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設置型と、投擲型。
ガンナー専用の弾丸生成の刻印魔術の亜種。
弾丸を造り出す様に、核を使い、生み出すのはグレネード。
一つはそのまま投げてドカンと一発かますノーマルタイプ。仕組みが単純なので、クールタイムを十五分ほど挟めば幾つも生成でき、更には高速生成特化型の俺の場合はほんの数秒で造ることが出来る恐らくは今後の迷宮探索の要となるモノ。
もう一つが設置型。先程子鬼の群れを貪り食ったコレは、設定しておいたモノ……例えば、重さや、先程の刻印の刻まれた石などを合図に作動するコイツは刻んだ刻印の複雑さから日に三個が限度。四個目を造ろうとすると肌が焼ききれそうになってしまうし、投擲型とは違い、俺でも造るのに五分くらいかかってしまう。
他の使用者の皆さんが専用器具付けて半日とかやってるのと比べれば大分マシだが、それでも時間が掛かるので、上手く使わなければならない玄人仕様。
「さて、と」
そんな物を造り出すべく、先程解体した子鬼の竜眼の内、損傷が多いモノを握り込む。売り物である竜眼だが、実は弾丸やグレネードの核としては極めて優秀。収入減るのを覚悟しても命は大事なので、ケチらずに作成しながら、他の戦利品をガサガサゴソゴソ。
初めての経験だが、先程仕留めた子鬼の群れはリュックを持っていたのだ。楽しい楽しいピクニックの行き先はあの世でしたってもんである。うわぃ。何それ。悲劇。←犯人。
入っているものは――
・何かグロイ肉
・謎の竜眼
・何かのサナギ
・メレンゲ
「ちっ、しけてやがる」
と、小物な強盗が言いそうなセリを吐き出してみたり。っていうかメレンって何? 何でメレンゲとか入ってんだYO!
「あ、何か地図あった」
これ見よがしに目的地を強調する様に赤ペンぐりっ、ってしてある。マジでピクニックだったのかな?
特に目的が無く、金が稼げれば良いだけの俺だ。
それ程遠くなさそうだし、行って見ましょうかね?
□■□■□
結論。
ピクニックの様なのほほんとしたもんじゃなかった。
アレだ。アイツらは偵察隊か何かだ。
ボロボロな地図を読み解いてやって来たのは、五階建ての大型デパート。
その前。過っては街路樹に彩られ、多くの車が走っていたであろう片道三車線の道路のど真ん中でドラム缶に突っ込まれた木々がパチパチ燃えてキャンプファイヤーに成っている胸に七つの傷持つ男が居そうな世紀末チックな光景の中、うろつくのは緑色の肌と黄色の竜眼を持ったおなじみの子鬼さんたち。
ネズミの丸焼き齧りながら談笑すると言うリラックスっぷりを見るに、ここに住んで居そうな勢いだ。
風下に伏せて双眼鏡覗き込む事、一時間。
持ち込んだ水筒の中身で軽く唇湿らせ、結論。
子鬼の数は不明だが、こちらから確認できる生きている入り口は三つ。
自転車売り場からつながる小さい一つと、規模に相応しい正面玄関。五回までが吹き抜けになっている大きな入口。そして、地下。
この三か所からの出入りが確認できた。
……行くなら、地下からだな。
そう結論。
自転車売り場は俺には狭すぎ、正面玄関は子鬼の出入りが多すぎる。だから行くなら地下駐車場からの侵入がベストだろう。
「は、」
軽く笑って、テンガロンハットを深く被りなおす。
投擲型のストックは五、設置型のストックは持ち込み含め三。ショットガンとリボルバー、シャーリーとアイリーンもお腹一杯。
それなりに条件は整っている。
軽く冒険してもいいかなと思える位には揃っている。
やばいね。こういうのを待っていたのかもしれない。良いじゃないか、良いじゃないか――実に、迷宮らしい。
行こうかな? うん。行って見よう。
そうと決まれば、やる事は迅速に、手際よく。
見張りか何だか知らないが、キャンプファイヤ―やってる連中に向けてズリズリと匍匐前進で接近。アスファルトの上でやる事ではないが、やらなければいけないのだから仕方が無い。三つ目牛の丈夫な革はこちらの無茶にも付き合ってくれるから、服が破れる事は無い。だから肌が傷つく事も無い。血が出ないのだから問題ない。痛い位なら耐えろ。
良い距離まで近づいた所で、投擲型のグレネード一つ取り出し、ピンを抜いて投擲。ガン、と良い尾と響かせ、ドラム缶にホールインワン。
――ギャ?
その音に不思議そうな声を上げて子鬼がドラム缶を覗き込んだのが、地獄が始まる合図。
用途を果たすグレネード。瞬間的に膨らんだ気圧に押され弾け飛ぶドラム缶。破片が凶器に、周囲の子鬼たちに襲い掛かる。
見て/走る
悶絶する子鬼の一匹の喉踏み付け、蹴り飛ばし、その身体のそばに体重検知の設置型グレネードを二つ仕掛ける。
引き金を引く、シャーリーが吠える。空に向かって、轟音。
ガゥン! ガゥン! ガウゥン!
一、二、三。
それでにわかに騒がしくなる目的地、デパート。
三つの入り具とから何匹かの子鬼が飛び出して来るのを、潜った茂みから確認。そのまま、茂みを盾に視線を遮りながら大きく回って――
背中で再度の轟音。
後続隊巻き込んで花火が上がったのを耳で確認し、走り出す。
「っ!」
地下通路。
出て来たばかの第三隊、言い換えれば出遅れ君三匹。目が合う。相手の眼に殺気が宿る。
走る勢いそのままに蹴り足。一匹蹴り飛ばし、左側の奴の顔面にテンガロンハット被せて、眼隠しに、そのまま、とん、と後ろに飛ばし、残った一匹はシャーリーの晩御飯に。そうしてアイリーンも使って蹴り倒した奴と、帽子被せた奴も順繰りに屠る。
「さて、行って見ようか」
帽子を回収しつつ、スプーンナイフで取り敢えず竜眼一つ抉り出し、笑いに混ぜて方針を口に。上に続くと思われる階段めがけて駆けだした。
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