとつの大きさがあるというだけあり、かなりの広さだった。勝手口より入ったあの場所は居住スペースらしい。尚、地下には奴隷や隷属契約をした下級魔物が生活するスペースがあり、スケルトンのブラックはそこで生活しているそうだ。


 途中手を触れる事で魔法陣が浮かび開く扉は認証制らしく、上級魔族か、先刻私が交わした魔王との契約をした者、隷属契約をされた者のみが通過出来るらしい。大魔王エクストリーム社へ続く扉の前で私が手を翳すと、魔王のグロリアがやった時と同じように魔法陣が浮かんだため、思わず声をあげた私である。


「さっきの契約で私の魔力(・・・・)がルーシアの身体にちゃんと流れている証拠ね。すぐ身体に馴染んでくるから安心しなさいね」

「え? 魔力をいただいちゃっていいんですか? ありがとうございます!」


 思わずペコリとお辞儀をする私。グロリアは一瞬目を細めたように見えたがすぐに笑顔を私に返した。


「いいえ、どういたしまして。(……魔王の魔力を人間に流し込むって、どういう事か、この子……分かってるのかしら?)さ、この扉の先が、大魔王エクストリーム社よ。眷属の契約をしたんだから、その内あんたにも働いてもらうからね、ルーシア!」

「わ、分かりました! 頑張ります!」



 勇者様に拾われる前は教会で身の回りのお世話や、子供達に勉強を教えたり、本を読んで社会勉強もしていた。会社で働くのは初めてだったが、なんとなく私は自信があった。この会社の実情を見るまでは……。



 グロリアに促され、従業員入口より会社へと入る。今日は会社見学だ。〝商談〟という大魔王様やグロリアの眷属に入っていない魔族と交渉をするスペースを通過し、裏手より会社正面へと回る。会社の正面にはフカフカの絨毯が敷かれ、二人の悪魔受付嬢が私達を出迎え、恭しく一礼した。


「「お帰りなさいませ、グロリア様」」

「ただいまー。新人の子連れて来たから、会社案内するわね」

「「行ってらっしゃいませ!」」


 受付嬢は、まるで双子のように息がぴったりだ。階段を上がり、二階へ。営業部があるらしいが、営業部はエリートの悪魔が多いらしく、外に出ているらしい。


 営業部は人間界への潜入調査、営業活動、強襲、狩猟、外で色々やってるらしい。私の村を襲った魔物がこの会社出身の者でない事を祈りたい。


「それは知能のない魔物(モンスター)の集団じゃないかしら? 最近は人間の国も賢いから、上級魔族も何も考えずに戦争なんか仕掛けないわよ?」

「え、そうなんですか?」


 確かにどちらかと言えば、魔物同士の争いや、人間の国同士の戦争にドラゴンや魔獣が召喚されると言ったケースの方が多い気がする……。


「先代のパパが支配していた頃とは違うからね。魔物達も生きるために苦労しているのよ?」

「そうだったんですね」


 魔族の国事情をグロリアから聞きつつ、生活供給部というよく分からない部署へやって来た。


「此処よ。私は此処の部長をしているの。社員の生活を維持するための魔王城の施設建設や物品の支給。魔族の国の生活を安定させるために会社で貢献出来る事をやってるわ」

「おぉ、何か凄いですね!」



 会社の管理は管理部がやる事が多いが、なんとなく規模が大きい印象だ。ワクワクして扉を開けると……禍々しいオーラを沸々と湧き上がらせ、眼窩にクマが出来た大勢のゴブリン達が緑色の縁をしたモニタへ向かって何かをやっていた。


「え……?」

「こいつらは話しかけても何も返事しないわよ。次行くわよ」



 グロリアと私が入って来た事すら気づかないのだろう。そのままゴブリン部屋をスルーして奥の部屋へと向かう私達。続いて人間の国に例えると、巨大工場のような場所へ出る。二階から一階部分が吹き抜けとなっており、上から下を見下ろせるようになっている。見上げる程の巨大なタンクのような物が大量にあり、そのタンクを周回するように、何か小さな棒をスケルトンが押して回している。



「あ、あの……これは何をやっているのですか?」

「これは魔力炉(・・・)ね。魔王城に溢れる魔力の素となる魔素と、奴隷のエルフ達から毎日抽出した魔力がこの魔力炉へ入って来るの。スケルトンがあの動力棒を回す事で混ざり合って、安定するって仕組みね。これを魔族の国全体に送る事で、電気や生活に必要な物を提供しているって訳よ」


 この世界には空気中に、魔法の素となる魔素という成分が存在する。体内に持つ魔力と練り上げる事で魔法が発動する。それを手動で練り上げ、安定させた状態で魔力を国全体へ送る。確かに素晴らしい設備……のように見えるが……。


「キェエエエエエエエ!」

「コラッ! ヤスムナ! ナニヲヤッテル!」


 スケルトンの一人が発狂を始め、転げ始める。部屋を巡回していたスケルトンのリーダーらしき者が鞭で叩く!


「ひ、酷い! 休ませてあげたらいいのに……」

「こんなの日常茶飯事よ? 深夜勤務のスケルトンが来る迄あと五時間(・・・)は働いてもらわないと」


 グロリアがそんな事を言っている。スケルトンの表情は読めないが、心なしか皆疲れた表情をしているように見えた。


「え? この子達、いつから働いてるんですか?」

「朝の九時からよ? 今は十八時ね。みんな魔王の私が来てあげたわよ! あと五時間頑張りなさーーい」


 その言葉を聞いた瞬間、先程のスケルトンが暴れ始めた。リーダーのスケルトンを振り切り、入口へ向かって駆け出す。他の鞭を持ったスケルトンが入口を塞いでいる。このままだとあの子はまた痛い目に合ってしまうだろう。そう思った私は手摺を掴み、二階から飛び降りた!


「ちょっとルーシア! 何やってるの!」


 地面へ着地する直前に足元へ魔力を溜め、クッション代わりにする。戦闘ではよくやる行為だ。そのまま私へ突撃するスケルトン。幸い彼は今、武器は持っていない。


 私はそのままサキュバス風の格好で両手を広げ、スケルトンを果実のクッションで受け止める。まるで低反発枕のように突撃の衝撃を吸収し、スケルトンの頭蓋骨はむにゅんっ! と、私の果実(メロン)へ収まった。


「今までよく頑張ったわね。もう休んでいいのよ?」

「キ……キエ……キュン……」


「ば、馬鹿な。発狂したスケルトンを即興で鎮めるだなんて!」


 二階からグロリアが驚声をあげている。スケルトンは私の柔らかい果実の中で笑みを浮かべたまま眠りにつくのであった。昇天する前にそっと床へ寝かせてあげる。


「ナ、ナンダキサマハーーーー!」


 仕事をしていた周囲のスケルトン達がざわつき、鞭を持ったスケルトンリーダーに取り囲まれてしまう私。さて、この状況……どうしたものか……。


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