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Live Through  作者: 木田 麻乃
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出会い

 ビル・グレイは絶句した。

 彼がガラス越しに見下ろしている彼女の動きに…。少女としか思えない細く小柄な彼女は、その体には少々不釣り合いにも見える大きさの拳銃を手に、巨大モニターに次々と現れる敵・障害を迅速正確に撃ち抜いていく。モニターから繰り出される攻撃も、すべて紙一重でかわしていく。攻守において一切の無駄もミスもない。

 ビルが圧倒されている間に、訓練は終了した。が、彼の驚きはそれで終わらなかった。30分近くの間絶えず素早い動きを見せていた彼女は、息一つ切らさず何事もなかったかのように射撃場を出ていったのだ。

「どうですか?」

 ビルの隣に座る中年女性が沈黙を破った。ビルは喉の奥からようやく声を絞り出した。

「…いや…すごいとしか…」

 女性は続ける。

「あなたのボスからは、あなたが承諾するなら構わないとお返事を頂いているの。少々気難しいところもあるけれど、とてもいい子よ。騙されたと思って、あの子と組んでみません?」

 バディを予期せぬ退職で失ったビルには、願ってもない話だった。しかし、先刻ボスは彼に苦言を呈していた。


「退職したヤンの補填で香港支部から隊員が異動してくることになったが…今回に限っては、グレイ、組むか否かの最終決断は君に任せようと思っている。言いにくいが…腕はかなり立つそうだが、性格に多少難があるようでな…。組んだ局員が相次いでバディ解消を願い出て、問題になっていたそうだ。君の今後を考えると、まだ浅い君の経歴に早々に汚点を残したくはないのだよ。」

「はぁ…」

「その隊員の履歴と実績が記載されたこのファイルを預けよう。よく読んで考えたまえ。それから、この後すぐに訓練所の王所長を訪ねてほしい。君に直接会って話をしたいそうだ。どうやらその隊員は、訓練生の時からのお気に入りのようで、所長にとっては虎の子なのだとか。特別な思い入れのある隊員があぶれるのは忍びないのだろう。だが!」

 ボスは念押しした。

「いいか、よくよく考えた上で決めたまえ。決して即決はするな。」


 即決などできなかった。ボスの言葉だけがその理由ではない。ボスのもとから訓練所に直行していたビルには、預かったファイルを開く時間などなかった。あの少女の人となりがわからぬまま、バディ話を安請け合いしたくはなかった。彼女とは簡単な気持ちで向き合ってはいけない、そんな気がしていたのだ。なぜそう感じたのか、その時のビルにはわからなかったが…。



 ビル・グレイは、国連事務局が秘密裏に設けた部隊「GRO」の情報局員だ。

 昨今、世界的に治安が悪化し、各国の警察も国際的な警察機関も手が回らない状態に陥っていた。犯罪の増加と凶悪化に対応しきれなくなった警察組織の威信と信用は低下、それがさらに治安を悪化させるという悪循環を打開すべく、GROが創設された。

 GROは、出動要請に応じて現地の警察に代わって事件を解決するのが主な任務だ。警察の威信と信用の回復が目的の一つであるため、彼らの存在は極秘であり、事件解決の功績は警察のものとなる。命がけの仕事が直接評価されることは一切ない。何とも損な役回りだが、治安の悪化に歯止めをかけ、それが世界平和にも繋がっているのだというプライドが職員を支えている…はずである。でなければ、普通やっていられない。

 GROはニューヨークに本部を置き、世界中の主要都市の中でもとりわけ治安の悪化が叫ばれる都市に支部を置いている。支部はその都市と周辺地域のみを担当し、近くに支部のない場所からの出動要請には本部がすべて対応している。そのため、いつでもヘリやジェットが使用できる態勢を整えている。

 GRO職員は、大きく2つに分けられる。出動要請に応じて実際に現場で体を張る「出動隊員」と、「GRO情報局」に在籍し、出動隊員をマンツーマンでサポートする「情報局員」である。

 出動隊員は、基本単独で任務に当たることが多い。迅速的確に任務を遂行するため、現場に同行し彼らに必要な情報を提供したり、スケジュール管理をしたりというマネージャー的存在がどうしても必要となる。それが情報局員で、互いに組んだ相手を「バディ」と呼ぶ。

 出動隊員の中には、約1/4の割合で「諜報隊員」が存在する。いわゆるスパイである。中長期的な内偵が必要な任務などにあたるが、フリーの場合が多く、その時はたいていオフィスの電話番だ。もちろん、諜報隊員にも情報局員のバディがついている。


 組織の特性上、GROにはさまざまな経歴の持ち主が集まる。ビルも前職を追われてここにたどり着いた。職員は皆、採用されるとその才能・特技で配属がほぼ決まり、配属先に応じた訓練を一定期間受ける。その訓練の場が「GRO訓練所」であり、ビルはそこの所長・王 李邦(おう りほう)に昨日呼び出されたのだった。


 出勤したビルは、デスクに掛けると昨日のファイルを開いた。プロフィールには正面から撮った顔写真が1枚。黒い軽めのボブショート、漆黒の瞳、色白で端正な整った顔立ち…。

〈アジア系の子かな…?〉

 黙読を進める。

〈氏名・琴堂寺 潤姫(きんどうじ じゅんき)、名前からすると漢字圏の国の出なんだろうけど…。生年月日・199X年10月22日、てことは…えっ、16歳?!〉

 ビルの中にさまざまな疑問が浮かぶ。が、とりあえず読み進める。

〈訓練所入所が…きゅ、9年前?!香港支部配属が…はぁ?!14歳って…。この子はどこぞの孤児か何かだったのか?こんな経歴は聞いたことがない…。香港では…確かに、在籍していた1年半の間にバディが3度も替わっている。ん?でも、最初の1年はバディが替わっていない。立て続けに替わったのはその後の半年の間だ。ひょっとして、最初の1年間は多分何の問題もなかったんじゃないのか?もしそうなら、半年前に何かあったのか?〉

 ファイルのページを何枚かめくってみる。香港で彼女の身に何が起こったのか、ヒントが欲しかった。が…

〈さすがにそこまでは書いてないか…。最後に組んだ局員に話を聞いてみるか。〉

 ビルは、潤姫の経歴欄の中に記載されている局員名のうち、転属直前まで彼女と組んでいた局員の名を確認すると、デスクのパソコンに向かった。



 

 




 



まったくの素人で、初めての投稿です。

20年弱ぼんやりと描いていたストーリーを思い切って書いてみました。

さまざまなジャンルのさまざまなお話から影響を受けてはいると思いますが、完全オリジナルです。どうか温かい目でご覧になっていただければと思います。

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