思い切ったのに・・・
「私の家、お母さ・・・母がいないんですよ。」
がさがさがさがさ
「私と弟が幼かった頃に・・・病気で亡くなったんです。」
ばりばりばりばりっ
「それからは、家事は全部私がやってて・・・でも、失敗ばっかり。」
からん、ころん
「やっぱ向いてないのかな・・・?」
コロッ
コロッ
「私なんて」
コロコロコロ
「・・・さっきから気になってるんだけど・・・」
ひっきりなしに何か音が・・・してたよね?
「はい、何れひょうか?」
視線を横に向けると、そこにはチュッパキャンディをほおばっている運転手。
「話、聞いてた?」
「話?してたんですか?」
「・・・・・・」
ぷつん
脳内に響いた音は、俗に言う『堪忍袋の緒が切れる』音だろうか。
それとも、ホントに血管が切れた音?
どっちでも、もう意味がないけど。
「てっめぇ・・・ガラスハートの乙女が深刻な悩みを意を決して話してるのによぉぉぉぉ!!?何呑気に飴食ってんだこの野郎ぉぉぉぉ!!!美味しいか?シリアスモードの時に舐める飴はそんなに美味しいかぁぁぁぁ!?」
「ドス効かせてシャウトする人間を乙女とは言いませ・・・ぐふっ」
思わずネクタイを引っ掴んで力任せに引っ張ると、運転手は苦しげなうめき声を上げた。
失礼な突っ込みも込みで。
「いっぺん死んでこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」