虚無と平穏
「ちょっと待ってよ!このバス何処に行くの?!」
走り出した行き先不明のバスに不安を隠しきれず、美奈は裏返った声で叫ぶように運転手に聞く。
反応なし。
おーい、聞こえてる?
見ると、運転手はマイクを手にしている。
「こんばんはー今夜は行き先無制限の裏バス『あなざーばす』をご利用頂き、誠にありがとうございます。只今このバスは、お客様に今一番“必要な場所”へと向かっております。念のために言わせて頂きますが、何等かの悪質な宗教の類ではありませんのでご安心下さい。」
悪質な宗教団体より悪質だろーが。
つーかマイク使わんでも聞こえるわ。マニュアルが全てかオイ。
我ながら、腹を立てるポイントがずれているとは思う。
苛立ちが収まってくると、自分の不甲斐なさが嫌になって気分が沈んできた。俯く。
しんとする車内。
静かになると、自分の失敗したことばかり頭に浮かぶ。
―――もう、別れよう。
あ、さっきの彼の声だ。
―――正直お前といてもつまんねーんだよ。
そーだったんだ。ごめんね。
もう嫌だ。
なんでこんな事ばっかり・・・。
私、何か悪いこと、したかなぁ・・・。
悲しいわけではなかった。ただひたすら、ぽっかりと暗い穴があるような、そんな虚無感だけが心を占領していた。
「・・・悩んでますね。」
「!」
ずっと黙りこくっていた運転手がいきなり声を掛けてきた。
突然のことに反応が遅れる。
「え・・・」
「話してみてくれませんか?楽になるかもしれません。」
さっきは気付かなかった、運転手の澄んだアルトの声。
綺麗な声してる・・・
なんか、懐かしいな・・・
「・・・」
僅かに温かみを含んだ声音に、気持ちが落ち着く。
・・・話して、みようかな。
思い切って、美奈は口を開いた。
ここまで読んでくれてる人いるでしょうか・・・?
引っ込みつかなくなったんでしょ?
しんどいでしょ?
じゃなきゃ読んでくれてる筈ナイヨネー。
とひねくれてみたり。
読んで頂いてありがとうございます。