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 ヒトの群れ、ヒトの海。

 額に角持つ鬼種。全身鱗に覆われた鱗種。トライバルチックなタトゥーを纏う獣種。背中に羽持つ場所取り種族、翼種。そしてタタラと同種の鋼種に俺と同じ人間種。

 見渡す限りのヒトの海を構成するには、この世界を構成するヒト六種。


「あほ! 兄上のあほ!」

「はっはー。そんなアホな兄上に騙されたのは誰かな? 超アホー」


 そんな大量のヒトの中、ほっぺを膨らますタタラに『やーい』とやっている現在位置は、そんなヒトの海の中に在ってヒトに呑まれていない場所。

 数多のヒトが集まる場所。数多のヒトが必要とする物が集まる場所。露天市。週一で開催されるグラス・マーケット。

 定期的に開催されるソレに店舗側にて持ち込んだ丸椅子二つに座って、目の前に商品並べてるのが今の俺とタタラである。

 事の起こりは簡単だ。

 俺は大量のゴブ歯を弾丸に変えて、ソレを売りたかった。

 タタラはおやっさんのお手伝いで作った幾つかのインゴットを売りたかった。


「……お前、俺の知らない所で何やってんの? 何でインゴットとか造れるん?」

「われ、かじのかみっ!」

「……」


 そうでしたー。

 兎も角。タタラの特技とか、『その幼い腕で鍛冶とか舐めてんの? 鍛冶は腕力だよ? 女子供には出来んよ?』とか色々な所に喧嘩売りそうな感想は兎も角。

 そういった事情から適当な店にそれらを持ち込んで金、アイズに変えようとしたところ、タタラが我が儘を言い出した。


 曰く――自分達で売りたい。


 何でも子神持ちの誰かがフリーマーケット的な事をやり、それが楽しかったと言う話が子神ネットワークで流れたらしく、子神達の間では今、お店屋さんごっこが大流行。子供かよ! ……うん。子供だった。

 が、グラス・マーケットは割とビッグな人気イベント。

 客としての参加ならば兎も角、売る側としての参加は至って困難。

 そんな分けでタタラに諦めさせ様としていた俺に差し伸べられる救いの手。


『使えよ、ソウジ。その、僕たち……友達だろ?』

『ふん! かんしゃしろよ、かとうせいぶ……――っ! ごめんなさい! なまいきなこと言ってごめ――……た、タタラ! 俺様をたすけ――ぎゃにやぁぁぁあぁ!』


 ひびのんである。魔剣士ひびのんである。

 何でも、ひびのんはグラス・マーケット主催の一人の娘さんを盗賊から助けた事によるコネがあり、スペースをもらっているが、ひびのんの連れてるバ神は残念な事に非生産系。

 ギルド騒ぎの際に何故か『友達』になったらしい俺の連れるタタラが生産系と言う事もあり、『友達』と言う事もあり、譲ってくれたのだ。……あ、何故か『嵐山くん』と言う言葉が浮かびました。理由が分かる方はご連絡下さい。


「……で、お前、ソレいくらで売るの?」

「せんえん!」

「千アイズな。……インゴットの相場が分からねーから高いか安いかも分からないですね」

「われ、このお金でアメかう! 兄上はしゃっきんへんさい?」

「……」

「? 兄上、どうしてそっぽむく?」

「……ごめん」

「な、なんであやまる? 兄上は、はやくしゃっきんかえしてわれを……」

「……本当に、ごめん」

「あ、兄上―っ!」


 タタラが、きしゃー、ってした。

 ごめんね。兄上は装備を整えます。ダブルアクションのリボルバーとコート。ついでにグレネード系の刻印彫ります。


□■□■□


 意外な事にゴブ弾は良く売れた。あっさり品切れだ。

 何でも数の割に値段が安かったらしい。今後売る事も考え、一度相場を確認しておこう。先人と揉めても良い事は何もない。


「……」

「……」


 そしてタタラのインゴットは全く売れない。


「……た、タタラくーん? ほら、お小遣い上げるから屋台でジュースでも……」

「どうじょうするなら金をくれ!」

「……だから今、やろうとしてんじゃん」

「なさけなんかいらん!」

「うわい」


 そーですかー。タタラくん、マジかっけー。

 因みに、兄上的推測ですが敗因は、手に取るヒト――何故か職人系オンリー――に『それな、われがつくった!』とかお前が言うからだと思いますよ? アレだ。品質疑われてる。


「……うれるもん。はくばのおーじが買ってくもん」

「乙女か」


 びしっ。突っ込んでみたり。


「ねぇ。これ、見てもいい?」


 と、凹んだタタラを膨らまそうと漫才やる俺に掛けられる声。

 ハスキーな女の声。

 視線を上げれば偉く目付きが悪い黒髪長髪のお嬢様。

 恐らくは同年代と思われる彼女は動きやすそうなTシャツ、Gパンと言う格好でその脚線美を強調しておられた。……足、ながっ!

 そんな女子高でおモテになりそうな彼女に商品差し出す。


「あー……どぞどぞ。ほれ、タタラ。お客さんだぞー」

「……どうせ、売れないもん」


 いじけタタラはガリガリと拾った木の棒でお絵かきしてた。……それは兄上ですか? あら上手。


「うわい。この子、メンドクセー」


 誰に似たのかしらー?


「? もしかして、コレ、その子が造ったの?」

「そです。そして売れないからこの有様で――ねぇ、タタラ君? 君の描いてる兄上のお腹が爆発してる様に見えるんですけど?」


 凄く陰湿な嫌がらせをされている様に感じるんですが?


「その子、ひょっとしてカミサマ?」

「そうですけど……その質問は……」

「お仲間よ、わたしも」

「うわぃ。でしたらお近づき標に全部買って下さい」


 うけけー。悪い笑み浮かべつつも、割と真剣に懇願を。

 タタラが沈みっぱなしで少し可哀想だ。全部は無理だろうが、一つくらい――


「良いわ。全部貰う。六個だから――六千アイズで良い?」

「……」


 売れた。


「……」


 横のタタラに視線を向ける。


「!」


 キラキラしてた。


「おねーちゃん、買ってくれるのか?」

「うん。お姉ちゃん、これが欲しいんだけど、売ってくれる?」


 そんなタタラに相変わらずのハスキーボイス。それでも幾分か柔らかい声を掛けるお嬢さん。睨むような目つきも少し柔らかく成っている所を見るに、子供が好きらしい。

 見た目、不良っぽいが、きっと幼稚園の先生とか目指してるんだろう。……ちょっと萌えたよ?


「みて、兄上、みて!」

「良かったな、タタラー……貯金しとくからな」


 嬉しそうに戦果、六枚の青い千アイズ紙幣見せるタタラから、五枚を没収。


「! か、かえして、兄上! 兄上!」

「ちっこいころからお金持つと碌な事に成らないから、ダメ。ひびのんが良い例だぞ?」


 アイツ、金持ちの息子らしいです。

 これまでの十七年の人生で一人も友達が居なかったらしいです。


「……ちょきんしてください」

「引くなよ!」


 言っといてナンだけどっ! 引くなよ! ひびのんが可哀想だろ! ちょっと空気読めないだけで悪い奴じゃないんだぞ、ひびのん! 女の子だったら『世間知らずのお嬢様枠』でヒロインだぞ、ひびのん!


「兄上、兄上?」

「ん?」


 服の裾を、クイクイとタタラ。


「だが、男だ」

「真理だッ!」


 閑話休題。


「お買い上げは嬉しいんですが……良いの?」


 お嬢様に疑問文。

 タタラの機嫌が直って有難い事に変わりはないが、無理をさせているなら申し訳ない。


「それ言うなら、本当にこの値段で良いの?」


 だと言うのに帰って来たのは疑問文。


「「?」」


 分けも分からずタタラと二人揃って首を傾げてみたり。


「はぁ……あのね。これ、品質良すぎ。で、この値段だから詐欺疑われてる。十倍付けなよ」

「……ソレは、もしかしてお値段の事でしょうか?」

「? それ以外に何があるのよ?」

「……」


 駄目な子見る様な目で言われた言葉に思考が停止。

 タタラと並んで口開けて、ぽかん。


「兄上! たいへん! 兄上! そんなにお金があったら……オウレンジャーロボの人形が変えるけいさんになる!」

「……その前に原材料費幾らだよ……おやっさんに後で請求されたりしないよな?」


 夢のソロバン弾いてはしゃぐタタラと、現実のソロバン弾いて凹む俺。

 子供と大人の違いが露骨に出る構図だ。……俺、ヤなとこだけ大人だなー。


「? 何で複雑な人間模様を展開してるのか分かんないけど……ここ、年間予約スペースよね? 毎週来るの? わたし、またコレ欲しいんだけど……」

「……二週に一回くらいのペースで来るつもり。インゴットの値段は上げますが……」

「おっけ。よろしく。また来――」


「おい、テメェ! 何してんだよ!」


 お嬢さんの言葉を遮る様に怒声。

 それを聞きながら俺はこう思うのだった。


 ――最近、新キャラ多くね? と。


 ちょっと更新ペース落ちます。週二 → 週一or二週一。

 気が向いたら間隔詰まるかもですが、原則もう一方の方を書き進めたいのです。


 それでも評価、感想など頂けると嬉しいです。

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