不可解なバス
近くで聞こえるエンジン音。ぷしゅーっと空気が漏れるような音。
「・・・バス?」
美奈が恐る恐る目を開けると、そこにはおかしな光景があった。
10分後にしか来ない筈のバスが、当たり前のように停まっているのだ。夜道に白いバス一台。
腕時計を見ても、やはりまだ5分も経ってない。
おかしい。
バスが時間を間違えた?
いや、そんな筈は。
「お客さーん。乗らないんですか?」
はっと我に返った美奈は、急いでその白いバスへ乗り込む。
彼女は気付いていなかった。その白いバスの横腹には、車体に映える鮮やかな青で小さく『行き先無制限』と書いてあったことに―――。
慌ててバスに乗り込んだ美奈は、まずおかしいと感じた。
「あのぉ・・・」
恐々と運転手に声を掛けてみる。声を掛けて、運転手を見たとき、思わず驚いてしまった。
―――この人の髪・・・地毛かなぁ?
まず目を引くのが彼の髪。永い時を経たかのように綺麗な白なのだ。帽子を目深に被っているため目元は見えないが、筋の通った鼻梁。形の良い口元。制服に包まれたバランスのとれた痩躯。かなり若いように見えるのだが。
普通なら釣り合わないはずの若さと白髪は、彼のバス同様の不思議な雰囲気を引き立てて、彼の魅力に変えていた。
「何か?」
思わず見惚れていた彼女をちらとも見ず、運転手は抑揚の無い返事を返してくる。
「え、あ、そのっこのバスって・・・料金箱とかは・・・」
そう。このバスの一番の奇妙な点は、運転席と座席以外何も無いのだ。ついでに言うとあまり繁盛してないのか、他に客もいない。
「見て分かりませんか。ありませんよ。」
「ええっ何で!?」
「必要ないからですよ。このバスには。」
(有り得ない。そんなバスある筈ない。嘘だ、そうだ、これは夢だぁっ!!)
「発車しまーす。」
彼女の心の叫びも空しく、バスは速度を上げ始めた。
進歩していませんね・・・筆力が。
もうホントにすみません。一応次の話で少しは運転手の出番を増やそっかなーなんて思ってます。
もし良ければ続きまで・・・や、止めておきます。皆様に売り込むのは。
お読みいただいて本当にありがとうございました。