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プロローグ

 眼帯を身に着けた結果、きょろきょろと仔犬の様に動くのは一つだけの鉛色の瞳。

 まるで野良犬の様に手入れなどされていないでああろう、ぼさぼさの鉛色の髪。

 薄汚れたローブを纏う小さな男の子。

 『選べ』と言われたから選んだのは、片足を引きずりながら歩く一柱の神だった。


□■□■□


 トリップ。

 この言葉から何を連想するだろうか?

 ――英語で『旅』でしょ?

 とか思ったアナタは正解。そのまま真っ当に生きて欲しい。

 が、異世界トリップ――と言う言葉を真っ先に連想したアナタ。残念ながらアナタはこちら側だ。うぇるかむ。大丈夫。先生、前に『シンデレラ』を『ツンデレラ』と読んじゃって思わず二度見した猛者だからそんな君も優しく受け止めるよ。『べ、別にお義母様の為に掃除したんじゃないんだからねっ!』とか言うセリフまで連想した。

 話が逸れた。

 兎も角。俺の過去の恥ずかしい話は兎も角――異世界トリップだ。

 何処かの世界に、何かのきっかけで渡る。

 そんなフィクションの中で使い古された、有り触れた題材。

 ある時は魔王討伐の為に召喚。

 ある時は神の気紛れ、或いはお詫びで送信。

 ある時は特に理由も無く転送。

 それが異世界トリップ。

 INGの現在進行形で俺、片桐ソウジ十六歳が体験してるモノ。

 それが異世界トリップ。

 触れる物、見える物、聞こえる音の全てがここが現代日本では無いと告げている。

 舗装された現代日本では場所を選ばなければ踏むことが出来ない石畳に両足を。

 観光資源では無く、現役真っただ中の石造りの門を眼前に。

 そして、そして――



「みゃー! ち、父上! ヘルプ! たすけて! われ、超ピンチ!」



 二足歩行の怪鳥に襟元咥えられて拉致される小さい男の子、子神の叫びを耳にした。


「あー……マージーでーかー……」


 孔雀よりも極彩に染まった野生で生きられるか微妙な目立ち方をする怪鳥。それを見て、特大の溜息を吐き出す。

 俺、本当に異世界トリップしちゃったんだなぁ。


□■□■□


 分類としては依頼型。『魔王倒してねー』と同種。

 学校帰りになんやかんやあって死亡。『何じゃこりゃぁぁあぁ――!』と叫ぶ間も『あいる・びぃ・ばぁーっく』とカッコつける間もなくぽっくり逝ってしまった俺を出迎えた女ゴッド様がのたまって曰く――

 ――異世界で復活させてあげるから、代わりに私達の子供を育てて下さい

 と、言うびっくりする程に育児放棄を全面的に押し出したセリフだった。

 酷い話である。

 ひらひらした服に押し込められた母性の象徴の様な二つの山は飾りらしい。

 更に『達』と言っているので集団育児放棄らしい。

 つまり神様の世界って奴は現代日本よりも荒んでいるらしい。何だ。世紀末か。だったらチートであの男のアレ神拳が使える様にして下さい。やっぱいい。服が駄目に成る。

 で、そんな分けで割と真剣にゴミ虫見る様な視線を向けて眺めて居たのが伝わったのか、ワタワタしながら駄女神様が追加情報。

 要約すると、『育児放棄チガウ』。

 もうちょい詳しく言うと、『子神達が伝説を造り、信仰される様になる手伝いをして欲しい』、と言う事らしい。

 王が民に認められて初めて王を名乗れる様に、人から信仰されて初めて神は神と成り得る。

 で、そんな信仰を集める為に子神達を下の世界に送るのは良いが、それらの年齢が一番大きい所でも精々が行って十。完全なお子様であり、幾ら神とは言え、一人で生きるには厳しい年頃。

 故に凡そ百人ほどの子神に、百人ほどのトリッパーつけて送る事にした――と、言う事らしい。

 言うなれば凡そ百人程の神候補と、そのパートナーだ。

 ……凡そ『百人』で、神『候補』だ。


「……」


 色々と、拙そうな匂いがしますね?


「……」

「? どうした、父上?」


 そんな分けで、腰元にある鉛色の頭を、ぐわし。

 不思議そうにこちらを振り返る子神の頭を強制的に動かし、スタート地点とでもいうべき都市の門前にて回れ右。門を背中に背負う様にして代わりに十五メートル程先にある木に視線を向けさせる。


「父上は止めろ。せめて兄上にしろ。俺は十六歳のティーンだ」


 ぴちぴちだ。


「では、どうしたのだ、兄上? われの頭をがっしり掴んで?」

「……良いか、絶対に振り向くなよ。あの木見てろよ。絶対だぞ。絶対にだぞ。ダチョウ的な意味は無いからな。絶対だぞ?」

「む。われ、ふりむけばいいのか?」

「振り向くなって言ってんだろうがっ! ――良いか? 行くぞ?」



 ヒュ。

 一息。肺を空気で満たし――



「ザ○ルッ!」



 咆哮。


「……」

「……」

「…………」

「…………?」


 取り敢えず雷撃は出なかった。

 大丈夫そうだ。


 取り敢えず出だしです。

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