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第15話 聖女、獣人族の村へ赴く

「これはこれはサタナフィールドから……ようこそいらっしゃいました。この村の族長をしておりますジジジです」

「ヴァプラ部長からの命を受け、此処へ来たルーシアよ」


 モフモフした犬耳の老人が数名コテージのような建物で出迎えてくれている。〝基本的骨権(コッケン)の尊重作戦〟を提案したのち、ヴァプラはあろう事か私にその提案(・・・・)を獣人族へ通して来いと告げたのだ。因みに秘書として、隣にはポチも一緒だ。


「いやはや、こんなセクシー……ゴフン! こんなお美しい上級魔族様がわざわざこんな小さな村へ来て下さるとは、村総出でおもてなしさせていただきます」

「まぁ、お気遣いなく。そんな畏まらなくてもいいわよ」


 今日の私は、黒髪には金色の角に加え、紫色のメッシュが入っている。サキュバスのレオタードに高級毛皮を使った魔法防御効果もあるマントを羽織り、上級魔族を装っている。よって口調も上級魔族を装っている訳で。嗚呼……どんどん聖女のイメージから懸け離れてしまっている気がするのは気のせいでしょうか……。


「とんでもございません。今日もエビルジャッカル様に警備をしていただいており、ヴァプラ様には大変感謝しております」

「うむ。獣人族の生活保障は我々の任務ずら。安心するずら」


 私の隣に居たポチがなぜか鼻高々で威張っている。嗚呼、普段威張る事出来ないもんね。よかったね、ポチ。


「夕刻には本日の生贄と献上品もご準備出来ます故、暫くお待ち下さい」

「今日はその生贄と献上品の件で来たのよ」


 相手側から献上品の話が出たので話は早い。いつもは毎週一週間分の献上品を転移魔法で来た使いの者へ渡しているらしい。最近はタロウ達エビルジャッカル部隊がこの辺りに点在する獣人族の村や周囲の森を巡回し、警備をしているため、献上品を毎日受け取って帰っているらしかった。


「ままま、まさか、生贄と献上品にご不満でもございましたか?」

「不満……ではないわね。貴方達も生活が苦しい中アレ(・・)を提供しているんでしょ?」


 なんの肉か分からない肉に不満がない訳ではない。あれではむしろ不満も出る。しかも生贄として獣人族か獣達も生きたまま提供されているとなると、幾ら弱肉強食の世界とは言え、聖女の私としては胸が痛む。


「はい、そうでございます。只今この地域には、獣人族の村が十数ございます。土地は豊富にあります故、穀物や野菜も育てており、食糧の肉も確保はしておりますが、最近幾つかの村が人間達の手によって燃やされてしまったのです。遠く、亜人達の住むエルフの村も焼かれたと聞きます」

「ヴァプラ部長が警備にエビルジャッカルを置いている理由もそれだったわね」


 文明が発達している訳ではないが、獣人族達は想像していた以上に人間社会に近い生活を送っているらしい。心無い人間は私利私欲のために行動する事が多い。獣人族の中でも兎人族や猫耳族は、闇市場で高く売れる(・・・)のだ。美しいエルフ達も然りだ。


「生き残った村の獣達はこうして移住しておりますが、家も失い、作物も失い……意気消沈している者ばかり。幸い穀物と野菜はヴァプラ部長が要らないと仰っているため、生きてはいけますが、備蓄の肉もだんだんと底をついて来ており、今生活も苦しい状況です……」

「それは大変だったわね。ごめんなさいね、貴方達の環境も知らず、生贄を用意してもらって」


 自分達が生きていくので精一杯の者達から更に食物を搾取する事は鬼畜極まりない。まぁ、魔物の国の者に情なんてないと言えばそれまでなんだが。


「ととととんでもございません。こうして上級魔族のルーシア様(の美しい果実)を拝めただけでも私は幸せ故。命を賭して、肉を確保して参ります」


 族長がそう告げた瞬間、コテージの端に控えていた犬耳の青年が突如懐からナイフを取り出し、首元へ当てようとしたものだから、私は素早くその子の下へ走り、青年のナイフを持った腕を掴む。勢い余って青年を押し倒してしまい、私の二つ実った果実に青年の顔が埋もれてしまう!


 むにゅん――――


「おぉおおおお!」

「こ、これが上級魔族様の御力」

「こ、これは……メロン……サキュバスメロンなのか!?」


 今まで発言を控えていた族長の周りにいた者達が声を漏らす。私が彼の顔から聖なるメロンをそっと離すと、可愛らしい顔の青年は顔を真っ赤にし、私を見つめていた。ちょうど私が馬乗りになって身動きが取れない状況だ。私の太腿あたりで何かが蠢いている気がするのは気のせいだろうか?


「貴方が生贄として死ぬ事はないわ。族長、提案があります。家を失った者達を含め、食料確保のため、労働力を雇いたいの。女子供でも構いません。衣食住は保証します。私の下へ来たい者はついて来なさい」

「な、なんとっ!?」


 生贄とは正反対の提案に驚く族長と幹部の獣人達。


「ル、ルーシア様! 一生ついていきます!」


 押し倒された青年は恍惚な表情のまま笑顔で気を失うのであった――――



 こうしてまた一人、獣人族の可愛らしい青年が聖女の手に堕ちるのであった(何!?

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