13
――ガンナーには種類がある。
――トリガー・ハッピー。銃弾をばら撒く事に取りつかれた奴
――スナイパー。一撃で脳漿をぶち抜く事に興奮する奴
――銃士。引き金にプライドを掛ける奴
――スィーパーと呼ばれる銃士
俺はソイツを探している――
□■□■□
「俺、お前と同期で良かったよ」
ジョンが俺の肩を叩いた。
「また、会えるよね……?」
ソウタが涙ぐんでいた。
「俺達の事、忘れないでくれよな」
トールがしみじみ頷いた。
「「元気でね、ソウジっ!」」
タロジロがハモった。
「お前に教える事は、もう、何も無い」
教官殿が力強く背中を叩いた。
「……ぅ……あの……その……」
ツバキさんはモジモジしている。
「元気でね!」「たまには遊びの来いよ!」「戦士ギルドの事、忘れんなよ!」「じゃぁね、ピヨま……じゃないや、同類!」「お前の小太刀捌き、忘れないぜ!」「じゃぁな、タタラー」「――、――」
戦士ギルドの面々が次々に俺とタタラに声を掛けてくる。
「……ソウジくん」
そして――
「ありがとう、君のお蔭で僕は今、生きてる」
涙ぐんだカツヨシさんにハグされた。
「……」
皆――
「……良い話にしようとしてるけど、お前ら、俺を追い出すんだからな?」
「「「「「「「「「「……チッ」」」」」」」」」」
うぉーぃ。コイツら、眼を逸らして舌打ちをしやがりましたよー?
□■□■□
――エーテルには種類が有る。
――エーテルを身に、武器に纏う《付加》。
――エーテルを操り、神秘を行う《操作》。
――エーテルを硬め、武器とする《固体化》。
――エーテル製の弾丸を、矢を、武器を造る為の属性、《固体化》
それが俺、片桐ソウジのエーテル属性だった――
「と、言う分けでこの度、めでたく戦士ギルドを追い出されました!」
「わー!」
タタラがばんざーい。
ヤケクソ気味ながら何処となく弾んだ俺の声のテンションに合わせたのだろうが、果たしてこの子神は現状をどれ位理解しているのだろうか?
これまで寝食を提供してくれていた戦士ギルドは俺が戦士となる事が不可能と分かった瞬間に『卒業作戦』とやらを敢行。何か、良い感じで追い出そうとして来た。酷い話である。
何でも、他の職業ギルドとの取り決めで戦士ギルドには《付加》属性のヒトしか居られないらしい。だから俺は戦士ギルドには居られないらしい。……口頭だけで確認したつもりになってたツバキさんは滅茶苦茶叱られたらしい。
「兄上、こんどはガララんとこ行くの? われ、銃もすきだからだいじょうぶだよ?」
「あ、思ったより現状は把握してるんだな、お前」
予想よりもしっかりしていて兄上は嬉しいです。
「だが、ノゥ。兄上は銃士ギルドには行きません!」
無論、狩人ギルドみたいな《固型化》を集めてる他のギルドにも、全エーテル属性ウエルカムな盗賊ギルドとかにも行きません!
「? なんで?」
こくん、と仔犬の様に首を傾けるタタラ。
「兄上的に、この世界のヒトは全部敵だからです! もう誰も信じないッ!」
全部敵だー……と、拳、ぐっ。
「兄上は、たまにめんどくさい」
「溜息を吐き出すな、タタラ。大丈夫、幸いにも戦士ギルド――……と、言うかツバキさんが退職金を用意してくれたから装備は揃えられる」
そう! 俺はフリー! フリーのカメラマンさ! 違った。フリーのガンナーさっ!
「ツバキお姉ちゃんも、しんじない?」
「あ、ツバキさんとガララは別。全部って言うか戦士ギルドが敵です」
「……兄上は、めんどくさい」
□■□■□
茹でた後、軽く炙ったソーセージ。
内側から溢れ出る肉汁でパンパンに膨らんだソレを受け止めるのは焼き立てのパン。
好みでスクランブルエッグ等をトッピングする事も出来るが、シンプル・イズ・ベストとはよく言ったモノ。適量のケチャップとマスタードで軽く味の方向付けを行っただけのソレを齧った瞬間に響く、ぱりっ、と言う音だけで野卑なホットドックは至高の料理へと代わる。
右手にホットドック、左手にコーヒー。
それだけでヒトは幸せに成れるのだ。
「と、言う分けで、明日からもこの幸せを守る為に銃士の装備を揃えたいと思います」
「ふむ。ではガララはその幸せを守る手伝いをする為にガン・スミスを紹介したいと思う」
「はい! われはマスタードをとってほしいとおもいます!」
ん! と突き出されたホットドックからマスタードを除去し、小さな手に返してやる現在位置は露店通り。簡易なテントが立ち並び、そこから威勢の良い声が飛んでくる屋台の群の中。
そこで昼食をごちそうするから相談が――と言って呼び出したガララと共に昼食と言うには軽いホットドックを齧る。
「毎回悪いな、ガララ」
「何。予感がしながらも、しっかり確認しなかったガララにも負い目がある。良く、無事に戻って来たな、ソウジ」
「あははー……あんまり無事じゃなかったんだけどな」
こちらを心底から心配してくれるガララの言葉に、苦笑い。最後に聞こえない様に小声で、ぼそっ。
ただのヒトなら楽勝で死んでいた。
生き残ったのは運が良いと言うか――
「兄上! まだのこっとる! からいのがのこっとる!」
「……」
俺の真似してマスタード付けた結果、今足下で『みーみー』言ってる子神のお蔭である。感謝の印にマスタードの付いた部分を齧ってやった。
「にゃー! われのおひるごはんがっ!」
タタラが、みー。
「それで、銃士って何が要るの?」
「……タタラは無視するんだな、ソウジ? まぁ、良い。ガララの馴染みの店に案内しよう。そこなら銃も、服も、刻印も揃うはずだ」
「あ、予算は二十万アイズ位で頼みます」
「任された」
力強く頷くガララが頼もしい。
そんな分けでいよいよ装備を整える事にしたのだった、まる。
次回予告「やめろ、ショッカー!」