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 迷宮都市グラス。

 ガララから話を聞く限り、その都市を造ったのはどうもタタラの先代、つまりは俺達の前の子神とそのパートナーらしい。

 言ってしまえば臭い物に蓋。

 当時、この世界のあちこちに『どしたのワサワサ』ってくらいに湧いてた魔物――では無く《竜》と呼ばれるヒトの、或いは在来種の敵をキルミーベイビーでは無くキルユーすることによって数々の伝説を積み上げて神に至ろうとしていた先代達。

 が、正直全滅させる事は不可能。そこで先代達は《竜》をおびき寄せ、封じ込め、蓋をする事にした。

 当時の子神の中に次元干渉を得意とする神、クワバラがおり、彼とそのパートナーが《竜》を封じ込める異次元を作成。

 俺の居た世界にも存在した――神話の中だが――女神、機械仕掛けの戦乙女アイギスがその異次元に強固な蓋を。

 そしてその上に商売の神が、農耕の、工業の神々が祝福を与えヒトを集めて都市と、封じた《竜》達を定期的に間引く事が出来るヒトを集め、ヒトが集まるシステムを造った。

 それが迷宮都市グラス。この世界で唯一《竜》の脅威に晒され、その《竜》の恩恵を受ける都市。


「先代――じゃなくて、この街を造った神々がこの世界に居たのって千年前?」

「? いや、そんな程度では無かったとガララは記憶しているぞ。諸説あるが確か二千年程前と言うのが有力だ。知りたければ神殿にでも行くことをガララは進める」

「そうか……」


 千年前だったら赤い辞書を探さなくてはいけない所だった。子神の石版を探す所だった。



 兎も角。



 未だにタタラの口から雷撃が出る可能性が捨てられない事は兎も角。

 迷宮都市グラス。それが今回、俺とタタラが伝説を造る場所。

 ヒトは英雄を必要とする。

 物語は英雄を必要とする。

 だからその英雄を造るか――或いはその英雄に成ってしまうのが手っ取り早い。

 それが俺の考えだった。そんなわけで――


「ここが迷宮管理組合だ、ソウジ、タタラ。立派な建物だとガララは思う」

「ほぉー……や、確かに凄いな、これは」

「われ、しってる。これをつくったのは王様だ! 王様はお城をつくるのが仕事。これはきっとそのれんしゅう」


 はしゃぐタタラを引き連れてガララの案内でやって来ました異世界トリップで御馴染みの冒険者ギルド的なアレ。迷宮管理組合。

 材質は白亜の石。磨き抜かれたソレは頑強さと共に、美しさを兼ね備えており、内部には武装したヒトやそうでないヒトと言ったヒトの群に、そんな彼らが用のある施設と、そんな彼らが落とす金を狙った併設の酒場。

 ここが《竜》を間引く為の施設、迷宮への入り口であり、街と迷宮、世界と世界の境目に立てられた砦。

 ここから迷宮に潜り、ここで迷宮から持ち帰ったモノ、竜眼などを売り捌くらしい。


「ソウジ、ガララは組合員登録をしてくるぞ」

「ん。俺もやっちゃう事にするけど……金、本当に良いのか?」

「うむ。構わないぞ、ソウジ。そこまで高い金額では無いしな」

「でも……」

「そこまで気にするのならソウジが稼ぐ様になったら食事をご馳走をしてくれ。ガララは肉が好きだ」

「はい! われはからあげが好きです、兄上!」

「ありがとう、ガララ」


 異世界で出来た友人に精一杯の感謝を告げる様に頭を下げる。

 そして元気にお手々を、しゅびっ、てやるタタラくん、それは晩飯のリクエストですか?


「何、困った時はお互い様だとガララは知っているぞ」


 にやり、蜥蜴の顔を歪めて笑うガララは間違いなくナイスガイだ。



□■□■□



 お金の話をしよう。

 この世界の貨幣はコインの形をしており、単位はアイズ。

 《竜》の眼である竜眼が価値を持つ事から始まった貨幣精度故、そのコインには瞳を思わせる意匠が彫られており、一、十、百、千、万の単位のコインが存在し、順に其処に掘られる意匠が複雑に、コインの大きさは大きくなっていく。

 百アイズでパンが一つ買えるとの事なので、価値的には一アイズが一円位だと俺は脳内処理する事にした。だから、つまり――


「ようこそ、迷宮管理組合に。組合員登録でしたら一人、五千アイズになります」


 と、満面の笑みを浮かべる背中に羽持つ美人さんは俺に五千円要求していると言う事になる。


「登録は俺だけで良いです。……えと、五千ってことは……この赤いので良い……んだよな?」

「えぇ、そして青いのを五枚お返しします」

「はは、」


 軽く零れる乾いた笑い。

 田舎者丸出しの俺の態度を馬鹿にする事無く、正解と序に貨幣の種類をいしっかりと教えてくれるお姉さんの優しさもそうだが、ガララの優しさが凄すぎる。

 何が『組合員登録には五万かかる』だ。桁一つ違うじゃねーか。

 この後、ガララは用事が有るのでここで奴とは別れる事に成っているのだが……あいつ、俺がお金を突き返すのを予想して逃げたんじゃないだろうか?


「えと……どうかなさいましたか?」

「あぁ、いえ。何でも無いです。それで登録手続き見たいのは――」

「あ、でしたらこの水晶に触って下さい。そうすれば貴方の情報を刻んだカードが発行されますので」

「……」


 お約束のが来た。

 きっと魔法的なアレで偽造が不可能で無くすと再発行にお金が掛かるんだ。銀行のカードの代わりにもなるんだ。何故か俺が読める字で書かれてて、他人には使えないんだ。

 で、お約束的に発行されたカードを受けとり、あっさりと登録は完了。受付の美人さんにお礼を言って、酒場的な場所で見たカードには――


 名前・片桐ソウジ

 種族・人間種


 と、言う解り切った情報と『スキル』と『祝福』と言うファンタジックな項目が。

 コレはあれだろう。事前に女神的な方に説明を受けていたアレだろう。子神を育てるにあたり、異世界で生きる為に授ける力ってやつだろう。

 確か『スキル』の方は元々俺が持っていて眠っている可能性を起こした物で、『祝福』の方は契約した神、俺の場合はタタラに影響されたモノだと聞いている。


「……」


 レアスキルとかレア祝福だったらどうしよう?

 ほら、良くあるじゃないか。一般的にはクソみたいなスキル。だが、使い方次第ではとんでもなく有効で、俺はソレを使いこなしてウッハウハ! タタラの潜在能力が凄まじく、与えられる祝福が超凄い! みたいなの。

 や、俺は期待してないよ。特にスキルとか。所詮一般人の俺だよ? 幾ら眠っているのを起こすって言っても……ねぇ? 十六にもなれば『才能』って言うモノの有無位分かる。幼少時の様に無邪気ではいられない。自分が野球選手や大統領に成れない事くらい知っている。

 だから、ねぇ? 一般人の俺が眠らせてるモンを表に出した所で……ねぇ? ――……でも、まぁ、もしかしたら、俺の先祖に鬼殺しの武士とか居てすんごいスキルが有ったり……――ハハッ! うん。そんな期待はしてないよ? してないから軽い気持ちで。うん。ほんと、特に過剰な期待はしないで軽い気持ちで――



 スキル・集中力(Lv.1)……集中力が凄い。



「回避と命中が二十パーセントアァァァァアァップっ!」

「ちがう! 兄上、ちがう! せいしんコマンドのしょうひけいげんだ!」

「なんでお前知ってんの?」


 微妙過ぎるっ!

 なんだ! 集中力って!

 なんだよ! 凄いって!

 発動するとどうなんの? 凄い集中するの? と、言うかこのスキル、アクティブ? パッシブ? その辺の説明しか無いこの説明が凄いよ! と、言うかこんなモノがスキルとして表示させる俺が一番凄いよ! うるさい。俺は一般人なんだ。だから期待なんかしてなかったんだよ、ばーか! 神様のばーか! うそです。謝るので何か凄いスキルを下さい。


「……良い、きっとその分、祝福が凄いんだ。な、タタラ? お前の祝福、半端無いんだよな?」

「……」


 縋る様な眼で見る俺から、ふい、と視線を切るタタラ。


「――……」


 おっとーぅ。この時点で俺の期待地がMAXですよ? ……低い方に。



 祝福・未熟な鍛冶神の祝福(Lv.1)

 鍛冶神の為に鉱石の判別が出来る様になる。今は水切りに適した石とそうでない石がわかる。



「……」

「……レ、レベルがあがれば、きっと、すごいとわれは思う……」

「…………」


 水切りってー。


 と、言う分けであっさりタタラが何を司るかはあっさり公開。

 子神は神話も元にしたのもいれば、適当なのもいますよー。

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