プロローグ
目を開けてまず目に入ったのは美術館の天井だった。たしか海外の貴族御用達のナントカ調って名前のやつ。
にしても強く頭でも打ったのか美術館に来た記憶がない。あと体もうまく動かせない。
(あー、神経断絶系の怪我だったらどうしよう…って、泣き声うっさ!!)
普段だったら泣き声に文句を言ったりしないが、なにしろ耳元で聞こえるのだ。文句の一つでも言いたくなる。
(耳元で聞こえるっていうか…自分が発してるっていうか…)
徐々に戻ってくる体の感覚に違和感をおぼえ、目線をずらしてみる。と、見覚えのない外国の女性がいた。しかも俺を抱えて。
一瞬、大の大人を抱えて座るという異常な光景を目にし、前に読んだ巨人系SF漫画を連想して身震いした。
『#$%&%$$%$%$&#%%!!』
その女性が突然よくわからない言語で言葉を発した。
よくみると他にも周りに外国人がいるのがわかった。
みんな何語で話しているのかはわからないが、とても喜んでいるのだけはわかった。
…まったく、人が大怪我してるかも知れないのに…。
そう思うと怒りというよりなぜだか無性に泣けてきた…。
わんわんわんわん、と自分でも止めようのない泣きっぷりだった。
こんなに泣いたのは幼少期以来だ。
どうにか泣くのを止めようとしていると突然、2徹目の抗えない睡魔のようなものに襲われて意識が飛んだ。
(まったく、いい年の大人が赤ん坊かっての…)