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第10話 聖女、知らぬ間に噂となる

 『マネ泉に入るとたちまち体力が回復し、日頃の疲れも吹き飛ぶ』


 噂は瞬く間に大魔王エクストリーム社全体へと広まった。

 発狂していたスケルトン達も、目にクマが出来ていたゴブリン達も、心なしか以前より生気に満ちた表情をしている。それにしても、スケルトンの表情が分かるようになって来たという事は、魔王城に慣れて来た証拠だろうか?


「ちょっとルーシア大変! あんたが浄化したマネ泉、大盛況になっているわよ!」


 救護室の扉を思い切り開け放って部長こと、魔王グロリア様が降臨……普通に入室して来た。


「あら、そうなんですか? いつも皆さんが仕事をしている時間に入ってるんで気づきませんでした」


 慌てて入って来たグロリアへ紅茶を淹れる。魔王城周辺の土地より魔王様のお付(・・・・・・)が摘んで来たという茶葉を使った紅茶だ。カモメール(・・・・・)ティーには、気持ちを落ち着かせる作用があるため、今のグロリアには丁度いい。


 ひと息ついて、グロリアが話し始める。


「あんたどういう魔法を使ったの? 今まで私の言う事を聞かなかったゴブリンやスケルトン達がすっかり大人しく仕事をしているのよ?」

「そりゃあ、疲労が溜まっている状態ではストレスも溜まるでしょうから……。私は悪循環を断ち切ってあげただけですよ?」


 紅茶を飲みつつ、グロリアへ優しく笑いかける私。


「格好はサキュバスだけど、根っからの聖女ね……」

「無理矢理この格好にしたのはどこの魔王さんですか?」


「言うようになったわねルーシア」

「はぁ……グロリア……貴女のせいで、この格好に慣れてしまいそうで怖いです」

 

 最初は羞恥心があった、露出度の高いこの格好にも慣れてしまっていた。人間慣れというものは怖いものである。特に上級魔族が相手だと、嘗められてしまっては何をされるか分からないのだ。先日身体目当てで救護室へやって来た、いかにも上級魔族っぽいフードの男をサキュバスの口調で追い返したところだ。


「まぁいいじゃない。この調子で社員の健康管理に務めてちょうだいね!」

「分かりました。……善処します」


 満面の笑みで迫るグロリアに作り笑いで返す私なのでした。





******


 グロリアと私ルーシアが救護室でそんなやり取りをしていた頃……。

 大魔王エクストリーム社のとある会議室にて、上級魔族達が会議をしていた。


「クフフフフフ……グロリアの下に入った新人の女悪魔を知っているか?」


 漆黒の衣に身を包んだ悪魔がグラスに入った赤い液体を回しつつ話題を振る。


「興味ないわ。だって新人なんて、またすぐ辞めちゃうでしょ?」


 クリスタルテーブルへ肘をつき、興味なさそうに呟くは燃えるような赤い髪と露出度の高い服を身につけた褐色肌の女悪魔。


「クフフフフフ……今回はそうでもないかもしれんぞ? 何せあの〝マネ泉〟をどうやったかは知らんが、〝使える温泉〟にしたらしいからな!」

「あら。私は前から使っていたわよ? 闇の魔力が無くなって、むしろ寄り付かなくなったわ」


 漆黒の衣を纏った悪魔と女悪魔の会話へ二本の角と獅子の頭を成した男が入って来る。


「へっへっへっ! そいつはすげーーな! どうやら俺様の部下も世話になってるみてーだし。俺様が喰ってやろうか?」

「クフフフフ……低能のお前は逆に喰われる(・・・・)かもしれんぞ? 何やらサキュバスのような能力を持った悪魔らしいからな?」


 赤い液体を口へ含み、漆黒の悪魔は獅子のような鬣の男を一瞥する。


「へっ、サキュバスか。いいじゃねーか。魔王様のお気に入りなんだろ? そんな特別な悪魔なら、俺の女にしてやってもいいぜ!」

「……つまらない男」


「おい、今何か言ったか?」

「いいえ」


 互いに妖気(オーラ)を一瞬放出させ、ぶつけ合う獣男と女悪魔。するとテーブルの上にあったお菓子をつまんでいた人形のような女の子が椅子からぴょんっと飛び降りる。


プラたん(・・・・)ルリたん(・・・・)も喧嘩はやめるのーーーー!」

「「その呼び方はやめろ!」」


 お姫様のようなドレスを着た見た目幼女の女の子へ突っ込みを入れる獅子男と女悪魔。


「クフフフフフ……マリー(・・・)には勝てんの。まぁよい。我は興味があるのだよ、あの女の不思議な力」

「うんうんベルたん(・・・・)、僕も興味あるあるーー! だからちょっとマネ泉入って来るーー」


 幼女は三名の悪魔を置いて、会議室を飛び出していく。


「へっ、まぁ出る杭は打たれるってやつだな。俺様は静観するぜ」

「私も興味ないわ」


 獅子頭と女悪魔の返事を持って、漆黒の衣が立ち上がる。


「クフフフフフ……まぁよい。我も自身では動かぬよ。お前達は此処で見ておくといい」


 そう言うと、漆黒の衣は部屋を出る。そして、誰に聞こえる事もなく呟くのである。


「あのルーシアとかいう女。女狐の癖に我の誘い(・・・・)を断りおって。サタナキア四天王が一人――ベルフェを愚弄しておいて、ただで済むとは思うな」



 私が救護室で追い返したフードの男がただの上級魔族ではなく、四天王と呼ばれる相手であるという事実を、この時の私はまだ知らないのであった――――



 ここで第1章が終了となります。

 いよいよ聖女による会社の改革がここから始まって来ます。

 聖なる果実の……じゃなかった、聖女の活躍を見守っていただけると幸いです。

 一旦ひと段落となりますので、感想、評価等いただけると凄く嬉しいです! レビューなんか来た日には聖なる果実がぷるんぷるんと激しく上下運動して喜ぶ事でしょう(何)

 ではでは、今後ともよろしくお願いします!


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