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お嬢様と真っ赤な血潮

「フランベル・ロータス? そりゃ知ってるわよ」


「ベルちゃんと同輩だったら彼女のこと知らない人なんていないですよ」


「……誰でも一度はベルさんと話したことがあると思います」


「で? ベルのことだからまたなんかやらかしたんじゃないの?」


「……そのことで私達にベルさんの話を聞きたいということですね」


「そういえば教会で働いてる子が、この前ベルちゃんが偉い人と喧嘩して大変だった、って言ってたけど……」


「なーにやってんだか。変わらないねぇ、あの子も。ま、たいした話はできないけどアタシ達が知ってるベルのこと、少しだけ話してあげるよ」


「おじいさんが偉い人だってことは有名だと思いますけど、ベルちゃんのお父さんも変わった役職に就いてるのは知ってますか?」


「教会の不正を調査する仕事だったよね?」


「……特務監察執行官」


「そうそう、たしかそんな名前の」


「だからかどうか知らないけど、あの子って結構正義感が強くてね。曲がったことは許さないし、自分が納得いかないことがあると、相手が誰でもすぐ顔真っ赤にして怒り出すっていうか」


「いじめとか見過ごせないですし、不良グループに囲まれても物怖じせずに説教するんですよ」


「悪いことしてる奴らからは目の敵にされてたね~」


「……教会の令嬢で風紀委員長。そして学園一のトラブルメーカーでした」


「あ~、そういや風紀委員長なんてやってたね。停学処分何回もくらう風紀委員なんてそうはいないよね。……とまぁそーゆー訳でベルは有名人だったのさ。良くも悪くもね」


「でも、どんな揉め事になっても、最終的にはみんなベルちゃんのことを認めちゃうんですよ。それで気が付くと、不思議なことに前よりも良い形で丸く収まってるんです」


「……ベルさんに振り回されすぎて、相手が疲れちゃうだけかもしれないけど」


「ふふっ、それは言えてるかもね」


「……でも、ベルさんと一緒に聖アリシア学園に通えて私は本当に楽しかったです」


「うん、私も。きっとみんなそうなんじゃないかな」


「あははっ、なんだか意外そうな顔してるね」


「ベルちゃんがみんなから慕われているのが信じられないですか?」


「ベルってあんな性格だから誤解されがちなんだよね」


「男勝りな性格だし、思ったことはすぐ口に出ちゃいますからね」


「根はいい子なんだけどねぇ。頭で考えるより先に言葉が出て、下手すりゃ手が出ちゃうような子だから仕方ないと言えば仕方ないけど……悪い子じゃないんだよ、本当にね」


「……みんなベルさんとおしゃべりして、喧嘩して、仲直りして、いつの間にか友達になってるんです」


「まー、かく言うアタシも昔いじめっ子でね、あの子と取っ組み合いの喧嘩した仲なんだ。ホラ、目の上のこの傷、これベルに引っ掻かれた後だよ」


「私は怖い人達に絡まれた時に助けてもらったことありますよ。ベルさんと会ったのはその時が初めてでした」


「……わたしもベルさんに会わなかったら、ずっと引きこもりのままだったかもしれないです。ドアを蹴破って部屋に入ってこられたのも今では良い思い出です」


「ね、こんなふうに誰もが多かれ少なかれあの子に関わってるのよ」


「……生徒達だけじゃなくて、先生も、街の人も、それこそ野良犬も、みんなベルさんに振り回されっぱなしでしたよ」


「野良犬で思い出した。たしか何年か前にハーネンスで暴れてた野良犬を保護したこともあったよね」


「あー、あったあった。手がつけられない狂犬だったけど『この犬は寂しいだけで悪くない』って自分で飼うことにしたんだっけ」


「ベルちゃんに引き取られてからは彼女にすごく懐いてたね。灰色の大きな犬でたしか名前は……オルフ? とかそんな名前でした」


「なんだかんだ言いながら困ってる奴見るとほっとけない性分なのよ」


「知ってますか? ベルちゃんが何か騒ぎを起こすときはいつだって誰かのためなんですよ」


「……助けを求めてる人、手を差し伸べて欲しい人、何もかもが嫌になってる人……そして自分でそれに気付かない人。ベルさんはそういう人のことをちゃんと見てるんです」


「そういう人達をどうにかしてあげたくて、真っ直ぐぶつかるからついつい乱暴な手段になっちゃうだけなんですよ」


「なんていうか……良い意味で馬鹿なのよね」


「……わたし達が避けたり見て見ぬふりしてることから、ベルさんは目をそらさないんです」


「そういうところがたまらなく眩しくて、ちょっとだけ羨ましいです」


「やり過ぎちゃうのが璧に瑕だけどねぇ」


「……直情型お節介焼き。本人は否定してたけど」


「ベルとぶつかると相手もそれがわかるから、あの子が差しのべた手を握ってみたくなっちゃうんだと思うな。そしてあの子はその手を掴んで離さない。相手が嫌だと言っても、絶対にね」


「ベルちゃんのことだから、今もどこかで誰かに真正面からぶつかってるんじゃないですか?」


「損得も後先も考えずに面倒事に首突っ込んで、『あたしがどうにかしてやる!』ってね」


「でも、それでどうにかなっちゃうのがベルちゃんらしいよね」


「……大抵は相手が先に折れるだけですけど」


「ふふっ、それも含めてベルちゃんらしいね」


「そういう子なのよ。フランベル・ロータスは」






「ま、性格がアレだからまともな男は寄り付かないだろうけどね」

「同感です」

「……それは同感」

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