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第18話 聖女、バニーガールになる♡

 私が獣人族の村にて普段の私からは想像出来ない高嗤いを披露している最中、部屋のローテーブルへ占いで使うような水晶玉を置き、水晶玉に映る映像を見つめている女性の姿があった。


「フフフ、あらあらルーシア、そろそろ私の魔力が身体へ馴染んで(・・・・)来た頃かしらね」


 そう、水晶玉へ映っていた者は私、そして、その姿を眺めている女性は、誰であろう女魔王である美少女グロリアであった。

 

「グロリア様も人が悪い。あの魔印がどういう効果を齎すのか、教えてあげてもいいものを」

「あら、居たの。だって、教えて怖気づいたら意味ないし、魔印の力を扱えるかどうかはあの子次第でしょ?」


 ソファーに座るグロリアの背後には、灰色(アッシュグレー)の猫耳と尻尾を携えたネイビーが基調のメイド服を着た女性が立っている。


「まぁ、そうですね。今回は助けにいかなくてよろしいのですか?」

「心配要らないでしょ? あの子面白い力持ってるみたいだし」


 メイドが淹れた紅茶を水晶玉の横へ置くと、グロリアはカップを手に取りひと口、口へ含む。


「本日はルビーローズティーです。最近お疲れのようでした故、魔力回復に、リラックス効果を含んでおります」

「ありがとう。まぁ、何にせよ、あの子がどう動くのか、ちょっと楽しみだわ」


 新たな趣味を見つけた子供のようにグロリアの瞳はキラキラしている。


「ワタクシとしては魔王様には早く魔力コントロールの訓練へ興味を持って欲しいんですが」

「ええーー。それ今言うーー? 私は膨大な魔力と資質を持っているんだから、心配要らないわよ」


 自身有り気な女魔王の様子を見、溜息を吐く女メイド。


「膨大な魔力と資質が備わっている事は認めますが、ワタクシの見立てでは、その3%も使いこなさせていないですよ、グロリア様」

「言うわねメーティ(・・・・)


 淡々と事実を述べるメイドを一瞬睨みつけるが、互いの顔を凝視した後、グロリアが折れる。


「分かっていただけましたか、グロリア様」

「仕事が落ち着いたら頭に入れておくわ。私に意見を述べるなんて、貴女くらいのものよ、メーティ」


 残りの紅茶を飲み、そっとカップを置くグロリア。


「グロリア様、私は幼い頃からお嬢様を見て参りましたから」

「そうね。そうだ。まぁないとは思うけど、あの子がもし暴走(・・)した時はその時はよろしくね、メーティ」


 そういうと、メーティの灰色(アッシュグレー)の双眸が金色へと光る。一瞬彼女を纏う空気が一変する。メイド服の両方の裾を持ち、恭しく一礼した後……。


「グロリア様の障害になる者は私がこの手で消して差し上げましょう」


 そうひと言申し出たメイドはそのまま煙に包まれ……。




 灰色の猫へとそのまま姿を変えたのだった――――





******


「作戦は先程申し上げた通りです。皆さんよろしいですね」


「はい、分かりましたルーシア様」

「嗚呼……ルーシア様ぁああん♡ 本物の兎人族(・・・)みたいですわ♡」

「素敵……惚れる」


 私は今、先程もてなしの間で、私達へ舞を舞っていた兎人族バニー達と一緒に居る。ちなみに私は今、そんな兎人族(バニー)達と同じ格好(・・・・)をしている。


 ――そう、バニースーツを着て居るのだ。


「上級魔族様には擬態能力があると聞きましたが、この耳と尻尾、本物みたいですわね」


 私が着ていたサキュバス風のレオタードは、上級魔族の魔法が籠められている。利用する機会はないと思っていたのだが、事前にグロリアから説明を聞いておいてよかった。そう、自身の魔力と馴染ませる事で、状況に応じて姿形を変える事が出来るのだ。今、私が身につけていた悪魔の尻尾と角は、長い兎耳と丸い兎の尻尾へ。レオタード風の格好は黒いバニースーツとガーターベルト、網タイツへと変化していた。


「ぐはっ……儂は儂は幸せじゃぁあああああ!」

「族長ーーーー族長ーーーー!」


 と、先程族長は私の姿を見た瞬間、鼻から赤い血を大量噴射スプラッシュマウンテンし気を失ってしまったため、入口を護っていた犬耳の青年ププが族長代行を務める事になった。そう、生贄になろうとして私が先刻命を救った青年だ。


 今、隣の集落よりこちらの集落へ勇者イザナ一行が向かっているらしく、勇者パーティが到着次第、私達が使っていた〝もてなしの間〟の隣にある〝いざないの間〟へ誘導する手筈となっている。


「ルーシア様、料理長へ先程の旨は伝えました。村の食材でなんとかなりそうです」

「ありがとうビビビさん」


 こちらは族長のお付をしている猫耳娘のビビビさん。料理を運び、勇者を誘導する指南役は彼女だ。


「でも凄いわぁルーシア様ーー。この短時間でこんな作戦思いつくなんて、上級魔族は違うわぁー♡」


 先程から兎人族(バニー)の一人が下半身をくねらせて頬を赤らめて近づいてくる。この子もお酒を飲んでいたのだろうか? ちなみにこの子達は兎人族の三姉妹らしい。


「こらリリ! ルーシア様の前よ。正気を保ちなさい」

「だってぇララ姉様ーーこんなセクシーな上級魔族様とご一緒出来るなんてぇーー♡ さっきから下半身が疼いて仕方ないんだものーー♡」

「暴走リリ」


 嗚呼……なんだかリリと呼ばれたバニーちゃんから危険な香りがする……。私のメロンへ視線を感じた原因はこの子か。普段ならこんな格好恥ずかしくて絶対出来ないのだが、お酒の勢いもあり、気分が高揚していた私。あの勇者へひと泡吹かせようと考える内、私の中で、今までにない感情が芽生えていた事にこの時の私はまだ気づいていなかった。


「リリちゃんって言うのね。いいわ。貴女のさっきの舞もセクシーだったわよ。その美貌で、私と一緒に勇者を堕としちゃいましょ♡」

「はぅうううん♡ ルーシア様ぁああん♡ ご一緒しますわぁああ♡」


 リリに顔を近づけ私がそう告げると、セクシーな兎人族(バニー)は下半身をビクンビクン痙攣させつつ、私の双丘へとダイブして来た。そのまま頭を撫でてあげる私。


「ルーシア様はこうやって配下を作っているんですね……上級魔族、恐るべし」

「メロン最強説」


 豊かな双丘へ埋もれる次女の姿に、ゴクリと生唾を呑みつつ素直な感想を述べるバニーの姉と妹なのであった。


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