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ルール1.神は不死であり、その神と契約した者も不死である。どちらかが致命傷を負った場合ペナルティとして、神、契約者双方に同じ傷が発言する。傷は比較的直ぐに治る。
ルール2.ただし、神か契約者、そのどちらかが痛みに耐えきれず『諦める』と言う選択肢を選んだ場合、双方は死亡する。
――神は、諦めぬ限り不死である。
「――って言うルールがあるんだけど、ピヨま――……お兄ちゃんから聞いてない?」
「兄上はな、『俺はゲームの説明書読まないタイプだッ!』っていっとったよ?」
「……やっぱり駄目な生き物だなぁー、アレ」
□■□■□
奇跡。
安っぽいその二文字が実に良く似合う状況だった。
血。
血の海だ。
頭を吹き飛ばされ、動脈から鮮やかな、静脈から薄暗い、身体の内から噴き出した鮮烈な液体。血。
己が内側から噴き出したその中で俺は目を覚ました。
「……」
それを自覚した瞬間、真っ先に行ったのは『動かない』事だった。
呼吸を小分けに、最小限に。
肺の動きを、肺に押し上げられる肋骨の動きを、肋骨の軋みに合わせる身体の動きを、最低限に止める。
うつ伏せに倒れたのが拙かった。
生存本能からの察知であの巨大な虎人が居ないのは分かるが、視覚での情報収集を使用にも見えるのは石畳の間に染み込んでいく赤い液体と、その赤い液体を避ける様にして這い回る蟻らしき昆虫のみ。
聴覚を駆使して情報を収集しようにも――
「――、――」
「―――! ――。――」
虎人の言葉は意味不明過ぎて何の情報の足しにもなりはしない。酷い話だ。言語チートくらいセットで付けとけってんです。
これは、少し――拙いかもしれない。
どんな奇跡の種が有ってこうして復活したかは知らんが、一回だけの奇跡かもしれない以上、そう何度も期待するのはただの馬鹿。
で、有る以上、速めに自身の安全確保に動きたいのだが、言葉は分からずとも伝わる雰囲気。それに伴った行動。
虎人の皆さんは俺とカツヨシさんを集落に招待してくれる気らしい。
俺の小太刀を拾った比較的大柄な虎人の肩に担がれて、ぶらーん。
装備が欲しければ剥けば良い。道の真ん中にあるのが邪魔なら森に捨てて他の《竜》の餌にでもすりゃ良い。なのに態々俺とカツヨシさんと言う荷物を持ち帰ろうとするその目的は何なんだろうか? ……あまり良い気はしない。
食糧か、トロフィーか。
そのどちらにせよ、このまま死んだふりをするのは不可能。
「……」
だから。
だから、動く。
「――疾ッ!」
「――!」
奔る呼気に合わせて稼働する身体。
身体を動かし、重心転がし、俺を担ぐ虎人のバランスを奪い――
接地/同時/蹴激
砂礫踊って、轟音響かせ、放つは足刀。
その足刀を顔面に減り込ませ、その勢いで仰け反る虎人の腰元から小太刀を抜き、そのままカツヨシさんを担ぐ虎人に一太刀。
袈裟に入った刃は相も変わらず毛も肉も断つ事は無かったが、驚愕を与えるには十分だったらしく、大人一人分+鎧一式と言う重量を取り落す。
「いたっ!」
と、悲鳴。
案の定、カツヨシさんもザオリクってたらしい。復活してたらしい。
受け身が取れなかったのか、今起きた所かは知らないが――
「起きて下さい、カツヨシさん! あのでっかいのが来る前に逃げますよ!」
生憎とその辺に気を配る様な優しさと時間は無い。
引き抜く様にしてカツヨシさんを引き起こし、その尻を蹴り飛ばす。
「いたっ! 痛いよ、ソウジくん……あぁ、でも、その通りだね、急ごう」
ヨロヨロとした足取りからしっかりした物へ。
カツヨシさんの足取りが移って行くのを見届けた後、未だ混乱状態――当たり前だ。死んだはずの獲物が切り掛かって来たんだから――の虎人達を一睨み。
この道の先に居るであろうあの巨大な虎人に――
「あいる・びー・ばーっく!」
ファック! と中指おったて再戦を誓い、全力で走り出した。
――片桐ソウジ、新田カツヨシ、大森林遺跡ドライアドより遁走。
――探索成果・無し
――ギルド試験結果・不合格。
――新田カツヨシは再試験。
――片桐ソウジは――……
あっさり復活。
そして何とか水曜。でも短い!
理由? 水曜日に間に合わせたかった。あと、この後、主だけ脱出させてカツヨシさん救出作戦! にしようと思ったけど、助けるのがおっさんってのはどうかと思ったので止めにした。
さて、次からの展開は――
ヒロインのベースが固まったのでそろそろ出す。
主人公の活躍をそろそろ書く。
感想、評価をしてくれるとうれしい。
の三本です。来週も――来週? また見て下さいね! じゃんけ――