第30話 聖女、冒険者達を蹂躙する
「えぇえええええ!? じゃあタロウ達が獣人族の村を燃やした冒険者達を捕まえちゃったって事?」
翌朝、スケルトン達が待つ魔力炉にて全体朝礼を終えた私は上司である女魔王――グロリアと侍女であるメーティと共に第ニ営業部の部長室へと訪れていた。部長室へ入ると、部長であるヴァプラと、デスジャッカルのタロウ、シルバーウルフのポチが出迎えてくれた。
そして、昨晩獣人族の村を冒険者達が襲撃に来た事、襲撃して来た冒険者達をタロウ率いるジャッカル部隊と、蜥蜴人のリザちゃん率いる村の警備部隊が返り討ちにした事、冒険者達は拘束され、第二営業部が管理する牢獄へと投獄しているという事実を聞かされたのだ。
「村を襲った不届き者は、小生が責任持って成敗した、わん!」
モフモフした尻尾をフリフリしつつ、使命を全うしたタロウが胸を張る。
「まぁ、そういうこった。此処で敵さん自ら尻尾を出して来た事は大きいな。本当なら人間共を肉片へと化す処だったんだが、背後に潜む野郎を殺る必要があるからな。タロウ達には殺さずに捕えろっつー命令をしたという訳だ」
ヴァプラ部長がそう告げるとポチがタロウの隣で悔しそうな表情を見せていた。
「くっそーー。おいらも活躍したかったずらーー! 悔しいずらーー!」
「たまたま昨日の夜勤が我だったというだけわん。ポチ殿はいつも充分に仕事を熟している……わん」
モフモフに慰められるモフモフ。微笑ましい光景だ。
「で、ヴァプラ。その人間共はどうするの? そいつら吊るし上げても背後に潜む魔族が出て来る保証はないんでしょ?」
「嗚呼、その事なんだがな……」
ヴァプラがグロリアの傍へ近寄り何やら耳打ちをしている。何を話しているんだろう? 私がそう思っていると、彼女は何故か私の顔を見てほくそ笑む。
「成程。それは面白い考えね、ヴァプラ」
「そうだろう、グロリア」
(何やら二人してこっちを見ているんですけど……)
「あ、あの……私に何か御用でしょうか……?」
獣人王と女魔王が何かを企んでいる様子に、私は嫌な予感がして苦笑するのである……。
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「ねぇ、グロリア、ヴァプラ部長……本当にやるんですか……?」
「あんたしか出来ない事でしょ? 私達が恐怖で支配するよりもよっぽど効果的じゃない!」
「いいじゃねーか。お前のサキュバスらしいところ見せてみろ!」
牢獄の中には手枷と足枷を付けられ、目隠しをされたまま磔柱に縛られた冒険者達が並んでいた。昨晩の戦闘によるものか、はたまたヴァプラの部下からの尋問によるものか、ところどころ衣服が破れ、傷痕が見える。
「くそっ、俺等はただ依頼で此処に来ただけだ! 早く此処から出してくれ!」
「えぐっ、えぐっ、やっぱりあの獣人族の村は魔物の手に落ちていたんだわ……私達もこのままじゃ……」
「あっしらは何も悪くない! 冤罪だ!」
「最早私に生きている価値などない……殺せ……」
それぞれ言いたい放題だ。一人、騎士風の男だけが顔面蒼白にも関わらず何故か悟りを開いたような表情をしている気もするけど。
「あいつら……まだ威勢がいいじゃねーか……」
私の横でヴァプラ部長が苛立ちを隠せない表情をしている。心なしか妖気が滲み出ている気が……。部長が本気を出せば、そこに投獄された冒険者達はあっという間に肉片と化してしまう。そうしないのは黒幕を炙り出すという目的があるから。ここは私が動かねば……部長の堪忍袋の緒が切れる前に……。
「はぁーい、冒険者達ぃーー? そろそろあなた達のやって来た事を告白する気になったかしらーー?」
私はいつものサキュバスルックな格好で牢獄の中へ入る。突然聞こえた女の声にざわつく冒険者達。目隠しをされた状態で、リーダーらしき軽鎧の男が口を開く。
「なっ、女か。おい、あんた。ここから出してくれよ! そしたら獣人族の村が魔物と繋がってる事実を隠してやってもいいぜ!」
「あら、どちらの立場が上か、わかっていないようね!」
先程ヴァプラ部長に渡された魔獣の革で出来た鞭を振るう。鞭の撓る音が牢獄へと響き、魔導師男の生唾を飲む音が聞こえた。あ、これ魔獣を手懐ける際に魔族が使う鞭らしいです。決して私の趣味ではありませんからね?
「あっしらを……どうするつもりなんでぃ!」
「あらー、あなた少しは理解があるようねぇーー。私は今から……あ・な・た・た・ち・を、蹂躙させるのよ?」
こんな事を言って私、もうお嫁にいけないです……ぐすん。心中は羞恥で真っ赤に染まる私は平静を装い、あくまで扇情的に魔導師男の耳元で囁く。
「グルコスミン、耳を貸すな! 相手は魔族だ。魂奪われるぞ!」
「そうよ、そんな下衆女に屈しちゃだめ!」
リーダーの男と町娘風の女が魔導師(グルコスミンって凄い名前ね)へ向かって叫ぶ。でももう遅い。私が此処でやらねばヴァプラ部長が黙ってないのだ。この冒険者達は犯罪者で、罪を償うべきだが、此処で命を落とすべきではない。
「魂を奪われるか? 本当に私が下衆女かどうか、身を持って体験するといいわ!」
私は両手を広げ、全身より光を放つ! しかし、今回私が放つ神秘の光はいつもの神秘的な光ではなく、桃色の妖しい妖気を醸し出していた。




