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第4話 聖女、淫魔のコスプレをする

「それにしても……ルーシアだっけ? あんたのその格好……目立つわね」


 闇堕ち温泉を出た魔王(びしょうじょ)グロリアと(スケルトン)ブラック、そして聖女(わたし)。長い回廊を歩きつつ呟いたグロリア。私が身につけた聖女のローブをまじまじと凝視する。


「ほへーー。確かにその愛が溢れるメロンの果実は目立ちま……」

「あんたは黙ってなさい」


 骸骨(ブラック)の頭蓋骨に立派なたんこぶが出来ていた。


「私は普段ずっとこの格好ですから、人目は気にしないのですが……」


 私は立ち止まり自身の胸をじっと見つめる。プリンのように波打ち、揺れる果実にグロリアが戦慄する。


「いやいやいやそうじゃなくて! ……って今華麗に上下運動(スルー)したわねそのメロン……。ルーシア! その格好で歩くと、魔族の連中に殺されるわよ?」

「え? でもグロリアさんは私を殺さなかったじゃないですか?」


 頭上に疑問符を浮かべ、彼女を見つめる私。


「いやむしろ、私も最初あんたを殺そうとしたでしょ?」

「あ、殺せなかっただけ……(察し)」


「今すぐ燃やしてあげましょうか? 聖女さん?」

「いえ、ここは話を進めて下さい」


 魔王城での戦闘行為はなんとなく危険そうな香りがしたため、話を進めるよう促す私。


「別に今更あんたを殺すつもりはないから心配しないでいいわよ。ただし、此処魔王城は魔の巣窟よ? 上級魔物(モンスター)や魔族だってうじゃうじゃ居るの。その格好じゃあ、人間の聖女です、殺して下さいと言っているようなものね」

「まぁ、それはそうですね……」


 どうしたものかと考える私。


「と、いう訳で、みんながまだ会社で仕事をしている(・・・・・・・)今がチャンスよ? 私の部屋で着替えるといいわ」

「え? グロリアさんの部屋ですか?」


 そんな簡単に魔王様の部屋へ行っていいのだろうか? 


「さぁ、そうと決まれば急ぐわよ!」

「え? ええええええ?」


 なぜかオッドアイを輝かせた魔王に手を引っ張られ、私は回廊の奥にあった螺旋階段を上っていく。階段を上る途中でグロリアが一度立ち止まり、私の後ろにぴったり付いていた骨へこう告げる。


「あなたは仕事をサボってるんだから、そろそろ職場へ戻りましょうね?」

「ほへーーーーグロリア様ーーそんな理不尽なーーーー」





 スケルトンのブラックはこの後階段から転げ落ちるのであった……。





******


「あーー、これもいいわねぇーー。あ、これなんかもいいわ。そうね! これにしましょう!」


 高い天井の広い部屋。しかし、魔王をイメージするような巨大な玉座や禍々しい椅子やテーブルはなく、天蓋のあるベットは桃色を基調としていてむしろ〝一国のお姫様の部屋〟を彷彿とさせる印象だった。


 ふかふかのソファーに腰掛け、部屋の奥にあるウォークインクローゼットから漏れるグロリアの声を聞きながら待機する私。やがて、極端に布地がない水着のような衣装を持ったグロリアがクローゼットから顔を出す。


「ねぇーールーシア、これなんかどう?」

「却下します!」


 こんなやり取りが何度か続き、結局私は背中に黒く可愛らしい悪魔の羽根が生えた、紫色が基調のレオタードのような衣装を着せられた。これでも妥協した方だ。


 メロン級の果実とお尻が強調されてしまい、とても恥ずかしい。脚には網タイツ。髪にはグロリアとお揃いの金色の角が二本。これではまるで……。


「これは……聖女じゃなくて淫魔(サキュバス)ね。サキュバスに堕ちた聖女……はぁ……ダメ、唆るわぁー」


 なぜか右手を頬に当てて紅く染めているグロリア。私も見つめられると恥ずかしくてモジモジしてしまう。これではまさにサキュバスのコスプレだ。


「ルーシア、あんたそれだけ破壊力抜群な身体してるんだから、もっと自信持ちなさいよ! あんたみたいな淫魔(サキュバス)が目の前に現れたら人間も魔族もイチコロよ?」

「いえ……私は聖女ですからそんな事は……元々聖衣が標準装備でしたので、なかなか慣れません」


 足元もスースーするし、どうしたらいいか分からなくなってしまう。


「別にいいのよ? 人間界へ帰りたいなら帰っても(・・・・)?」

「え?」


 突然出たグロリアの提案に驚く私。


「転移魔法くらい高位の魔族なら使えるわよ? 何なら私のお付に頼んでもいいわよ? でもあんた、その様子だと、行くところがないんじゃないの?」

「それは……」


 私は思わず口ごもってしまう……。勇者に捨てられた私。魔王を討伐するために旅をしていた勇者イザナは、自身の強さに陶酔し、魔王なんていつでも討伐出来ると魔物を狩っては街で遊んで(・・・)暮らしているのだ。今眼前に居るグロリアを倒す気持ちが私にはもうない。


「どうする? 私と共に行くというなら歓迎するわよ? 嫌なら別に殺しはしないわ。此処に二度と戻って来れないよう、どこか遠くに転送してあげる」


 私は考える。魔王と共に行く……。それは今まで助けた人達に対する裏切り行為になるのではないか? でも、私は裏切られた存在。信頼していた勇者に……仲間に捨てられた。脳裏に勇者イザナや悪女キャシーの嗤う顔が浮かぶ。私は覚悟を決める。


「私は困っている人を裏切る事は出来ません。苦しんでいる者が居たなら人でも魔族でも助けます。それでいいなら……グロリアさん、貴女と共に行きます」


 私は顔をあげて、彼女へそう告げた。


「あはははは、貴女らしいわね。貴女を裏切った人間をまだ信じる心があるというのね。いいわ、貴女の思う通りにやればいい。隷属契約だと自由を奪ってしまうから、私の眷属として迎え入れてあげるわ」


 そう言うと、魔王は私のお腹に手を当てる。私のお腹に魔力の刻印(タトゥー)のような物が浮かぶ。お腹から何か湧き上がる魔力が身体全体へ送られていくように感じた。


「こ、これは……?」

「心配しなくていいわ。これは魔王との絆の証。貴女をサキュバスにするつもりもないし、本物の悪魔へ変えるつもりもないわ。むしろその魔印がある事で、城に居る魔物達も貴女を迎え入れてくれるわよ?」


 魔王城……此処が今から生活する場所になるのね……。私は覚悟を決め、顔をあげるのだった。


「分かりました。グロリアさん。これからよろしくお願いします」

「これで貴女は私の眷属となったわ。今日から貴女はルーシア・サタナキア・プロミネンスよ!」


 グロリアと私は握手を交わす。

 こうして私は魔族の国の仲間入りを果たす事となる――――


ブクマに評価と、応援とても励みになります♪

公開数日でありがたい事に2000PV突破しました。

遂にルーシアとグロリアが契約しちゃいましたね。

この契約がどう今後に絡んでいくのか……見守っていただけると幸いです。

ルーシアさんは、サキュバスじゃなくて聖女ですからね。

|ω・)チラッ


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