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久々に更新するに当たって、見てみたらポイントもお気に入りも増えてた。ビビった。ありがとうございます。
組合員証のスキルの欄を長押しすると、これまでの人生の、どの行動が、そのスキル獲得に繋がったかが分かるらしい。
それによると、ゆりあさんは、幼少から死ぬまでの間、ずっと病院のベッドで過ごし、その間、ご両親の愛情を受けていたのが魅了のスキルに繋がったらしい。
家族愛を分解して行くと残るのがソレとかクソだと思うのー。
因みに、俺、片桐ソウジの場合は――
スキル・集中力(Lv2)
あの夏の日。週刊誌の大人袋とじを素手で開いた時のコンセントレーション。それは余りにも見事だった……ゼっ☆
クソだと思うのー。
兎も角。ヒトに見せれない方法でゲットしたスキルの事は兎も角。
「さて、取り調べのお時間です。被告人、ゆりあさん。何で小鳥遊さんにあんなエゲツないことしたん?」
あれだよ。作品によってはお前、エライ事になるレベルの酷い事だよ。
「つい、カッとなってやった。今は反省している」
「……」
「ゆりあ、突然こんな所に来て怖かったの、許してお兄ちゃん!」
きゃるん。
「……二十八でそのキャラ、辛くない?」
「やめて。考えると自殺しそうだから言わないで」
「……」
ゆりあさんに関して分かった事、その一。世のロリババァよりもHPは低い。
で、そんな彼女がカルーアミルクなるタタラでも飲める甘いカクテルを飲んで居るのは相も変わらず壁際に全部青の信号機がある定食屋。
アルコール摂取により、顔が真っ赤になって「にゅ」としか喋らなくなったタタラを小鳥遊さんに預けて、俺は取り調べ。かつ丼、食うか? とか聞ける人情派を気取っているが、その実、返答次第では、ゆりあさんとの敵対すらも視野に入れた熱血派だ。
因みに、直接の被害者である小鳥遊さんはあまり他人と言うモノに興味が無いらしく、結構えげつない事されてたのに『どうでも良いから』との事。余りの男前っぷりに告白しそうになった。アタイを抱いて! つまりは淫乱派。
「……ハミ乳刑事淫乱派ってどう思う?」
「AVのタイトルにありそうだと思う」
「ですよねー」
閑話休題。
「で、ソウジくんのスキル……集中力だっけ? 戦闘向きって分けじゃないけど、戦闘にも使えるんだよね?」
「……えぇ、まぁ」
クソみたいな獲得条件で、どっち向いてるかも分かんないスキルですが、戦闘にも使えます。
「わたしの場合、スキルも神の祝福も戦闘には使えないから英雄を造る事にしたんよ」
「……すいません、それが何で小鳥遊さん苛めにつながるか分かりません」
「ヒロインが苛められてる所を颯爽と助けるヒーロー。そこから紡がれるラヴストーリー、少年と少女は神話になる! ……王道やん?」
「いや、『やん』とか言われても……」
エセ関西弁で聞かれても……。
「あそこの信号機からヒーロー選んでゆりあさんがヒロインやれば良い――あぁ」
察し。
そうだね。二十八でそれはキツイね。うわキツだね。わかるわ(アンチエイジング)。
「キツツキっ!」
「眼がっ!」
バ○スっ!
「……うわぁ。ぐにっとした。うわぁ~」
心底嫌そうにゆりあさん。
「ねぇ、ヒトの眼、思い切り突いといてその感想ってどうなの? どういうことなの?」
ゆりあさん、どこ中? 異文化過ぎて怖いんだけど?
「魅了程度でコロッと行く様な奴が英雄になれる分けないじゃん?」
「あぁ、それは確かに……」
あの三人が英雄できると言うなら、俺はひびのんをプッシュする。ひびのんは英雄の器だ。彼なら『負けてから這い上がる英雄』を演じるのに十分だ。何といっても扱いやすい。
「ん? まって、ゆりあさん。俺、小鳥遊さんの事、助けたよね?」
「うん、助けてたね」
「と、言う事はですよ――」
始まるわけですか。ラヴストーリーが。ファーストキスから始まる二人のラブのストーリーがっ!
「どうしよう! ゆりあさん、どうしよう! 俺、意識しちゃって小鳥遊さ――……コトリのこと、見れねぇよっ!」
「いきなりコトリちゃんの事を名前呼びしつつ、主人公っぽい口調に変えてる所、悪いけど、そのプラン、もう止めたから」
「え? じゃぁ俺のラブストーリーは?」
「……蜃気楼?」
「幻って事ですか?」
力強く頷かれた。素直に酷いと思った。
「コトリちゃんには悪いけど、想像以上に大きい魚が掛かったからね。止めた」
「その魚が俺と言う分けですね? どう料理するんですか?」
煮て良し、焼いて良し、蒸して良しですが、活け造りだけはかんべんな。
「え、えと、その――」
ゆりあさん。アルコール以外の要因で赤い顔。
髪を、すっと耳にひっかけ、潤んだ瞳で上目づかい。
わたわたと手、落ち着きなく動いて――
「ソウジくんは、年上のお姉さんって……どう思う?」
胸を、ぎゅっと、寄せて強調し――、強調し――、強調……。
「――はんっ」
思わず鼻で笑った。
「キツツキっ!」
「眼がっ!」
バ○スっ!
□■□■□
一日で二回も眼球を突かれたのは初めてだった。
だが、今日は終わりだ。『あにゅうぇ』と言い出したタタラをオンブしておやっさんの所に帰れば今日は終わり。明日に備えて眠るだけ。そう。だから。そう――
「分かっていない様でゴザルね、片桐氏。貧乳は……ステータスだッ!」
クワッ!
とやってるヒトとは関わらない。関わりたくない。
って言うか誰だよ? どっから沸いたんだよ? 何時からいたんだよ? なんで羽生えてんの? そのビジュアルで天使なの? なんでリュックにポスターさしてんの? そのバンダナと指ぬきグローブは何? それ以上にそのデカイ腹で歪んだキャラTに掛かれてるキャラ何?
「あ。あれ、わたしの契約してる神ね」
「止めて! 聞きたくない! ゆりあさんに優しくなっちゃう!」
「はっはっは、酷いでゴザルなぁ――所で片桐氏、タタラきゅんにメイド服を着せてみませんか?」
真顔。
「ひぃ!」
思わずタタラを抱き締めて離れた。怖い。本当に怖い。これが神のプレッシャー……っ!
無意識にグリップに手が掛かる。やる。やられる前にやる。やってやる。
呼吸、一回。深呼吸、一回。深呼吸、もう一回。
研ぐ。研ぎ澄ます。勝て。勝って見せろ。狩って見せろ。
冷えて行く頭。鋭くなる感覚。
――どこかで、かちっ、と、秒針が鳴いた。
「おや? ゆりあ氏、拙者、もしかしてヤバいでゴザルか?」
「うん。かなり。ちょっと、ソウジくん、タイム! 待って、『お願い』」
懇願。ゆりあ。その瞳が涙で潤んで――守ってあげたい。
「――~~ッ!」
咄嗟。口の内側の肉を噛み千切った。痛みで目が覚めた。
「……魅了使うの、止めてくれませんか?」
「あっさりレジストできたから良いでしょ? それに、わたし痛いの嫌だもん」
ぷいす。ほっぺを膨らませてゆりあさん。……二十八歳。
「……」
慈愛に満ちた笑顔が浮かんだ。俺は応援しているよ。
「止めて! ぶりっこし過ぎたのは分かってるからその笑顔止めて!」
「だいじょうぶだよ、ゆりあさん。俺は応援してるよ。……で、このヒトがゆりあさんと契約してる子神? ……子神?」
自分でいって思わず首を傾げる。
子神って何だっけ?
「良い所に気が付いたでゴザルな、片桐氏。……そう! 拙者の生活能力子供以下っ!」
「……」
良い笑顔で親指たてられた。どうしたら良いんだろう? どうしよう?
「えーと……何、司ってんの? 吹矢?」
「っ! それは十四年度冬アニメ、のう○んネタでござるなっ! と、言う事は拙者の中身は杉田氏っ! 即ちヒロインは、ハァァァァァァアァルゥゥゥゥゥヒィィィイィ!」
大絶叫。魂の底からの大絶叫。
「……」
無言でゆりあさんを見た。
「……アニメよ」
思ったよりも凄いもん司ってた。
今後、ゆりあさんにも優しくしようと思った。