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髪長姫の転寝  作者: 四谷 秋
 第一の死
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儀式


 儀式の時が来て、二人を祭場へと連れて行った。

 鳥籠の中に宗正を入れ、鳥籠を吊り上げる。



 俺の命令とともに、幾本もの槍が宗正の体を突いた。


 槍から伝い、宗正の血が滴って器に注がれる。

 燕の頭蓋を清める紅い泉が生み出されていく。



 そんな中で、宗正は座敷牢の中と変わらず俺を見ていた。

 ただ俺は、その視線に逃れることができず、ただ見つめ返すことしかできなかった。




 なぜだ。


 なぜお前はそんな顔で俺を見る。

 俺を憎くは思わないのか。


 お前はなぜそんな穏やかな顔で死ぬのだ。

 お前はなぜそんなにも満ち足りた顔をしている。


 俺はお前を殺そうとしているのに。

 お前の死を命じたのに。


 なぜ、お前は悩まない。苦しまない。



「ゆ……ず……る………」



 鳥籠の格子の隙間から伸びる白い腕。

 俺を呼ぶ声。



 それがお前の最期だった。







 次は、燕。


 目の前には髪長姫の首を切り落とす刀。

 この一太刀で、燕の命を絶つ。



「髪長姫、前へ」



 宗正の最期を見てひとしきり泣いた後の燕は、俺の言葉のままに俺の前に出た。


 白い肌、切れ長の瞳。

 こんなにも、燕は美しかったのだな。



 俺の前で膝をつき、首を差し出す。


 普段見ることのできない白い首筋。

 首と背中の境界のあいまいな場所に黒子が見えた。

 こんなところに黒子があるなんて知らなかった。

 ずっとその場所は長い髪に隠されていた。




 せめて苦しまないように。

 一瞬のうちにすべてが終わるように。



 太刀を振り上げる。



 迷ってはならない。

 迷えばうまく首を切り落とせない。

 そうなれば燕を苦しませてしまう。


 だから、俺は当主にならねばならない。


 鬼にならなくては。







 俺は二人を殺した。


 最期、首を差し出す直前、燕は唇だけで言葉を紡いだ。




『恨みます』




 妹を殺す兄にふさわしい恨み言だった。





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