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第23話 聖女、はやくカエルの日を実践する

 私が社員食堂へスケルトン達を誘導しているちょうどその頃、私の上司である女魔王とポチ達の上司にあたる獣人王が話をしていた。


「兵隊なんてモンは居なくなりゃあまた創ればいい。魔物なんて、だいたいそういう考えを持つモンだろ?」


 第ニ営業部の部長室にドカっと座り、獅子頭の男が腕を組んで話をしている。


「ええ、そうね。でもルーシアは違ったわ。あの子は魔族でも人間でも、皆平等に助けたいらしいわよ?」


 対するは美しい紅色と蒼色のオッドアイで獣人王を見据える若き美少女魔王。部下の突拍子もない考えを述べると、私の考えを鼻で嗤う獣人王。


「はぁ? 人間だぁ? あいつらこそ獣人族の村を滅ぼそうとした張本人だろーがよ。先日襲われた村の痕を訪れたが、人間の血の匂いが未だに残っていたぜ」


 ヴァプラはどうやら人間が獣人族を襲った事に確信を持っているらしい。


「まぁ、エルフや獣人族を闇市で密売するような連中だからね。パパも昔はエルフを奴隷にしてコレクションしていたからあまり人の事は言えないけど」

「やってる事は魔族だろうが人間だろうが変わんねーってこった。先代魔王様の不可侵条約がなけりゃー、速攻人間の街でも襲って犯人炙り出すんだがな。俺の縄張りを荒らした罪は重いぜ」


 ヴァプラにとっては人間の街一つ一握りなのであろう。グロリアがそんな四天王の様子を見て嘆息を漏らす。


「すぐ頭に血が上るのは昔からね。まぁ、そんなあんたの縄張りをうちのルーシアが守ったんだから、文句は言わないわよね?」

「フッ、従業員(・・・)が増えたのは予想外だったがな。まさか俺様のジャッカル部隊と獣人達が一緒に狩猟をする時代が来るとはな。時代は変わるものだな」


 そう言いつつもヴァプラは満足そうな表情をしている。


「それにしても獲って来たのが野生の猪肉と熊肉、蛙肉に蛇肉って……もうちょっとポピュラーなものはなかったわけ? 私達が食べてる魔皇牛肉(ジェネラビーフ)とか」

「おいおい、いきなり魔王城に出現した社員食堂の食料確保しただけでもありがたいと思え! お前等スケルトン分確保するの大変だったんだぞ!」


 因みに魔皇牛肉(ジェネラビーフ)とは、魔素の濃いサタナフィールドで育った肉牛だ。身の締まった霜降り肉は、焼くと肉汁が溢れ、口の中で蕩ける最高級肉である。あれだけスケルトンへ食料を提供する事を全否定していた獣人王も、獣人族に人材と畜産や農耕技術を提供してもらうという条件で動いてくれたようだ。


「まぁいいわ。予算通さないといけないからこっちも準備で忙しいのよ。猫耳娘達や兎人族も可愛いし、この先が楽しみね」

「俺様は当面いつもの宮廷料理でいいぜ」


 興味なさそうな仕草で背を向けるヴァプラ。その様子を見てグロリアも席を立つ。


「会議の時は予算通すの協力してよね? あいつら(・・・・)言い負かすの一人じゃ面倒だから、ねっ」

「はいはい、そう来ると思ったぜ。うちの部下も気に入ってるみてーだし。今回はおめーの部下にも借りが出来たからな。協力してやる」

「ありがとう、ヴァプラ」


 軽く右目の紅色の瞳(ルビーアイ)をウインクし、マントを翻すグロリア。部屋を出ようとするグロリアを呼び止めるヴァプラ。


「おい?」

「ん?」


「あんまり目立つんじゃねーぞ?」

「……わかってるわよ」





******


 至福のランチタイムを終え、すっかりやる気に満ち満ちたスケルトン達。いつもより魔力の蓄積度合いも良好なようだ。刻々と時間は過ぎ、あっという間に運命の定時を迎える。


 夕刻、運命の終業ベルが館内に鳴り響く。以前はグロリアが、肉塊を天井から落とすだけの簡単なお仕事をする合図だった。しかし、今日は違う。〝はやくカエルの日〟は形式上の制度ではない。実行するべく創った制度なのである。今回スケルトン達で実践(トライアル)結果を実証し、ゆくゆくは他部署へも発信していくつもりだ。


「オマエラカエッテイイゾ」

「ヨカハジユウニスゴセ」

「ショクドウモツカッテイイゾ」

「オツカレサン」


 動力棒を廻していたスケルトン達が一斉に首を傾げる。夜勤のメンバーが来るまではまだ四時間以上ある。この交代までの時間が絶対的な残業時間だった訳だが、この引き継ぎ期間働く者が居ないため、誰かが負担しなければいけない状況にあったのだ。


 作業効率をあげた事で魔力蓄積が少し溜まっているが、魔族の国(サタナフィールド)全体へ二十四時間供給するためには数時間休む事さえままならないのである。


「ほへーー。ルーシア様ーーどうするほへーー」

「あれ? ブラック説明してなかったっけ?」

「時間になったら代わりの者が来るとしか聞いてないほへーー」


 (あ、そっか。各所に説明するのが大変だったため、ブラックへは簡単にしか説明してなかったんだっけ?)


 私がそう考えていると、魔力炉へ入室する扉が開いた。


「ルーシア様ーー連れて来たずらよーーーー」

「ルーシア様、獣人族選りすぐりの若者を連れて参りました!」


 狼男のポチがモフモフした尻尾を振り振りしつつ獣人族達を先導する。求人広告で集まって来た若者達のリーダー役は先日族長代行を務めた犬耳族のププだ。犬耳族、コボルト、狼人族、次から次へと入って来る獣人族達の登場に困惑した表情(のように見える)骨達。


「ほへーーほへほへーーーー。モフモフ大集合ほへーー!」


 なぜかブラックは私ルーシアの傍へ尻尾を振り振りしつつ駆け寄る犬耳族達に押し潰され、モフモフへと埋もれていくのであった。



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