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 地下駐車場から一階フロアに続く階段。そこの踊場が爆ぜた。

 体重検知式の設置型は今日も今日とていい仕事。

 二回の紳士服売り場。そこのレジの下に潜ったオレに差し向けられたであろう追撃隊。もしくはただの巡回中の子鬼が何匹吹き飛んだかしらないが、これで罠を警戒して追跡の速度を緩めてくれると嬉しい。……でも侵入者を警戒して警備が厳重になったりするのは勘弁して欲しい。


「……」


 っべー。っべーよ。そうだよ。その可能性があるじないですかー。やべぇよ。っべーよ。追撃隊の足を緩める為に手持ち最後の設置型を置いた時は良い案だとか思ってたけど、そうでもねーですよ、これ。

 所詮は素人の浅知恵だよ。

 子鬼の巣の中で、周りの子鬼が全員警戒態勢とかやばすぎじゃないか? うん。やばい。伝説の傭兵が段ボール使っても多分、見つかる。

 狙い通りに追撃隊の足が止まってくれるだけなら良いのだが……。


(それは期待し過ぎない方が良いですね、うん)


 本日ラストオーダー。これにて店じまいな設置型を先ずは作成。投擲型のグレネードも道中でゲットした子鬼の竜眼つかって作成。更にへし折った歯を複数握り込み、ショットガンシェル――シャーリーのごはんを造って装弾。

 神様からチートは貰えなかったが、これは中々にチートなのではなかろうか? そんな事を考えながら現地調達で弾薬を補充しつつ、周囲に使えそうなモノが無いかを確認。


「……へぇ」


 そんな中、視界に捉えたモノに思わず楽しげに上がる口の端。

 ここ、ウエスト・シティに入った時に薄っすらと予感したことがある。高速道路を、アスファルトを、デパートを、それらを見た時に予感したことがある。――ここは地球ではないのか? 未来か、並行世界か、その辺りは分からないが、どうにも知っているモノが、外とは年代が違うモノが――迷宮には存在していた。

 だからこそ、そんな仮説を立てたのだが――


「外れ……でいいよな?」


 見慣れない言語で書かれた伝票。

 世界中の言葉を知っているわけではないが、少なくとも見慣れない文字で書かれた伝票を指で弾いて、結論。

 ここは、地球では無い。


「は、」


 だから何だと言われればそこまでな答え。それでも、ソレを得て、少しだけすっきりした。

 危ない。危ないね。世界の謎とかに気が付いたら主人公やらなきゃいけなくなるじゃないか。生憎こちとら低血圧。そこまで血圧あがるのは起床後十八時間は必要で、その頃にはすっかり眠くなっているのだから、永遠に謎が解けない所だった。

 そう。そうだ。そんな面倒な事はひびのんあたりにやらしときゃ良い。

 差し当たって俺は――上を目指そう。

 馬鹿と偉い奴は上に居て、偉い奴の周りにはお宝が有るのが定石だ。

 そんな分けで造ったばかりの設置型を、造ったばかりの子鬼の死骸そばに置いて、ジリジリと紳士服の森の中をはいずり回って婦人服売り場へ。


「……」


 男が入ると気まずい下着コーナーにいるせいか、ドキドキがとまらない。どうしよう? これが……恋? 下着単品にときめける俺のレベルはきっと高い。ユートピアはここにあったんだ! 完!


 ――でもいいのだが、目的はソレでは無く、上に続く階段。


 俺を警戒してか、見張りが張られているのを確認したので、階段から最も離れた紳士服売り場に子鬼を集めたいのだ。


 階段付近のアミューズメントコーナー。

 最も離れた紳士服売り場。

 中継点の婦人服売り場。


 そんな位置関係が有るので、取り敢えず下着売り場のレジ下で待機。

 未だかな? まだだな。未だかよ? もういいかな?

 とんとんとん。過ぎない時間の尻を叩くように右手人差指がリズムを刻む。待て。良いから、待て。今は待て。言い聞かせる。そうして――


「はッ!」


 笑う。来た。

 本日何度目かの爆発音。仲間の死体に気が付いた獲物がなんらかのアクション起こしてくれたらしく、作動する地雷。吹き飛ぶ轟音。それが、合図。

 転がる様にレジの下から飛び出し一気に階段までの距離を詰め――……


 ……。

 …………。

 ………………。

 前略、おふくろ様。

 お元気ですか。僕は馬鹿です。

 目的地から離れた場所で爆発を起こしました。

 敵はそこに向かいます。

 僕は目的地と爆破点の中間に居ます。

 敵はそこを通ります。

 僕と擦れ違います。

 見つかります。


「……」


 どうしよう?


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